日本に再上陸したチューダーは、今年もっとも「買い」の時計メーカー

2018年10月末、長年の沈黙を破ってついにTUDOR(チューダー)が日本に再上陸を果たした。スイスが生んだ名ブランドでありながら、ここ日本では長年日の目を見なかった「最後の大物」に迫る。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Tudor offcial site

「ロレックスの弟分」から脱皮し、世界的な人気を持つブランドに進化

「チューダー」という呼び方に慣れない…そう思う方はきっと昔ながらの時計好きだろう。ここ日本では1970年代まで日本で正規展開していたが、日本ロレックス設立後の80年代以降、正規流通のビジネスは終了していた。その間は並行輸入業者が「チュードル」の名前で独自に展開。だから、ほとんどの時計好きにとっては「チュードル」の方が馴染みが良い。
いきなり水を差すようだけれど、少なくとも日本では今までずっと二番煎じのような立ち位置に甘んじてきた。ロレックスのディフュージョンブランドとして生まれ、ともすればロレックスを買えない人のためのブランドなどと揶揄されることさえあったのだ。私は70年代のオイスターデイトを10年近く愛用していることもあり、チューダーへの愛着が非常に強いため、こういった評価には常に釈然としない気持ちを抱えてきた。元々個性的な一面もしっかり持っていたことはもちろん、近年のオリジナリティ溢れる時計作りと、それに伴う世界的な人気の盛り上がりを見て勝手に溜飲が下がる思いを感じていたほど。
だからこそ、2018年10月末に突如日本への再上陸がアナウンスされた際は非常に驚いたし、とても嬉しくなったものだ。チューダーの人気が本物であることの証拠だし、ロレックス自身が日本でも売れると確信した裏返しでもある。何よりも、大好きなブランドが正規上陸すること自体にワクワクするじゃないか。
もし今もチューダーが今も前述した「ロレックスの弟分」的な立ち位置のままであったなら、今回のような再上陸は決してなかったのではないかと思っている。それだとロレックスの販売戦略の邪魔をしてしまうからだ。絶対王者のロレックスは別格として存在しつつ、チューダーは独自路線を確立した若々しくも格式高いブランド…こういった差別化がしっかりできたからこその再上陸と捉えて良いだろう。


古き良きデザインを受け継ぐチューダーの腕時計。赤と青のベゼルがセットされたGMTモデルは昨年満を持して登場した。

90年代初頭まではリューズもロレックスと共通のものを採用していたが、近年のモデルはオリジナル。

世界トップクラスのコストパフォーマンス

チューダーの大きな魅力のひとつは買いやすい値段だろう。独自のオリジナリティを身に着けたとはいえ、根本に流れるのはロレックスの血筋。随所に王道のデザインエッセンスを持ちながら、ロレックスよりも遥かにリーズナブルに購入できるのだ。かつてはロレックスのパーツを贅沢に使いながら、ムーブメントに汎用エボーシュを採用することで価格を抑えることで人気と知名度を確立した過去を持つチューダー。現在は自社製ムーブメントの開発も当たり前のように行いながら、それでも30万円台から購入できることが素晴らしい。文句の付けようがないルックスと高い品質を兼ね備え、コストパフォーマンスの面でも世界トップクラスのブランドに成長した。


往年のルックスを現代的に解釈した人気シリーズ、ヘリテージ・ブラックベイ。ロレックス・サブマリーナとはひと味違う雰囲気を持つ。

ベゼルのレッドトップや「スノーフレーク」と呼ばれる分針など、随所にクラシカルなディテールを盛り込んでいることもファンから絶大の支持を集める。

迷う楽しさがある豊富なラインナップ

歴史的な側面を感じられるデザインがもっとも人気が高いのは事実だが、現在のチューダーのラインナップはそれだけではない。潜水時計のパイオニアであるサブマリーナの正統な血統を持つブラックベイシリーズやぺラゴス、ブライトリングと共同開発したムーブメントを搭載するブラックベイクロノ、そして伝説的な「モンテカルロ」をほぼそのまま復活させたヘリテージクロノなど、クラシックとモダンを織り交ぜた商品構成も非常に魅力的。いざ購入する際はどれを選ぶべきか大いに迷いそうだが、それもまた現代のチューダーに魅力がある証拠だ。


バーゼルワールド2018で話題となったブラックベイGMT。ロレックスも昨年ペプシカラーのGMTマスターを復刻させたが、チューダーのそれは文字盤やベゼルのデザインやフォントなどが異なる。

ヴィンテージのモンテカルロをほぼ忠実に再現したヘリテージクロノ。ホームベース型のインデックスはファン感涙の英断。ステンレス製のブレスレットやレザーストラップもあるが、1日18本しか作れないファブリックストラップでカジュアルに着用するのもオシャレ。

コアな時計ファンを唸らせるマニュファクチャールへ

かつては汎用エボーシュを採用することでロレックスよりも大幅に価格を抑えていたことは先に述べたが、現在は立派なマニュファクチャール(自社開発&製造のムーブメントを搭載するメーカー)へと成長した。どのモデルでもパワーリザーブ約70時間、200mまでの防水性能を誇り、完全自社開発・製造の機械式ムーブメントを搭載している。ETA製ムーブメントを採用していた時代のモデルも品質・メンテナンス性共にまったく問題ないレベルだったが、2015年から搭載する自社製ムーブメントのクオリティは世界中で高く評価されており、名実ともに一級の時計メーカーになったと言えるだろう。
ETA製ムーブメントは汎用性が高く安価であることが最大のメリットだが、パワーリザーブの短さ(約40時間)はチューダー自身も不満を持っていたとう話がある。改良を加えるとはいえ汎用ムーブメントを採用し続けることにメーカーとしての成長が止まってしまうことにも危惧を感じたのだろう。ムーブメントを自社で開発するには膨大な費用と時間が掛かるのが常。それでもチューダーはオリジナルの心臓を手に入れたかったのだ。
また、外装の質も大きく変わったことも見逃せない。例えばぺラゴスが採用するバックルは微調整が効くエクステンションに加えて、自動的に長さが変わる機能も備わった。また、バックルを固定するボールにセラミックス材を採用。何度開閉しても摩耗することがないため、ブレスレットの耐久性は大きく伸びることになる。ロレックスやパテック・フィリップのような雲上メーカーでは見られるようなコストの掛かる仕様を、チューダーの価格帯で採用した例は恐らく初めてだろう。
一方一番人気のブラックベイシリーズではヴィンテージファンが歓喜するリベットブレスを採用。板を折り曲げて左右から蓋をするリベットブレスは1960年代のチューダーが好んだパーツだ。チューダーは今の加工技術でこれを再現してみせた。徹底的に実用性を求めるモデルにはモダンな仕様を採用し、クラシカルなモデルにはファンが喜ぶツボを押さえる発想もある。この柔軟さも現代のチューダーのクールさを物語っている。


錆びにくく軽いチタン製のケースとブレスレットを備え、500mの防水性能が確保されたぺラゴス。他のモデルと同様、2万8800振動で約70時間というロングパワーリザーブ。高い次元の実用性を持つ。

2019年、もっとも「買い」の時計メーカー

もしあなたに充分な預金があり、何の躊躇もなくロレックスを購入できたとしても、チューダーは購入候補に入れておくべきメーカーだ。ロレックスがそうであるように、チューダーにもワードローブを選ばない合わせやすさがある。スーツであろうがデニムであろうが完璧にフィットするだろう。クロノメーター検定を通った確かなムーブメントを搭載しており、実用時計としてもまったく申し分ない。ロレックスよりもスポーティーで若々しいのに、数十年掛けて蓄積してきた歴史も持つ。それがこのブランドの格式高さを演出している。それでいて正規価格が30~40万円台がメインなのだ。チューダーファンである私情を抜きにしても、これほど「買い」の時計メーカーは滅多にあるものではない。

ITEM CREDIT
  • TUDOR:Heritage Black Bay / Black Bay GMT / Heritage Chrono / Pelagos

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