ファッションアイテムとして成立する腕時計 – SINN クロノグラフ

漆黒のボディと文字盤に入るカラフルな差し色。ジンのヴィンテージ・クロノグラフには腕時計マニアではなくても強烈に惹かれる魅力がある。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Hodinkee

ファッショニスタも夢中になりそうなエキゾチックなルックス

腕時計マニアにはいくつか共通事項がある。ロレックスやパテック・フィリップのようなスイス製高級腕時計ブランドを神のように崇め、伝統的でオーセンティックなスタイルの時計こそが最高峰であると信じて疑わない点だ。これが極論ではないことは時計マーケットの人気度合いと、世界的に有名なオークションでの落札結果を確認すればご理解いただけるだろう。ともすれば退屈と言われがちな「いつもの」デイトナやサブマリーナなどが常に高い評価を得ており、それらを高く評価するのはいつだって時計ファンたちである。
それらの時計が信じられないほど素晴らしいことは疑いようがない。しかし、今日は少し違った角度から腕時計の世界を覗いてみよう。
1980年代のSINN(ジン)のヴィンテージ・クロノグラフ。腕時計マニアを惹きつける魅力があるが、同時に時計に興味がない洋服好きにもアピールできる個性があることに気付いた。漆黒に塗られたケースや文字盤。丸型ではなくクッション型のケースであることも何だか男臭い。そして文字盤上に散らばるカラフルな差し色。鮮やかなカラーリングがこのクロノグラフを一層個性的なモデルに仕立て上げている。
ブラックアウトされたケースと対照的な針やインデックスの赤や青、オレンジのポップなカラーがいかにも80年代的な雰囲気で、それがファッショナブルに見えるのは私だけではないはずだ。このクロノグラフはファッショニスタのアクセサリーとしても注目を浴びそうなポテンシャルがある。マルジェラやギャルソンなどのハイブランドはもちろん、ストリートファッションとの相性も抜群だろう。漆黒のケースは黒でシックにまとめたコーディネイトに溶け込むように馴染む。デニムやレザーに合わせるとブラックアウトされた時計がモード的な洗練を感じさせながら、文字盤のポップな差し色がオシャレに映えるはずだ。


黒、赤、青、オレンジ、ベージュと5色も使いながらきちんと調和が取れている。このモデルをデザインしたデザイナーはカラーセンスが天才的。

SINN(ジン)は元々パイロット向けのクロノグラフを製造することに強みを持ってきたメーカー。どのモデルにも硬派で男らしいイメージがある。

本格的なパイロットウォッチとしても使用可能

もちろん、ジンの時計が見かけ倒しであるわけがない。ムーブメントはLemania(レマニア)製のキャリバー5012を採用。6時位置には12時間積算計、9時位置にはスモールセコンドを配置し、3時位置にはデイデイト機能(日付と曜日カレンダー)を備える。更に、非常に珍しいワールドタイマーベゼルを装備。日本に住みながらロサンゼルスの時間を瞬時に知ることができるし、ニューヨーク旅行に出かける時に東京の時間を知ることもできる。
また、この手のクロノグラフとしては望外に軽量であることもポイントだ。PVDコーティングされたアルミニウム製のケースの総重量はたったの50グラム未満。自動巻きムーブメントであることを考えるとかなり軽い。これも長時間のフライトやトラベルを考慮した設計思想のひとつなのだろう。


直系39mmのケースサイズは日本人が合わせてもちょうど良いバランス。ストラップを替えて楽しむのもまた一興。

しっかりエッジの立ったクッション型ケースが男らしい。軽さに反して厚みがしっかりあるのも好印象だ。リューズやプッシュボタンも真っ黒に塗られており、どことなく近未来的な雰囲気を出す。

ファッションアイテムとして成立する機械式時計

今の時代に「腕時計は男性が唯一身に着けられるアクセサリー」と主張するのは時代遅れだけど、普段ゴチャゴチャとアクセサリー類を身に着けない男性にとって、このクロノグラフは素晴らしいアクセサリーになるかもしれない。少なくとも、指輪やブレスレットを身に着けなくても腕元の飾りはこのクロノグラフだけで充分だ。
それでいて歴史のあるメーカーが作る機械式時計としてのスペックも享受できる。男らしくも肩の力が抜けたような遊び心が共存するスタイルは、常に高級感を振りまくロレックス・デイトナにはない利点と言えるだろう。

ITEM CREDIT
  • SINN:Chronograph Reference 143 With World-Timer Bezel (1980’s vintage)