ホワイトオーク・コーンデニムを手に入れるラストチャンス? – アメリカ製デニムの未来について

2017年末に閉鎖したコーンデニム社のホワイトオーク工場。アメリカの文化遺産のような工場が閉鎖するニュースはデニム業界に衝撃を与えた。今後アメリカ製デニムはどうなっていくのだろうか?


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Levi’s Vintage Clothing

コーンデニムとホワイトオーク工場について

デニム好きでも知らない人がいるので、まずはコーンデニムとホワイトオーク工場について説明しよう。
コーンデニムは「Cone Mills Corporation(コーンミルズコーポレーション)」の名前で1891年にアメリカに誕生したデニム生地メーカーのこと。リーバイスの501XXを始めとした伝説的なヴィンテージジーンズは当時のコーンミルズ社のデニムを使用しており、まさにアメリカ製デニムの黄金時代を支えてきた名企業なのだ。
ところがコーンミルズ社は2003年に経営破綻してしまう。破綻の直接的な原因はアジア圏で急激に成長した大量生産の安価なデニムと言われている。90年代末から2000年代はファストファッションが爆発的に流行した時期であり、時期的にも符合している。2004年にオーナーが変わり「Cone Denim LLC(コーンデニム)」に社名を変更した。
そしてホワイトオーク工場とは、コーンデニム社がコーンミルズ時代からアメリカ・ノースカロライナ州のグリーンズボロに構えてきたデニム生産工場のことだ。コーンデニム社は当然いくつも工場を構えているのだが、このホワイトオーク工場はデニム好き…特にリーバイスを始めとするアメリカ製デニムファンにとって聖地に等しい場所である。
高品質なアメリカ製デニムの象徴的存在であり、前述したヴィンテージ・リーバイスの歴史の一端を担ってきた伝説的な存在がホワイトオーク・コーンデニム。もはやデニム生地という枠を超え、ひとつのブランドとして成立していた。


LEVI’S VINTAGE CLOTHING(リーバイス・ヴィンテージ・クロージング)の501XX。ホワイトオーク・コーンデニムを使用。1947年製を復刻したモデルで、バックスタイルがクラシカルだ。

スッキリとしたストレートシルエットは年齢を問わず穿くことができる。

今後は加速度的にホワイトオーク・コーンデニムが消えていく可能性も

2017年末に閉鎖した後もリーバイスなどでホワイトオーク製のデニムを使った商品が現在も販売されているのは、生地のストックをある程度以上確保していたからだ。当然のことながら今後は在庫がなくなっていく一方なので、ホワイトオーク製のデニムは徐々に姿を消していく。実際リーバイス・ヴィンテージ・クロージングの商品一覧を確認すると以前よりも「ホワイトオーク製」の記載が減っている。「コーンデニム」という表記はあるが、これはメキシコと中国の工場で生産されたデニムを使っていると捉えて良いだろう。
メイドインアメリカの代表的なデニムであるホワイトオーク製が消えていく…こんなことが起きるとは夢にも思わなかったというのが正直な気持ち。私自身は一度もコーンデニムを使ったジーンズを穿いたことはないのだが、それでも憧れやノスタルジーを感じる素材として特別な思いを感じている。
リーバイスはもちろん、テラソンやブレイブスターといったブランドもホワイトオーク・コーンデニムをメインに使用してきたので、ホワイトオーク工場が閉鎖したことによるダメージは大きいだろう。


第2次世界大戦を終え、原材料の供給が元に戻った1947年のジーンズを忠実に復刻した501XX。アーキュエイトステッチはプリントではなくステッチで描かれる。ロールアップして伝統の赤耳を楽しみたくなる。

大戦モデルでは廃されていたコインポケットのリベットも復活。戦後に景気が回復し、急激に需要が高まった時代のディテールが盛り込まれている。

アメリカ製デニムメーカーの未来について

どんな素材や商品であっても、歴史が多ければ多いほど生まれた場所で作り続けられることは非常に重要だ。例えば同じアメリカで生まれたギターメーカーであるギブソンやフェンダーが自国生産を辞めてしまったら、間違いなく顧客はガッカリするだろう。これは商品自体の品質とは別次元の問題だと思う。私たちはただ商品を買うのではなく、モノの背景にあるストーリーや歴史も含めて愛しているからだ。
コーンデニム=ホワイトオーク工場という当たり前の図式がなくなることは多くのブランドとデニム好きにますます影響を与えていくだろう。メキシコと中国で作られるコーンデニムの品質が悪いと言っているわけではない。しかし、それらはアメリカで作るよりも大量に生産するために生まれた工場であることは間違いない。似たようなセルヴィッジデニムを作っていても、ホワイトオーク工場のような品質を保つことは可能なのだろうか?
アメリカ製デニムメーカーの未来が今後どうなっていくか、いちデニムファンとして心配でならない。ひとつ間違いないのは、ホワイトオーク製のデニムを新品から手に入れるのは今がラストチャンスであること。自分のサイズの在庫を見つけたら早めに購入しておいた方が良い。

ITEM CREDIT
  • LEVI’S VINTAGE CLOTHING:1947 501XX whiteoak conedenim (12.25oz)