The Heritage of Speedmaster
偉大なヘリテージの一員になるということ
オメガ・スピードマスター・プロフェッショナル歴代モデルに迫る
Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Omega
Into the Speedmaster’s world
オメガ・スピードマスター・プロフェッショナル。誕生から61年が経ち、幾度マイナーチェンジを迎えてもこれほど変わらない腕時計が他にあるだろうか?「世界でもっとも有名なクロノグラフ」のひとつであり、伝説的なヒストリーを抱える傑作の中の傑作。この記事では歴代モデルを振り返りながら、スピードマスター・プロフェッショナルの世界に旅立ってみたい。
1957 – 1st generation
The beginning of the legend
レーシングドライバーのために作られた記念すべき1stモデル
スピードマスター=宇宙というイメージが確立されているせいか、この腕時計のヒストリーをよく知らない人は、スピードマスターが宇宙探索のために開発されたと誤解されていることが多い。実際はまったくそんなことはなく、スピードマスターはレーシングドライバーのために作られたモデルである。ダイヤルではなく外周ベゼルにタキメーターを表示した世界で初めての時計であり、その画期的なデザインと視認性の良さは当時のレーサーたちから歓迎された。
また、ペルー空軍のパイロット向けに納品されたことからも、1stモデルの機能性と完成度を物語っている。
また、ペルー空軍のパイロット向けに納品されたことからも、1stモデルの機能性と完成度を物語っている。
Specifiction
YEAR : 1957REFERENCE : CK2915CALIBRE : 321MOVEMENT : ManualSIZE : 39mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
1959 – 2nd generation
First Omega in space
初めて大気圏外に旅立ったスピードマスター
1stモデルの特徴であるブロードアローからアルファハンズへと替わり、2ndモデルへと進化。
キャリバーなども先代を受け継ぎ基本的なスペック自体は変化がないが、アメリカ人宇宙飛行士のウォルター・シラーが1962年のマーキュリー計画で着用。オメガにとって初めてとなる大気圏外での活動となった。ちなみにウォルター・シラーはプライベートで購入したスピードマスターをミッション時にも着用しただけであり、この時点でNASAに正式に採用されたわけではない。
しかし、宇宙飛行士たちがミッション中にプライベートアイテムを身に着けることに安全面等の危惧を抱いたNASAは、後に公式に認定された腕時計の必要性を検討することとなる。
キャリバーなども先代を受け継ぎ基本的なスペック自体は変化がないが、アメリカ人宇宙飛行士のウォルター・シラーが1962年のマーキュリー計画で着用。オメガにとって初めてとなる大気圏外での活動となった。ちなみにウォルター・シラーはプライベートで購入したスピードマスターをミッション時にも着用しただけであり、この時点でNASAに正式に採用されたわけではない。
しかし、宇宙飛行士たちがミッション中にプライベートアイテムを身に着けることに安全面等の危惧を抱いたNASAは、後に公式に認定された腕時計の必要性を検討することとなる。
Specifiction
YEAR : 1959REFERENCE : CK2998CALIBRE : 321MOVEMENT : ManualSIZE : 39mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
1963 – 3rd generation
Only the strong survive
NASAの「地獄のテスト」で唯一生き残り、後に公式時計へ
2ndから3rdへのマイナーチェンジで、アルファハンドからバトンハンドへと針が変更される。
現代のモデルでもバトンハンドは継承されているので、1963年にはスピードマスター・プロフェッショナルは意匠的に完成されたモデルとも言えるだろう。
この年代のスピードマスターに起きた重大な事件はNASAの公式なテストが初めて行われたことだ。63年以前から宇宙飛行士たちがプライベートで購入したクロノグラフを宇宙空間で身に着けていたが、この年初めて公式に採用すべき腕時計を選別するためのテストが行われた。
スピードマスター以外にNASAがピックアップしたモデルは錚々たる面子だ。ロレックスのコスモグラフやCal.30chを搭載したロンジン、ウィットナーやハミルトンなど名だたるメーカーのクロノグラフが集められ、地獄のようなテストに掛けられることとなる。
現代のモデルでもバトンハンドは継承されているので、1963年にはスピードマスター・プロフェッショナルは意匠的に完成されたモデルとも言えるだろう。
この年代のスピードマスターに起きた重大な事件はNASAの公式なテストが初めて行われたことだ。63年以前から宇宙飛行士たちがプライベートで購入したクロノグラフを宇宙空間で身に着けていたが、この年初めて公式に採用すべき腕時計を選別するためのテストが行われた。
スピードマスター以外にNASAがピックアップしたモデルは錚々たる面子だ。ロレックスのコスモグラフやCal.30chを搭載したロンジン、ウィットナーやハミルトンなど名だたるメーカーのクロノグラフが集められ、地獄のようなテストに掛けられることとなる。
スピードマスターはこの過酷な試験を終えて唯一故障することがなかったため、後にNASAから正式にミッションウォッチとして採用されることとなる。ロレックスを押しのけたのも凄いが、特別に耐久性などを向上させたスペシャルモデルではなく、町の時計店で売られている市販モデルだったことも凄いと思う。「吊るしのモデル」が宇宙空間でのミッションをもこなせる証明であり、オメガにとってはこの上ない宣伝にもなっただろう。
Specifiction
YEAR : 1963REFERENCE : ST105.003CALIBRE : 321MOVEMENT : ManualSIZE : 40mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
1965 – 4th generation
Birth of Moonwatch
歴史的な「ムーンウォッチ」の誕生
ケースが左右非対称になり、リューズガードができたことでより強固さを増した第4世代モデル。
ケースサイズが42mmになり、プッシャー付近のケース内部にゴム膜を入れることで、より耐水性を高めたことも見逃せない。
しかし、何と言っても月面着陸時に宇宙飛行士たちが着用していた事実が最大のトピックだ。これは未だに他のどのメーカーも成し遂げられない(そして今後も可能性としてあるかも分からない)厳然な事実であり、スピードマスター・プロフェッショナルが神格化された理由でもある。
1965年にNASAが正式採用を発表。翌年以降の生産分から「PROFESSIONAL」表記が入ることとなる。
ケースサイズが42mmになり、プッシャー付近のケース内部にゴム膜を入れることで、より耐水性を高めたことも見逃せない。
しかし、何と言っても月面着陸時に宇宙飛行士たちが着用していた事実が最大のトピックだ。これは未だに他のどのメーカーも成し遂げられない(そして今後も可能性としてあるかも分からない)厳然な事実であり、スピードマスター・プロフェッショナルが神格化された理由でもある。
1965年にNASAが正式採用を発表。翌年以降の生産分から「PROFESSIONAL」表記が入ることとなる。
Specifiction
YEAR : 1965REFERENCE : ST105.012CALIBRE : 321MOVEMENT : ManualSIZE : 42mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
1968 – 5th generation
And to the legend
「世界でもっとも愛されるクロノグラフ」へ
第5世代に突入し、搭載ムーブメントはCal.321からCal.861へと変更された。一部のマニアはCal.321を愛するあまり4thモデルまでが至高とする向きがあるが、Cal.321もCal.861も同じレマニア製で基本設計もあまり変わりがない。Cal.321がコラムホイールでチラネジを採用していたのに対し、Cal.861はカム式に代わり、チラネジも使わず簡素化されたこと。また、テンプのひげゼンマイが平ひげに変更され、振動数が18,000から21,600に上がり精度の安定化を図りやすくなったこと。つまり精度を上げるためのマイナーチェンジを行ったという認識が正解。1stモデルから受け継がれてきたCal.321でなくなったことへの心理的な抵抗感のようなものは理解できるが、5thモデルも素晴らしいムーブメントであることは疑いようもない。
Specifiction
YEAR : 1968REFERENCE : ST145.022CALIBRE : 861MOVEMENT : ManualSIZE : 42mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
Now – 6th generation
The world’s most beloved chronograph
第6世代になっても基本的な構造や仕様に変化はない。手巻きムーブメント、プラスチック風防、軟鉄製インナーケースなど。すべてが綿々と受け継がれてきたヘリテイジであり、歴史的な部分こそスピードマスター・プロフェッショナルの美学とも言えるかもしれない。しかし決して忘れてはいけないのが実用性の高さである。例えば数十年前に腕時計のムーブメントとして主流になった自動巻き。スピードマスター・プロフェッショナルは頑として手巻きにこだわっている。ムーンウォッチとしての規格から外れてしまうから…という前提はもちろんある。ただ、機械式時計の耐久性を考えると自動巻きより手巻きの方が優れている点も実は多い。なぜならムーブメントで一番大きくて重たいパーツは自動巻きのローターであり、おのずと衝撃にも弱い部分となるから。スピードマスター・プロフェッショナルの耐久性の秘訣のひとつとして、機械部分がよりシンプルであることも重要な事実である。
革新的なクロノグラフとして誕生し、ムーンウォッチとして他に類を見ない地位を確立。そして現在でもほとんど姿も中身も変えずに作り続けられているスピードマスター・プロフェッショナル。
あのロレックス・デイトナですら60年代と今のモデルを比較すると「まったく別物」であることを考えると、この腕時計が世界的に見て稀有な存在であることがよく分かる。
スピードマスター・プロフェッショナルは玄人好みの名機であると同時に、今でも世界トップクラスの人気を持つクロノグラフなのだ。
あのロレックス・デイトナですら60年代と今のモデルを比較すると「まったく別物」であることを考えると、この腕時計が世界的に見て稀有な存在であることがよく分かる。
スピードマスター・プロフェッショナルは玄人好みの名機であると同時に、今でも世界トップクラスの人気を持つクロノグラフなのだ。
Specifiction
YEAR : 2018REFERENCE : 311.30.42.30.01.005CALIBRE : 1861MOVEMENT : ManualSIZE : 42mmCASE : Stainless steelGLASS : Hesalite
The legacy is
still alive
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