純日本製デニムブランドの雄 – 桃太郎ジーンズ

「世界一のジーンズ産地」岡山に本社があり、ジャパンデニムの雄として国内外問わず熱烈なファンを抱える桃太郎ジーンズの圧倒的なこだわりと魅力に迫る。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Momotaro Jeans

ジーンズの聖地で産声を上げた純日本製デニムブランド

岡山県倉敷市児島。瀬戸内海に面した岡山県最南端に位置する小さな街だ。海がすぐそばにあるため古くから海運業や製塩業が栄えてきたが、繊維業も主要産業のひとつ。学生服やユニフォームのように誰もが学生時代に袖を通す衣料はもちろん、ジーンズという大衆的な洋服も地場産業として生産してきた。
桃太郎ジーンズは古くから繊維業を営んできた株式会社ジャパンブルーのブランドのひとつとして2006年に誕生した。岡山県が生んだスーパーヒーロー、桃太郎をアイコンに掲げた日本らしいデザインと児島ならではの世界トップクラスの品質をチェックしてみよう。


桃のアイコンを中央に配した鉄製オリジナルトップボタン。出陣レーベルとヴィンテージレーベルで使用される。「KOJIMA」の地名が誇らしい。

ボタンやリベットなど、ジーンズを構成するすべてのパーツがオリジナル。糸の一本まで使い分けるこだわりが桃太郎ジーンズらしさなのだ。

カジュアルなツールとしてユーザーの人生に寄り添うジーンズ

桃太郎ジーンズのコンセプトはシンプルで潔い。
ジーンズ(道具)を通して人生や生活、心がより豊かになること。単なる流行を追及するのではなく、末永く愛されるリアルクロージングブランドであること。デニムそのものを理解し、デニムの「青」にこだわり、「青」を追及していくこと。そして大人になっても楽しめるカジュアルライフの本物の「道具」としてのジーンズを提供すること。
元々労働着として生まれたジーンズをことさら飾ることなく、あくまでもカジュアルに付き合っていける普遍的な道具として捉える。この当たり前のような考えは、Too muchなほど様々なファッションに溢れる今の時代において逆に新鮮さすら覚える。リアルクロージングブランドであろうとする姿勢も創業時から貫かれている。桃太郎ジーンズが急激に方向性を変えてモノ作りをする姿はまったく想像できないし、そういう意味でユーザーを決して裏切らない安心感が強いのだ。
デニムの「青」にこだわる…これは地場産業として長く携わってきたイノベーターだからこそ掲げられるコンセプトではないだろうか。生地から生産できるブランドである=理想を常に追求できるということ。実際、桃太郎ジーンズは「世界最特濃」を自称するデニムを生産し、児島ジーンズストリートにある本店では手織りでデニムを作っている(実際に目にしたことがあるが、目を疑うほどアナログな光景で感動した)。


桃太郎ジーンズらしさを強く感じるピンクカラーのセルヴィッジ。ロールアップすると分かる人には一瞬で桃太郎ジーンズと分かる。

愛らしい桃太郎のアイコンが描かれるレザーパッチ。「日本一JEANS」「岡山 児島」の文字にプライドを感じる。なお、革パッチのデザインはレーベルやモデルによって異なる。

最高級のジンバブエコットンを世界最特濃で染めるオンリーワンのデニム

桃太郎ジーンズには「出陣レーベル」「銅丹レーベル」「ヴィンテージレーベル」の3つがあり、それぞれ個性やデザインが違うラインとして愛されている。「出陣レーベル」は右のバックポケットに2本の白い線がハンドペイントで描かれている。これは昔話の桃太郎が鬼退治に出向く際に掲げていた旗に描かれていた2本の線から着想したもの。「銅丹レーベル」は桃の形をデフォルメしたシンプルなステッチが入り、「ヴィンテージレーベル」はバックポケットに一切デザインが入らない。
3ライン共にデニムはジンバブエコットンを採用。「出陣レーベル」と「ヴィンテージレーベル」は経緯6番手の糸を使用した15.7ozで、しっかりとした重さを感じさせながら、穿きこむとジンバブエコットンならではの柔軟さも味わえる上質なデニムだ。一方、「銅丹レーベル」は経緯6.5番手の糸を使用した14.7ozのデニムを採用。他の2レーベルと比べると1オンス軽いが、厚さや重厚感はさほど違いがない。また、前述した通り桃太郎ジーンズのデニムは世界最特濃と自称するほど染めが濃い。そのため穿きこみ開始からしばらくの間はほとんど色落ちしないと言われている。「まるでブラックデニムのよう」とも言われるほど最初は手強いが、穿きこみと洗濯を繰り返すことで徐々に鮮やかなブルーが現れてくる。このプロセスはオーナーだけが味わえる楽しみだ。


リベットも当然オリジナルパーツ。コインポケットにもピンクセルヴィッジが使われている。

腰裏に縫い付けられる大型のピスネーム。「Made in Japan」ではなく「MADE IN OKAYAMA」なのが生産地への強い愛の証拠。

レーベルによって細かく仕様が違う楽しさ

このように、自社生産のデニムを贅沢に使いながらレーベルごとに個性を変えているのが桃太郎ジーンズの特徴。「ヴィンテージレーベル」は防縮加工がない生機(キバタ)デニムであることも特筆すべき点だ。デニムが織りあがったそのままの状態の生機デニムは着用していくと捻れや縮みが発生するが、旧式力織機で織られた生のデニム特有の素材感とエイジングを楽しめる。「出陣レーベル」と「銅丹レーベル」は防縮加工が施されているが、これらももちろん旧式力織機で織られた本物のデニム。ぜひ購入時は実際に手で触って試着し違いを確かめてほしい。
レザーパッチは「出陣レーベル」と「ヴィンテージレーベル」はしなやかな羊革で、「銅丹レーベル」はタフなサドルレザー(牛革)が使われている。レザーパッチも思いっきりエイジングさせたい方は「銅丹レーベル」がおすすめだ。ナチュラルなサドルレザーは徐々に飴色に変化し、驚くほど表情を変える。


デニム狂が当然チェックする裾部分。チェーンステッチ特有のうねるのあるパッカリングを存分の楽しめる。ピンクセルヴィッジの経年変化も気になるところだ。

出陣レーベルのバックショット。ジーンズ自体のデザインは非常にオーセンティックだが、2本のホワイトラインが入ることで強烈に個性を感じる。このホワイトラインも穿きこむことで色がフェイドしていく。


バックポケットには桃の家紋のピスネーム。生機デニムの質感もたまらない。

羊革のパッチ。ロゴなどが箔押しで描かれている。

日本らしさを武器にこれからも岡山から世界へ

株式会社ジャパンブルーが展開する兄弟ブランド、ジャパンブルージーンズが海外向けとして生まれたスタイリッシュさの強いイメージに対し、桃太郎ジーンズはとにかく徹底して日本らしさが強い無骨なブランド。個性が強いため着る人を選ぶ一面があるのは否めないものの、ハードコアなデニム狂から純粋なアメカジ好きまで男女問わず愛される存在に成長した。他ブランドとは明らかに異なる個性があることはもちろん、ジーンズとしての品質がトップクラスであること、ひとつひとつのパーツやディテールに異常なまでのこだわりが注がれていることも人気の秘訣と言えるだろう。
岡山から世界へ。桃太郎の世界征服はまだ冒険の途中だが、きっとこれからも世界中のコアなデニムファンから愛されるブランドでい続けるはずだ。

ITEM CREDIT
  • Momotaro Jeans:Going to battle / Vintage / Doutan