安くても幸せになれる時計 – ハミルトン・カーキフィールド

煌びやかでハイスペックなだけが腕時計のすべてではない。ハミルトンのカーキフィールドは、値段が安くても生活が豊かになるという基本的なことを教えてくれる。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : lesrhabilleurs.com

腕時計は「高いが正義」ではない?

腕時計に夢中になるほど高級志向になっていくことは否めない。機械的なスペックや歴史的な側面、素材などのウンチクを知ることで、一流ブランドの時計がいかに素晴らしいものであるか、例えそれが100万円を優に超えるモノであっても手に入れる価値があり、あらゆる面で10万円の時計よりも優れていると信じるようになってしまうものだ。
これはもちろん正しい面とそうではない面の両方がある。確かに高額な時計は素晴らしいモノが多い。当たり前の話だが、高ければ高いほどその理由が存在するものだ。意味もなく高額なモノがないとは言わないが、少なくとも腕時計の世界ではハイプライスには理由がある。だからこそコアな時計ファンはロレックスやパテック・フィリップへの憧れを隠そうともしない。
その一方で、安い値段の時計が高額な時計よりも優れている点も確かにある。少なくとも私はそう感じることがある。
もっとも重要かつ分かりやすい点は、身の丈に合っていることだ。身の丈に合っているということは無理がないということであり、余計な気を遣わないということでもある。高級時計を身に着けることは精神的な充足感も与えてくれるが、もしかしたら少し傷が付くだけで気分が落ち込んでしまうかもしれない。それはモノとの付き合い方として果たして健全だろうか?
安い方がオシャレだと受け止められることが多々あるのも事実だろう。高級時計ではなくチープカシオやGショックを身に着ける洋服好きは非常に多い。彼らはある意味での「チープさ」も含めてクールと捉えており、実際に驚くほどオシャレにそれらを着けこなしている。150万円のロレックスは「凄い」と言われるかもしれないが、「イケてる」とは言われないかもしれない。
身の丈に合ったモノ選びをしていてオシャレであれば女性受けも良くなる。多くの男性が高級時計こそ女性にアピールするにはもっとも最適なツールだと信じているが、事実はそうではないことがままある。高級時計は時に嫌らしくキザで、これみよがしな印象を与えてしまうからだ(着用者にそういった意図があるかないかは関係なく)。しかし、センスの良い控えめな値段の腕時計は女性に対してさり気なく良い印象を与えるだろう。


ミリタリー然とした顔立ちのカーキフィールド。飾り気がない無骨なデザインが男心をくすぐる。実用性が高いNATOストラップがこれほど似合う時計があるだろうか。

カーキフィールドは意外なほどスーツにも良く似合う。TPOを考えるとNGの会社もあるだろうけど、ジャケットスタイルのカッチリしたコーディネイトの外しとして使うのも面白い。

タフネスと温かさが共存するミリタリーモデル

ハミルトンのカーキフィールドは第2次世界大戦でアメリカ軍の兵士たちに親しまれていた軍用時計がルーツ。38㎜のつや消しステンレススチールケースや視認性の高い3針表示、ダークカラーのダイヤル、蛍光塗料があしらわれたインデックス、そしていかにもミルスペックなNATOストラップなど、実用性を第一に考慮した要素で構成されている。
軍用時計をルーツに持つだけに耐久性と実用性は第一に考慮されており、そのタフネスさはカーキフィールドの魅力として真っ先に目に付く点だ。いかにも堅牢で無骨な仕上がりはヨーロッパの高級時計とは明らかに一線を画しており、ハミルトン自身のルーツ…ペンシルバニア州ランカスターで生まれたアメリカンスピリットを感じさせる。
ちなみにハミルトンの名前が広く知られるようになったのは、アメリカにおける鉄道草創期で使われた鉄道時計だった。ハミルトンが作る鉄道時計は正確さにおいて抜きんでており、鉄道事故防止につながると評判になった背景も持つ。1918年に航空時代が幕を開けると航空計時にも着手。米国初の定期航空郵便の公式時計に採用されるなど、航空時計メーカーとしても成功を収めることとなる。
このように、ハミルトンには100年以上も前から男の世界のタフネスが綿々と受け継がれてきたのだ。
鉄道時計、航空時計、そして軍用時計といった実用性第一の世界で勝負してきたハミルトンの時計。ツールとしての役割をもっとも強く求められてきたことが、「ハミルトンワールド」と言いたくなる独特のルックスと雰囲気を出すことにつながる。特にカーキフィールドには過度な装飾が一切なく、かなり素朴なデザインだ。
試しに最新のロレックス・サブマリーナを見た後でカーキフィールドを眺めてほしい。サブマリーナもダイバーズモデルとしてツール的な側面を持つ時計だが、カーキフィールドの素っ気なさが際立つ。しかし、素朴で飾り気のないスタイルが温かさにつながっていることにも気付くだろう。


ファッション性の高さも見逃せないポイント。ミリタリーやワークスタイル、デニム、レザーなど、あらゆるテイストの洋服にフィットしてくれる。

ユーザーの生活にそっと寄り添う、控えめで可愛い時計

カーキフィールドはれっきとした機械式時計なので、腕時計好きが納得して身に着けられる「メカ」であることも付け加えておかなくてはいけない。また、アメリカで生まれたメーカーではあるが、現在はスウォッチグループの一員としてスイスで製作されていることも。つまり、ハミルトンの時計は高品質でありながらカジュアルに身に着けられるものであり、そこがもっとも支持されているのではないだろうか。57,240円という値段は機械式時計としてはかなりリーズナブルだし、値段を裏切る結果にはきっとならないだろう。
ハミルトンのカーキフィールドにはミルスペックの魂が確かにこもっているが、ユーザーの生活にそっと寄り添うような控えめで可愛らしい一面がある。万が一高級時計を身に着ける人から「自分の時計の方がずっと優れている」と言われたとしても、まったく気にする必要はない。ハミルトンの時計も、それを身に着ける人も、そういった次元では生きていないのだから。

ITEM CREDIT
  • HAMILTON:Khaki field

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