People with style Pt.2 Virgil Abloh

ヴァージル・アブロー氏のご逝去に寄せて

享年41歳。あまりに突然な訃報にファッションを愛する多くの人々が衝撃を受けた。


Written : LIVE IN RUGGED

たった数年で世界のファッションを変えた

Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)が亡くなったという一報を最初に目にした時、フェイクニュースであってほしいと願いながらニュースサイトを確認した。きっと全世界のファッション好きが同じ心境だったのではないだろうか。
2014年春夏コレクションでデビューした〈OFF-WHITE C/O VIRGIL ABLOH™(オフホワイト c/o ヴァージルアブロー)〉では、「ラグジュアリーなストリートウェア」というコンセプト通り、既存のストリートファッションの枠組みに収まらない革新的で尖ったデザインと上質なモノ作りの精神と手法で、ファッション業界に衝撃を与え続けてきた。デビューから間もなくアメリカ・ロサンゼルスの伝説的なセレクトショップ〈maxfield(マックスフィールド)〉やフランス・パリの〈COLLETE(コレット)〉、アメリカ・ニューヨークの〈BARNEYS NEW YORK(バーニーズ・ニューヨーク)〉といった超一流ショップで取り扱われ、駆け足で世界を席捲。ここ日本での人気も非常に高い。
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ヴァージル・アブローはファッションデザイナー/ディレクターとしてだけではなく、建築家やアーティストとしての側面も持っていた。ウィスコンシン大学マディソン校で土木工学を学んだのちにイリノイ工科大学に進学し建築学修士号を取得。ファッションデザイナーとしては異色の経歴を持っていたと言っていいだろう。Kanye West(カニエ・ウェスト)のクリエイティブ・ディレクターを務めていたことは音楽好きおよびファッション好きにとっては周知の事実だ。また、日本のストリートブランドを愛し、〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉や〈A BATHING APE(ア・ベイシング・エイプ)〉、〈HUMAN MADE®(ヒューマンメイド®)〉といった90年代裏原宿ファッションを起源とするブランド・デザイナーとも深い関係性を築いていた。ここ数年の偉業としては、あの〈LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)〉のメンズ部門アーティスティック・ディレクターに就任したこと。メゾンの中のメゾンとも言える〈ルイ・ヴィトン〉のアーティスティック・ディレクターをストリートファッション業界のデザイナーが務めること自体が物凄いことだが、ヴァージル・アブローはメゾンに敬意を払いながら既成概念に捉われない自由なクリエイティブを爆発させる。ヴァージル・アブロー自身が敬愛するNIGO®と共に作り上げたコレクションには、見る人が思わず笑顔になるようなファッション愛に満ちたデザインを今も展開している。

ヴァージル・アブローが作ってきたすべてがずっと残り続けていく

死因は心臓血管肉腫という心臓にできる稀ながん。2019年にがんであることを診断されて以来、公に発表することなく、さまざまな治療を受けながら闘病生活を続けてきたという。ヴァージル・アブローをよく知る人の言葉によると、周囲への配慮を忘れない優しさを持った人物だったそうだ。自身が展開する〈オフホワイト〉はもちろん、〈ルイ・ヴィトン〉のアーティスティック・ディレクターという責任ある立場にいるため、辛い闘病生活にあっても病気であることを告白せずに戦っていたのだろうか。突然すぎる訃報はファッション業界はもちろん、消費者、そしてファンである私たちにとっても衝撃的だ。重ねてになってしまうが、41歳という若さは、あまりに早すぎる。
ヴァージル・アブローが成し遂げてきた功績、ファッション業界をはじめとした世の中に与えた影響は、歴史的なものだ。今後も偉大なデザイナー/クリエイターとしてずっと語り継がれていくことと思う。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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