加工ジーンズはあり?なし?メリットとデメリットを徹底的に検討

生粋のデニム狂が即座に拒否反応を示すことが多い加工ジーンズ。リジッドもしくはワンウォッシュから育てないと意味がない…そんな心の声が聞こえてくるようだが、本日は加工ジーンズの是非について検討してみたい。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED

実はメリットもたくさんあるのが加工ジーンズ

リジッドもしくはワンウォッシュと比べ、明らかに加工ジーンズが勝っている点がひとつある。それはエイジングに時間が掛からないことだ。買ったその日からほぼ理想の色落ちやダメージが施されており、これほど手っ取り早い話はない。また、平日はスーツ着用がマストのためジーンズを育てる時間がないという人もとても多い。
私個人は私服通勤しか経験したことがないため、常に好きなジーンズを穿き放題。しかし当たり前の話ではあるけれど、世の中には帰宅後か土日しか穿けない人もたくさんいるのだ。そんな人々にとっては特に加工ジーンズはありがたい存在なのではないだろうか。土日しか穿けないとなると、濃紺の生デニムを一から育てるにはあまりに時間が掛かり過ぎるのだから。
また近年は技術向上により、かつてよりも加工ジーンズのレベルが上がったことも見逃せない。ほんの10年前まではどうしても嘘くささがあるというか、明らかに加工モデルであることが一目で分かるモノしかなかった。現在はブランドやモデルによってじっくり確認しないと判断できないモノが格段に増えたように思う。中にはリアルすぎてまったくと言っていいくらい判断できないモノさえある。これも加工ジーンズの市民権向上につながった。
メリットはまだまだある。加工ジーンズ=通常は色落ちしているので、よりこなれた雰囲気になりやすい。つまり、ファッションとの親和性が濃紺のデニムよりも高いということだ。色落ちしていない濃紺のジーンズはどうしても重たい印象になりがちで、トップスやシューズとの相性も意外と難しかったりする。しかし、程よく色落ちした加工ジーンズはほとんどありとあらゆる洋服に合わせることができる。平たく言えばよりオシャレに見えることがあるのだ。


腰回りから太腿にかけて激しく入るヒゲやアタリ。裾周りのクッションなど、何年も穿きこまないと決して現れないエイジングが買ったその日に手に入る。まさに加工ジーンズならではの強みだ。

膝裏のハチノスもご覧の通り。このモデルは激しいダメージ加工なので見る人が見れば加工モデルであることがすぐに分かるだろう。

最大のデメリットは育てる楽しみがないこと

上記のメリットだけ読むとまるで良いことづくしのように思えてくるかもしれない。しかしこれも当然ながら、加工ジーンズはデメリットも多く抱えている。
最大の弱点は育てる楽しみがないこと。ジーンズは穿きこんで味出しをする洋服だ。徐々にエイジングしていき、数年後に「これが完成形だ!」と思えるまで嬉々として穿きこむ楽しさ。あれが体験できないなんてあり得ない…そう思うデニム狂は多い。
次のデメリットは加工具合。技術が飛躍的に上がったことは先に述べたが、結局人間がコントロールして作るモノなので、どこにどのくらいどんな加工を加えるかはブランド側の好みに左右されてしまう。極端な例だと、全体的な色落ちは好みでもアタリの入り方が好きじゃなかったり、わざとらしさを感じてしまうこともあるだろう。加工ジーンズと一口で言ってもルックスの違いは千差万別。理想的な見た目の加工モデルを見つけることは想像以上に難しい。
また、加工ジーンズは生デニムよりも高価格で売られていることも多いので、値段的に納得できないこともあるだろう。どんな加工を施すかを考えるデザイナーたちや、実際に加工をする職人たちの時間を割いて生まれるのが加工ジーンズなのだから仕方がないとはいえ、モデルによっては目を疑うようなプライスで売られていることも。欲しくても買えなければ何の意味もない。


KUROの加工モデルは立体的なアタリやヒゲが特徴。のっぺりとした平坦な加工がいまだに多い中、ここまでリアルに再現できるブランドもあるのだ。

ベルトループの擦れやポケット部分などのパッカリングも穿きこんだヴィンテージを忠実に再現している。フェイドしたインディゴカラーが美しい。

加工ジーンズを買う際は「こだわるポイント」を事前に決めるのが大切

結局のところ加工ジーンズはアリなのか?その答えは人それぞれ。カッコいいモデルに出会えば買ってしまった方が幸せだし、リジッドから育てることに徹底してこだわるのも良い。
ただ、購入する際は「こだわるポイント」を自分の中で決めておくとよいだろう。
ダメージがどの程度入っているか。インディゴの濃さや色味はどんな状態のものを選ぶか。自分の洋服との相性を前提に選ぶのも現実的だ。色味や加工具合にこだわりがなければ単純に値段の上限を決めておくだけでも選びやすい。もし理想の色落ちがあるのなら、それに酷似したモデルを探すのも一興。こだわりポイントに近ければ近いほど満足度が高くなり、飽きることなく穿き続けられる可能性も高い。
蛇足になってしまうが、本日掲載しているジーンズは私物のモノ。KUROというブランドのGRAPHITEというモデルである。KUROは濃紺のワンウォッシュも豊富にあるが、リアルな加工モデルもそれ以上に用意されている。
このGRAPHITEはまるで10年近くハードに穿きこんだかのようなエイジングが再現されており、最初に手に取って見た時は随分驚いた記憶がある。立体的なヒゲやアタリ、ハチノスは加工モデルとは思えないほど生々しい。
しかし、部位によってはわざとらしさを感じてしまうのもまた事実。例えばこのモデルの場合、膝裏から下にかけて通常穿いていてもほぼできないであろうアタリになっている。このように、技術もセンスも発達した現代の加工ジーンズであっても完璧なモデルはそう多くないのが現実なのだ。
メリットとデメリットを両方理解したうえで納得できるモデルに出会えれば、もしかしたら一から育てるよりもずっとお気に入りの一本になるかもしれない。

ITEM CREDIT
  • KURO:GRAPHITE