Greedy catalog 2019 pt.1

ボーナスを丸ごと使ってでも欲しい!男の物欲カタログ2019 – パート3

第3回「男の物欲カタログ」では、魅惑的なレザー装飾が施されたクロムハーツのジャケットやHODINKEE限定のホイヤー、常軌を逸したシュプリームとホンダのコラボレーション、ヴィンテージのデニムジャケットを紹介。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : FASHIONSNAP / HODINKEE / HYPEBEAST / BUTTON UP CLOTHING

ドーバーストリートマーケットギンザ限定、ウルトラレアなクロムハーツ

ハードコアなクロムハーツファンからは今でも創業当時のローカルなバイカースピリットを懐かしむ声が聞こえてくるが、現在のクロムハーツはすっかり「ヒップなラグジュアリーブランド」に変貌してしまった。ジュエリーはよりユニセックスになり、よりジェンダーレスな商品構成へ。この流れはリチャードとローリーの愛娘がデザイナーである限り今後もますます強くなっていくことだろう。
とはいえ我々のようなコアなファンがすべてにおいて失望することもない。このブランドには今でもどうしようもなく物欲が刺激される逸品が…ほかのどのブランドでもあり得ない逸品が数え切れないほど用意されている。
例えばレザージャケットに注目してみると、昔ながらのバイカー向けライダースジャケットはもちろん、よりタウンユース向けのデザインも豊富にラインナップ。そのどれもが世界最高峰のレザーを贅沢に用い、ジッパープルやボタンなどの金属パーツはスターリングシルバー製のダガーやクロスで装飾されている。この独特な世界観こそクロムハーツ!
今回紹介するイージーライダージャケットは古くから生産されているロングセラーモデル。薄手のレザーを使ったハーフジップ仕様で、春や秋にはアウターとして、ウインターシーズンはインナーとして着用できる便利なウェアである。
ボディはクリーンなアイボリーカラー。これは2018年にドーバーストリートマーケットギンザ限定で発売された限定モデルで、両袖にクラシカルなフローラルクロスがレザーで装飾されたタイプと、背中に定番のクロスパッチが並ぶ「セメタリースパイン」の2タイプが発売された。昨年のモデルなので既に完売しており、もし手に入れようとすれば根気よく中古市場を探す必要がある。滅多に出てこないので年単位の時間が掛かるかもしれないが、その価値は間違いなくあると個人的には思う。
まずイージーライダージャケットという初期から制作されているアイテムをベースにしていること。ドーバーストリートマーケット限定という希少性。そしてクリーンでありながらクロムハーツらしさを充分感じられるデザインであること。本質的な価値が下がらないウルトラレアなジャケットなのだ。
クロムハーツらしいロックな雰囲気をより感じたければフローラルクロスを。よりさり気なく着たければセメタリースパインを選ぶと良いだろう。基本的にはシンプルなのでボトムスを選ばないが、色移りしやすいブルージーンズは避けた方が良いかもしれない。


プルアップタイプで、ジッパーにはダガー。イージーライダージャケットは初期から作られるロングセラーモデルだ。こちらは両袖にフローラルクロスの装飾が施される。

セメタリースパインタイプ。フロントは装飾等がないプレーンな仕様になっており、よりシンプルに着こなすことができる。


セメタリースパインタイプのバックショット。モデル名の通り、セメタリーパッチが背骨に沿うように配置される定番のデザイン。

フローラルクロスタイプ。ブレスレットやリングなどでおなじみの装飾も、オールレザーのパッチになるとだいぶ雰囲気が違い、どことなくモードな空気が漂う。

実用性を兼ね備えた素晴らしいデザインの高級クロノグラフ

冬のボーナスを注ぎ込んで欲しかった腕時計を買う方が多いらしい。LIVE IN RUGGEDがおすすめするのはクロノグラフタイプ。それも伝統あるブランドが作る本当にクールでレアなピースだ。
タグ・ホイヤーは古くからクロノグラフを製作してきたが、1960~70年代(腕時計の黄金時代とも呼ばれる年代)からモータースポーツと密接な関係を築いてきた。F1を頂点とするモータースポーツの世界で、スポンサーとして、そしてレーサーの腕に収まる実用的でラグジュアリーなツールウォッチとして、タグ・ホイヤーは常にモータースポーツと共にあったメーカーである。伝説的なレーサーがオンオフ問わず愛用していたという事実だけで時計好き(もしくはクルマ好きやレース好き)であればワクワクしてしまうものだ。
Autavia(オータヴィア)はタグ・ホイヤーの伝説的なクロノグラフのひとつ。スポーティーでレーシーなルックスと高精度のクロノグラフ機能で、当時からレーサーにリアルタイムで使われた腕時計である。腕時計の総合メディアとして世界トップに君臨する「HODINKEE」エクスクルーシブとして昨年誕生したAutavia Calibre Heuer 02はまさにボーナスを注ぎ込む対象にふさわしい。コラボレーションやエクスクルーシブが多い腕時計業界の中でも特にエキサイティングなモデルと言っても良いだろう。
1970年代初頭に現れ始めたビビットな色使いを採用し、「オレンジボーイ」と呼ばれたブラック×オレンジの引き締まったカラーコンビネーション。Autavia Calibre Heuer 02はマニア垂涎のオレンジボーイを直接彷彿させる。秒針やダイヤルのマーカーはオレンジ色に塗られ、まるでレーシングカーのレーシングストライプのようだ。太めのタキメーターベゼルは視認性に富み、マッシブな雰囲気を強めている。
また、HODINKEEエディションであることを示す彫刻がケースに施されており、裏側はシースルーバック。ホイヤー自慢のオートマチックムーブメントが動く様を覗き見ることができる。クラシカルなライスビーズブレスレットであることも「分かってるな…」と思わざるを得ない。端的に言って完璧なクロノグラフだ。
高級腕時計を購入する際に必要であるデザイン・精度・機能性・高い品質に加え、市場価値という点でもかなり高いレベルにあるスポーツウォッチ。もちろんこれよりも高値で取引される腕時計は山ほどある。しかし、Autavia Calibre Heuer 02は本当に特別なモデルであることを日々実感できて、かつ実用的なところが素晴らしいと思う。6,050ドルという価格は決して安くはないが、毎日着用できるタグ・ホイヤーの高級クロノグラフと考えれば割安感すら感じるモデルだ。買えるなら今すぐ買ってしまった方が良い。


黒・白・オレンジ・シルバーのタフでスポーティーな色使いが最高にクール。伝説的なモデル、オータヴィアの現代版にして、HODINKEEエクスクルーシブというマニアックさも花丸!

言うまでもなくドライビング時の腕時計として最適。手首に巻いて運転すれば気分はF1ドライバー?くれぐれも安全運転で!


新旧の「オレンジボーイ」が並ぶ図。左下がヴィンテージのオータヴィアだ。2カウンターであることやケースサイズやベゼルの太さなどに違いがあるが、現代版はヴィンテージのディテールを多く受け継いでいることが分かる。

逆パンダカラーのダイヤルとオレンジの針が古き良き時代のクロノグラフを直接思い起こさせる。それでいてモダンさもあるのだからホイヤーはデザインが本当に上手い!

バカバカしいくらい突出したアイテムだから強烈な「欲しい!」が生まれる

第2回「男の物欲カタログ」ではポルシェ911 GT3 RS ヴァイザッハパッケージというヘンタイマシンを紹介した。今回は更にヘンタイ度が増したとびっきりのマシンを紹介しよう。
Supreme(シュプリーム)、Honda(ホンダ)、Fox Racing(フォックスレーシング)のトリプルコラボレーションで話題をさらったモトクロスプロダクトである。ダートバイクやヘルメット、グローブ、ウェアといったファッションには直接関係がないバイクギアのリリースはいかにもシュプリームらしい。
一目でシュプリームと分かるレッド×ホワイトのロゴがダートバイクに大きく躍る様は痛快そのもの。モトクロス競技専用車 CRF250Rをベースとしたダートバイクはアメリカの店頭限定で9,998ドルで販売された。今どれくらいのプレミア価格に化けたかは不明だが、定価以下で買えることは未来永劫ないだろう。
ホンダとフォックスレーシングとのコラボレーションアイテムは生きていくうえではまったく必要のないモノかもしれない。それでも洋服が好きで、とりわけシュプリームが大好きであればなおさら「カッコいい!」「欲しい!」と思うはずだ。恐らくシュプリームは「これをウチが作ったらカッコいいだろうな」とか「こういうのが個人的にも欲しいな」と思うモノを厳選して作っているのだと思う。そういった作り手側の妄想を高い次元で具現化したプロダクトは多くの人々を魅了するものだし、シュプリームはとりわけ上手なブランドなのは間違いない。
モトクロス競技用のV1ヘルメットはバイクに乗らない人間(私)が見ても「インテリアに欲しい!」と意味不明な思いに駆られてしまった。これぞシュプリームマジック。レッド×ホワイトのSupremeロゴが入っているだけで途端にクールでヒップなモノに見えてしまうのだから本当に不思議だ。
フロントに大きくホンダのロゴとウィングマークがプリントされるジップアップワークジャケットはブラック、レッド、ダークグリーンの3色展開。Supremeロゴが大きく入るレーシンググローブはまるでシュプリームがメインスポンサーになっているような気分にさせてくれる。いずれも色使いや細かいデザインが見れば見るほど秀逸。シュプリームのプロダクトには「今買わないとプレ値になってしまう」という独特の危機感が常に漂っているのだが、このコラボレーションは特にそれが色濃い。


赤いボディに白いSupremeロゴが映えまくり!手に入れること自体が非常に困難だが、もしこれを日常使いしている猛者がいたら強くリスペクトする。

競技用V1ヘルメット。サイドに入る真っ赤なSupremeロゴが特別感を演出。38,500円(税込)という買いやすい(?)値段なのでバイクに乗らない人もこぞって購入したという信憑性の高い噂あり。


ジップアップワークジャケットは3色展開。背面中央にお馴染みのボックスロゴが入る。

レーシンググローブは2色展開で13,200円(税込)。シュプリームの素晴らしいところが、超が付くほど人気ブランドに成長しても定価自体は良心的なところだと思う。人気が出た途端に理由を付けて値上がりするブランドが珍しくない中、基本的に一貫して買いやすい値段を貫く企業姿勢は称賛されるべき事実だ。

ヴィンテージデニムを買って学生時代の憧れを今叶えるのはどうだろう?

第3回「男の物欲カタログ」の最後を飾るのはヴィンテージのリーバイス507XX。いわゆる2ndモデルのガチのヴィンテージである。多くのブランドが復刻版を独自に発売している中、本物のヴィンテージを欲しがる理由は?
デニムに興味がない人からは「ボロボロのヴィンテージデニムに大金を払うなんて理解できない」と言われるかもしれない。または「新品でもっと安くてフレッシュなデニムが買えるのに、なぜ?」とか。デニム狂にとってこれらは本当にナンセンスな意見で、まったく意味をなさない。例えば家具やクルマも価値のあるヴィンテージは高値で取引されているが、デニムもまったく同じこと。例えダメージが強くてもヴィンテージには独特の魅力があるのだ。
写真の507XXは50年代に製造されたもの。革パッチが欠損しているが、フラップ下カンヌキが暗色であること、ウエストバンドがシングルステッチであること、そして前立て裏の第2ボタン上で切り返しが入っていることなどから1955年頃までに製造された革パッチモデルと推測されている。これまでのオーナーが普通に着ていたモデルなのでところどころダメージがあり、それが強い箇所には必要に応じてリペアも施されている。他の洋服であれば何の価値もなくなってしまうところだけど、それでも高値で売買されるのがヴィンテージ・リーバイスの世界。この個体は既に売り切れだが102,384円(税込)だった。
私が洋服に目覚めた高校生の頃はちょうどヴィンテージデニムブームの真っ最中だった。501XXは目を疑うような金額で雑誌に載り、そのどれもがうっとりするほどカッコいい色落ちだったことを鮮明に覚えている。デニムジャケットは今よりも遥かに買いやすい値段だったと記憶しているが、当時も色が濃く残っている個体は高値だったはずだ。当然お金なんてなかったので学生が買えるわけがない。インターネットもなかったので情報の収集源は雑誌か実店舗のみ。ヴィンテージデニムは当時オシャレが好きな貧乏学生の多くが心底憧れた洋服のひとつだったはずだ。
そんなノスタルジーもあり、すっかりオジサンに近づいた今もヴィンテージデニムには聖域のようなものを感じてしまう。今なら頑張れば買えるけど、一度ハマると二度と抜け出せなくなるのではないか…そんなおっかなびっくりなところもあったり。
とはいえ、20年前に憧れの的だった存在を「エイヤッ!」と買ってしまう行為はどう考えても買い物として素晴らしい。きっと周りの友人たちも褒めてくれるだろう。501XXはちょっと手が届かないので、ある程度こなれた相場の507XXからヴィンテージデニムライフを始めてみるのはいかがだろうか。


見るからに素晴らしいフェイドに成長している507XX。全体から漂う本物感溢れるオーラはヴィンテージならでは。

丸みの強いポケットフラップも50年代特有のディテール。マニアはこういうところに激しく萌える。


肘から手首に掛けて強めにフェイドした腕回り。恐らく元のオーナーはデスクワークメインのライフスタイルを送っていたのではないだろうか。

ボックス型シルエットもオーバーサイズがトレンドの今は逆にカッコ良かったりする。ざっくりと羽織るくらいの感じで着てもカッコいい。

買い物は尊い行為である

第3回「男の物欲カタログ」もジャンルレスでお届けしてきたが、楽しんでいただけただろうか。これまでと同様筆者の主観たっぷりの内容で若干の後ろめたさを感じないでもない。ただ、それぞれのジャンルを愛する物欲魔の方々からは多少なりとも共感を覚えていただけるのではと信じている。
年の瀬も迫る中、大の大人が次は何を買おうか…と妄想する姿はカッコ良くはないかもしれない。暇なのね、と嫌みのひとつも言われてしまうかもしれないが、自分が稼いだ金を自分のために使う行為は、良識の範囲内であればいつだって楽しむ権利がある。人生なんてあっという間なんだから来年も欲しいモノはどんどん買おうじゃないか!

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