スタイルに気品を足す – カルティエ・タンク

カルティエのタンクは着飾ったセレブだけが身に着けられる腕時計なのだろうか?私はそうは思わない。実はデニムやレザー、ミリタリーウェアのようなカジュアルなコーディネイトとの相性も抜群なのだ。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : HODINKEE

実は男らしい設計思想

カルティエ・タンクが誕生してから102年、この腕時計は稀代のジュエラーが生み出した傑作として、ドレスウォッチ界の象徴的なモデルのひとつとして君臨している。タンクはスクウェア形の腕時計の中でもっとも有名なモデルのひとつであり、ハリウッドスターを始めとするセレブリティや社交界の紳士たちから絶大な支持を集めてきた。タンクよりも高額な時計はいくつもあるが、「特別な階級のための時計」のようなイメージをつい感じてしまう。
しかし、タンクは本当にセレブだけが身に着けられる腕時計なのだろうか?改めてこの時計のことを調べてみると、必ずしもそうではないと思った。実はラギッドなスタイルにピッタリな腕時計なのだ。
タンクのケースデザインは第一次世界大戦で活躍した装甲車両の形状からヒントを得ている。世界でもっとも荒々しく機能的な産業からインスピレーションを受けたことは時計ファン以外からはほとんど知られていない。ケースデザインは戦車を上から俯瞰した形状で、四角形のケースの両サイドの上下をキャタピラーのように突き出し、そこにベルトを付けるという画期的な構造となっている。その結果、タンクはラグを必要としない腕時計となった。約100年前の腕時計草創期において、それまでの時計とはまったく違う設計思想をもって創造したのがタンクなのだ。


イタリア製であることを強く感じさせるローマ数字のインデックス。視認性の高い青い針が良いコントラストになっている。

自動巻きのローターがあるため、裏側はポッコリと膨らんでいる。リューズのサファイアが実に高貴な印象。

ラギッドなコーディネイトとの相性も実は抜群

気品に溢れるデザインなので、私たちはついタンクを目の前にすると気持ちが構えてしまう。スーツでビシッと決めないと付けてはいけないのではないだろうか…そんな気持ちになってしまう時計なのだ。でも、そのイメージを一旦リセットし、この美しい時計を普段着に合わせている姿を想像してほしい。お気に入りのデニムジャケットやネルシャツ、ライダースジャケットにタンクを合わせると妙なことになるだろうか?思ったよりもカジュアルなスタイルにフィットするはずだ。
タンクはシンプルな中に品があるデザインなので、コーディネイトの観点から見ると足し算ではなく引き算のようなアイテムだと思う。過剰な装飾性が加わるのではなく、センスの良い控えめなアクセサリーを身に着けるような感覚。そのため、男らしいスタイルに合わせると絶妙なアクセントとして効いてくれる。


ただ置いておくだけでその場の空気を変える。控えめなのに存在感が強く、「良いモノ感」があるのがタンクの特徴だ。

身に着けると腕元に気品が加わる。スーツはもちろん、デニムやレザーとの相性も意外なほど抜群。

タンクを選ぶということは、歴史を身に着けるということ

カルティエ・タンクは時代ごとに進化をしながら、基本的な部分は変わらずに100年以上もの長い間作り続けられてきた。腕時計の世界でも稀に見るロングセラーであり、名作の中の名作なのだ。また、幾何学的な直線で成立するケース形状や白と黒のコントラストといった独特のデザイン性は、1925年に世界を席巻したアール・デコそのもの。商業デザインを超えた歴史的な芸術作品としても尊敬を集めている。
写真のタンクは1970年代のホワイトゴールド製ケースを備えたヴィンテージモデル。長さ35mm、幅21mm、厚さ9mmというサイズ感はミニマムそのものだが、巨大なサイズの腕時計に若干辟易としている今見ると、清々しさや新鮮さを感じる。アイコニックなローマ数字や控えめなブランドロゴ、リューズのカボションサファイアなど、素晴らしいディテールを堪能できるのが嬉しい。1970年代ということは40年前後も昔のモデルだけれど、古臭さがないのはタンクがいつの時代も普遍性を持っているからだろう。

ITEM CREDIT
  • Cartier:TANK Automatic white gold(1970’s vintage)

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