So damn beautiful old EL PRIMERO

自動巻きクロノグラフの伝説を作った名機「エル・プリメロ」

美しくて、タイムレスで、素晴らしいムーブメントの腕時計を探しているなら、ゼニス・エル・プリメロは最高の選択になるに違いない。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : HODINKEE

今なお世界最高峰と言われるムーブメントを搭載する初期型「エル・プリメロ」

熱狂的な腕時計好きの間で今でも頻繁に話題に上がる「EL PRIMERO(エル・プリメロ)」。1969年に誕生した「エル・プリメロ」は、50年以上経った今でもゼニスのもっとも人気があるモデルだ。自動巻きクロノグラフとしては世界初のモデルと言われていて(キャリバー11とセイコー6139が同時期に「世界初」を謳っており、ファンの間でしょっちゅう議論に上がっている)、機械的な面でも歴史的なモデルである。
実際のところはゼニスが1969年1月に「エル・プリメロ」を発表し、ホイヤー、ブライトリング、ハミルトンが同年3月にキャリバー11を搭載したクロノグラフを発表。5月になってからセイコーが「スピードタイマー」を発売したので、世間に発表したのがもっとも早かったのがゼニスで、市場に初めて流通したのはセイコーということになる。
ただ、どのメーカーが一番早かったのかという議論は置いておくとしても、エル・プリメロがライバルと比べてハイビートで、コラムホイールを搭載するクロノグラフだったことは疑いの余地はない。一般的にハイビートであるほど精度が安定するものの、その代償としてパワーリザーブが短くなり、歯車が摩耗する速度が早くなってしまうことが多い。つまり故障のリスクが高まるということだ。ゼニスの「エル・プリメロ」は毎時36,000振動という量産モデルとしては異例のハイビートでありながら、50時間以上のパワーリザーブという頭ひとつ抜けた機能を搭載。当然故障のリスクを最小限に抑えたうえで開発されており、腕時計の心臓部であるムーブメントの精度と品質に置いて圧倒的なアドバンテージを獲得することとなった。


3つのインダイヤルが少し重なり合うのがヴィンテージの「エル・プリメロ」ならではのデザイン。ひとつひとつのインダイヤルの色が異なるのもセンス抜群。

裏蓋のマークが手裏剣に見えてしまうのは日本人だけだろうか。もちろんケチをつけているわけではなく、それも含めてカッコいい。


60年代後期に生まれたクロノグラフの王道を行くデザイン。ヴィンテージらしさがありながら古臭さがないのは、細部に至るまで完成されたデザインゆえ。

レアなラダーブレスレットを装備。コマとコマの間に大きく隙間がある個性的な構造で、これもまたヴィンテージらしい。

50年以上前に生まれたムーブメントを今でも作り続けている

そして、驚くべきことに「エル・プリメロ」のムーブメントは基本設計を維持したまま現在でも製造されている。他メーカーが過去のムーブメントを使い続けることがほとんどない中、細かい改良は行いつつもゼニスは当たり前のように50年以上前に作ったムーブメントを使い続けている…これも腕時計の世界においては異例中の異例だ。自社開発した傑作ムーブメントの歴史を決して途絶えさせない姿勢には、ゼニスの強い誇りが感じられる。
腕時計業界だけでなくファッションの世界でもあっという間に古い技術が淘汰され、トレンドが目まぐるしく変わっていくのに対し、ブランドの大切な核となる部分を何十年も大切にしている企業姿勢には感服してしまうし、何よりもロマンを感じる。本当に良いモノは変える必要なんてないんだから、ゼニスには何があっても「エル・プリメロ」を作り続けてほしい。


3色の異なるサブレジスターダイヤルはどの角度から眺めても美しい。もちろん、盛り上がったドーム風防もヴィンテージウォッチらしさがたっぷり。

現代の「エル・プリメロ」よりも渋い雰囲気なので、高級感がありつつも落ち着いたルックス。オン・オフ問わず常に着用できるだろう。

コアな腕時計ファンからこれからも崇拝され続ける伝説的なクロノグラフ

1969年から1971年の間に製造されたRef.A386はたったの2,500個前後しかないと言われており、ヴィンテージ・クロノグラフの相場自体が高騰した現代では100万円を優に超える価格で取引されているようだ。当時の生産数は変化することがないので、恐らく今後も高値を維持し続けるだろう。間違っても気軽に購入できるモデルではないが、一生物としてはもちろん、いざという時の資産価値も非常に高い。
素晴らしいルックスとムーブメントを備え、時代を問わず価値が下がらないクロノグラフ。ゼニスの「エル・プリメロ」はこれからも熱狂的な腕時計ファンの間で伝説的存在であり続ける。