【バーゼルワールド2019】チューダーの挑戦的な新作に迫る

ロレックスの新作モデルに続き、本日はバーゼルワールド2019で発表されたチューダーの最新作に迫る。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Tudor

ロレックスとはひと味違うひねりのあるセンス

ロレックスの兄弟ブランドなので、バーゼルワールド2019の注目度はチューダーも非常に高い。クロノタイム復活か?などと希望を兼ねた憶測も流れていたが、発表された新モデルはどれもひねるの効いたデザインばかり。チューダーならではの自由な新デザインを楽しもう。

ブラックベイブロンズ

人気のブラックベイシリーズからケース径43mmの新作が登場する。3・6・9のアラビア文字とスノーフレーク(イカ針)のアイコニックなコンビを楽しめるのはチューダーだけだ。
名前の通りブロンズ製ケースゆえ、使い込むほどエイジングを楽しめるところもポイント。ブラッシュド仕上げのざらついた質感は渋さがたっぷり。グラデーションのある文字盤のスレートグレーも男らしい。
このブラックベイブロンズは写真のレザーストラップのほかファブリックストラップに付け替えが可能。文字盤やベゼルに合わせた濃いグレーの新色スレートグレーに合わせてセンターにゴールドのストライプが入り、全体的に締まった印象がある。
心臓部にはキャリバーMT5601を搭載。もちろん自社製造ムーブメントで、スイス公認クロノメーター検査協会(COSC)による認定を取得している。MT5601は28,800振動/時でシリコン製バランススプリングを備える可変慣性をもつ振動子により調節される。また、振動子は衝撃と振動に対する耐性を向上させるためトラバーシングブリッジにより両端を固定されている。パワーリザーブは約70時間。まだまだ48時間前後のメーカーが多い中、ゼンマイをフルで巻けば70時間稼働してくれるのはとても実用的だ。


ヴィンテージのロレックス・エクスプローラーⅠを彷彿させるアラビア文字。これに惹かれる時計好きは多いだろう。

ブロンズ製ケースはエイジングマニア必見の素材。5年後、10年後にどう経年変化していくのだろう。

Specifiction
MODEL : Black Bay BronzeREFERENCE : M79250BA-0001CALIBRE : MT5601MOVEMENT : AutomaticSIZE : 43mmCASE : BronzeWATER-RESISTANCE : 200m / 660 feetPOWER RESERVE : Approximately 70 hoursPRICE : 429,500 Yen

ブラックベイ・クロノ S&G

ブラックベイ・クロノシリーズから新しく登場するのは誰もが予想できなかったルックス・仕様だったのではないだろうか。ステンレススチールとイエローゴールドのコンビネーション。かつてロレックス・デイトナでごく限られた本数だけ作られたJPSモデルを彷彿させる一本だ。
1970年に初めて登場したチューダーのクロノグラフ、オイスターデイトクロノグラフ以降、スチールとゴールドのコンビは一度も作られたことがなく、今回の新作は歴史的に見てもエピックなモデルだと言えよう。
文字盤とベゼルのブラックとイエローのコントラストが実にクールだ。タキメーターやブランドロゴなどがマットブラックの文字盤から浮き上がるように見えて、特別感たっぷり。それにスノーフレーク(イカ針)が組み合わされているのがチューダーらしい個性になっていてユニークなルックスに仕上がっている。
なお、ブレスレットはステンレス&イエローゴールドとレザーストラップ、そしてファブリックストラップから選択可能。ファブリックストラップは150年以上も家族経営により続いている、フランスのサン・テティエンヌの伝統あるパスメントリー(飾り紐)会社により、古い織機を使用してひとつひとつ丁寧に作られたもの。
ムーブメントは約70時間のパワーリザーブと耐磁性シリコン・バランススプリングを備えるMT5813を搭載。もちろんスイス公認クロノメーター認定を取得している。ブラックベイ・クロノ S&Gはチューダーが長年培ってきたモータースポーツ用クロノグラフとダイバーズウォッチとしての堅牢度と信頼性を融合させるべく生まれた、ブランド史上トップクラスにゴージャスなモデルなのだ。


ステンレススチールとイエローゴールドの男らしいコンビネーション。デイトナのJPS仕様をオマージュしたモデルではないが、ロレックスファンであれば思わず反応してしまうだろう。

幅広のレザーストラップ仕様も男臭さたっぷりで実にクール。ヴィンテージのようにぷっくりと膨らむドーム型風防もクラシカルな雰囲気を演出する。41mmのケース径も良いサイズ感だ。

Specifiction
MODEL : Black Bay Chrono S&GREFERENCE : M79363N-0001CALIBRE : MT5813MOVEMENT : AutomaticSIZE : 41mmCASE : Stainless steelWATER-RESISTANCE : 200m / 660 feetPOWER RESERVE : Approximately 70 hoursPRICE : 724,700 Yen

ブラックベイ32・36・41

人気のブラックベイシリーズに追加されたステンレスとイエローゴールドの新色。ケース径が32mm、36mm、41mmという3つのサイズで展開され、男女問わず着用できるユニセックスなモデルとして登場する。
ダイヤルのカラーはマットブラックとシャンパンから選択可能。ブレスレットは5連のジュビリータイプだ。チューダーの豊富なラインナップの中でも特にエレガントなルックスなので、パートナーへのプレゼントとしても最適。もちろん男性が自分用に身に着ければ大人っぽく優雅な雰囲気を演出してくれるだろう。その際は36mmがもっとも合わせやすいサイズだが、41mmの主張の強いサイズもありだし、逆に32mmの控えめなサイズはヴィンテージウォッチを身に着けているようでオシャレだと思う。
ロレックスでいうオイスターパーペチュアルやデイトジャストのような立ち位置であるブラックベイ。ポリッシュ&サテン仕上げのスチールとサテン仕上げのイエローゴールドのコンビネーションは、見るからに大人のための腕時計といった趣。同時に温かみのある雰囲気なので、ビジネスを含めてあらゆるシーンでそっと寄り添ってくれるようなデザインだ。


シャンパンダイヤルを選べば、より優雅な雰囲気を味わえる。5連のジュビリーブレスレットも華やかで高級感があり、いかにも着け心地が良さそう。

サテン仕上げとポリッシュを要所要所で使い分ける凝った意匠も特徴。このモデルでもスノーフレーク(イカ針)のアイコニックなパーツが使われている。

Specifiction
MODEL : Black Bay 32 S&GREFERENCE : M79583-0001CALIBRE : 2824MOVEMENT : AutomaticSIZE : 32mmCASE : Stainless steelWATER-RESISTANCE : 150m / 500 feetPOWER RESERVE : Approximately 38 hoursPRICE : 418,200 Yen

ブラックベイP01

最後に紹介するのは何だか風変わりなルックスのブラックベイP01。今回の新作の中でもっともユニークなモデルかもしれない。これは、1960年代後半にアメリカ海軍に提案された実在するモデルをベースに作られたもの。当時はプロトタイプとして作られ、製品化することはなかったが、チューダーは知られざる歴史の一部を現代に復活させた。
1950年代からアメリカ海軍にダイバーズウォッチを提供していたチューダーは、1967年に新たなモデルの開発を始めた。この新たな時計にはアメリカ政府によって取り決められた基準を満たす必要があり、それまで搭載されていなかった機能の特許出願とともにプロトタイプを製造。「コマンドー」というコードネームでこの挑戦的なプロジェクトは進行されたが、定番化はされなかった。
それから約50年を経て発表されたブラックベイ P01(最初のプロトタイプという意味)は、ダイバーズウォッチとセイリングウォッチの要素を併せ持ち、当時の実験的精神を体現している。


4時位置に配されるリューズがユニークな雰囲気を拍車させる。一見するとロレックス・エクスプローラーⅡを彷彿させるルックスだが、見れば見るほどオリジナリティを感じるデザインだ。

これが1960年代に製作されたプロトタイプ。旧ロゴと薔薇のマークがノスタルジック。

Specifiction
MODEL : Black Bay P01REFERENCE : M70150-0001CALIBRE : MT5612MOVEMENT : AutomaticSIZE : 42mmCASE : Stainless steelWATER-RESISTANCE : 200m / 660 feetPOWER RESERVE : Approximately 70 hoursPRICE : 418,500 Yen

まとめ

今年のバーゼルワールドで発表されたモデルたちは、どれもチューダーの挑戦的な姿勢が強く出ている。売れ線を量産するのではなく、マニアックなモデルを現代に復活させたり、異素材を多用するスタイルは、長い目で見てチューダーの良い財産になるのではないだろうか。
フラッグシップモデルのブラックベイ・クロノS&Gは70万円を超える価格。他のモデルも40万円を超えており、チューダーの価格帯としてはこれまで以上に高額だ。自社製ムーブメントの開発に成功して以来ヒット作に恵まれてきたことも今回の新作に影響を及ぼしているのだろう。個人的にはこれらの新作が売れるかどうかも気になるが、個性的なモデルが新たに誕生したことに興奮している。

ITEM CREDIT
  • Rolex:Black Bay Bronze / Black Bay Chrono S&G / Black Bay 32 S&G / Black Bay P01