Quality never goes out of style

品質は決して時代遅れにならない – リーバイスの根底に流れる企業スピリット

あっという間に流行が移り変わる現代でも生き続ける伝説のモットー。いつの時代も変わらない「品質」を追い求め続けるリーバイスの存在感を1933年製の501XX復刻モデルに見る。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : LEVI’S® VINTAGE CLOTHING

良い時も悪い時も品質を重視してきたから今のリーバイスがある

「Quality never goes out of style(品質は決して時代遅れにならない)」。これはリーバイスがかつて大きく掲げていた企業ポリシーだ。トレンドがいかに変わろうとも、高い品質は時代遅れになることはない…1800年代から洋服を作り続けてきたブランドの確固たる考え方がこれ以上ないほどストレートに現れている。老舗ならではの意地やプライドのようなものも感じてしまうが、それはリーバイスのような大企業ですら時代ごとに変遷する流行という荒波に揉まれてきた大きな苦労があるからだ。
5ポケットジーンズを生み出したブランドとしてリーバイスは世界的にも類を見ない独自のポジションを確立した。ファッションの世界で完全にオリジナルのモノを生み出すことは、今では不可能といっても良いだろう。その点、リーバイスが発明したジーンズはまさにオリジナルであったし、アメリカ的なワークウェア/カジュアルウェアを発展させた最大の功労者でもある。まったく毛色が違うけれど、その偉大さとオリジナリティはシャネルのようなヨーロッパのメゾンと肩を並べているのではないだろうか。
それほどオリジナルとして君臨していても、リーバイスは苦しい時代も味わってきた。オーセンティックなカジュアル系ファッション全体が沈んだ時もあるし、プレミアムデニムが世界的に大流行し、501が「ダサい」と言われた時もある。日本では若者のジーンズ離れが著しいらしい。メンズもレディースも流行は移ろい続けて、良い時も悪い時も他のどのデニムブランドよりも長く味わってきたのがリーバイスなのだ。だからこそ、「Quality never goes out of style(品質は決して時代遅れにならない)」というモットーには重みがある。例え悪い時でも自分たちの商品にプライドを持ち、愚直に見えたとしてもクオリティを重視していく姿勢は、日本の多くのブランドにもいまだに影響を与え続けている。


濃紺のリジッドデニムはラギッドなコーディネートにこれ以上ないほど合う。

わずかにテーパードしたクラシカルなストレートシルエット。33年製を復刻したモデルなので、現代的な501にはないクロッチリベットも見た目上のアクセントに。

黄金時代が生まれる前の礎となった33年製501XX

LEVI’S® VINTAGE CLOTHINGの1933 501XXは、今はなきアメリカのホワイトオーク工場で作られたコーンデニムが使われている。それだけでデニム狂にとっては垂涎モノだが、33年製という501にとっては黄金時代の一歩手前にあたる時代を復刻したモデルという点も、マニアックで素晴らしい。ウエストにはシンチバックが付き、バックポケットは隠しリベットではなく表側から剥き出しで打たれている。アイコンのアーキュエイトステッチの形状もハンド感の強い歪さがあり、大量生産の精度が高くなかった時代の空気が漂っている。
一般的に人気も市場価値も高いのは50年代の501XXで、ヴィンテージは目玉が飛び出るような価格で売られているのは皆さんもご存知の通り。ゆえに復刻モデルやレプリカ系ジーンズも、多くが50年代の501XXを忠実に再現したりモチーフにしている。5ポケットジーンズのひとつの完成形である50年代の501XXはそれだけのリスペクトを受けるに値する超名品なので、その流れは今後も変わることはないだろう。
50年代が「スタンダードの中のスタンダード」だとすれば、30年代は「スタンダードの中のスタンダードが生まれるための礎」のような時代と言っても良いかもしれない。バックポケットの剥き出しのリベットはカウボーイたちから声が上がっていた、馬の鞍を傷つけるという意見を受けて隠しリベットへと改良された。シンチバックはベルトループにベルトを通すのがスタンダードになる前のウエスト調整に必須の工夫だった。基本的にすべてのディテールが機能性をより高め、品質向上に努めてきた結果なのだ。だから、30年代の501XXには今では当たり前になった細部のディテールの違いを楽しむことができるし、70年近く前のクラシカルなシルエットや空気感を存分に味わうことができる。ストレートなアメカジはもちろん、ツイードのジャケットやオイルドクロスのワークジャケットのようなブリティッシュトラッド系との相性も抜群だ。また、意外に思うかもしれないがオーバーサイズのフーディーやTシャツなどのストリート系コーディネートにも想像以上に合わせやすかったりもする。それも501XXが時代を超えて愛されてきた名品であり、テイストという垣根を超えたスタンダードであるからに他ならない。


シンチバックとサスペンダーボタンが時代を感じさせる。サスペンダーで吊っても良いが、そのままでも穿けるようにジャストサイズを選ぶのがおすすめ。

今や伝説的存在になりつつあるホワイトオーク・コーンデニムが使われていることもあり、今後ますますプレミア的価値が付くだろう。


13oz前後なのでオールシーズン着用可能。穿きこむほどクッキリと皺が刻まれていく。

弓型のアーキュエイトステッチの形状に注目。戦争があった前後の年代は特に歪な形状が多く、それがマニア泣かせの特徴のひとつになっている。

品質の高さを掲げているから、時代が変わってもリーバイスは愛され続けている

流行りを否定するのではなく、それも楽しみながら「本物」を知ることもファッションを楽しむうえではとても大切なこと。「Quality never goes out of style(品質は決して時代遅れにならない)」の精神を揺るぎなく貫くリーバイスでは、33年製501XXのように歴史的価値のあるモデルを忠実に再現したジーンズもあれば、糸からこだわったスウェットやコーデュロイジャケットのような定番のトップスもある。数年~10年以上愛用できるアイテムが多いのは、今も昔も品質の高さを掲げているリーバイスの誠実さの表れでもあるのだ。

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