ジャパンデニムの始祖 – キャントン・オーバーオールズ

メイドインジャパンのデニムが世界一のクオリティであることはもはや世界の常識として浸透しつつあるが、どこのブランドが最初に始めたのかはあまり知られていない。この記事ではジャパンデニムの始祖であるCANTONをクローズアップする。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : CANTON

ジャパンデニムの礎を作った伝説のブランド

CANTON(キャントン)というブランド自体、よほどのデニム好きじゃなければ知られていないだろう。このブランドを深く知るためには、1890年代まで時代を遡らなくてはならない。
1899年にアメリカ・ジョージア州に誕生した生地メーカー「キャントンミルズ」は高品質のデニム生地をセイン産していた。1900年以前の日本はまだ新興国という立場にあり、デニムを使ったウェアはまったく浸透していなかったが、やがて日本にデニムを輸出するようになる。1963年になると大石貿易がこのキャントンミルズ製のデニムを使い、日本で初めてジーンズを製作。ここに初めて日本のデニムブランド「CANTON」が誕生したのだ。
当時のCANTONのジーンズはTALONファスナーやSCOVILLリベットまでも輸入し、縫製はユニオンスペシャル社のミシンで縫い上げるなど、現在当たり前のように行われているヴィンテージディテールのジーンズ製作を行っていた。徹底したこだわりはまさにジャパンデニムの先駆けだ。
しかし、ブランド発足から約5年後に消滅してしまう。そのこだわりゆえプライスが高すぎたのか、時代の先を行き過ぎていたのかは分からない。
ところが2003年に豊島株式会社がCANTONの商標権を継承。伝説のデニムブランドを復活させるべく専属チームが組まれ、オリジナルの生地開発に着手することとなる。


クラシカルなシンチバックが備わったジーンズ。淡く色が落ちたインディゴの質感と相まって古き良き時代を感じさせる。

デニムジャケットも製作しているほか、現在のCANTONはマーガレット・ハウエルのデニムウェアを製作するなど活動は多岐にわたる。

ヴィンテージの粗雑感を徹底的に再現した新生キャントン

ブランド復活にあたりもっとも苦労したのはデニム生地の開発だったという。糸の番手から始まり、撚り、原綿の選択。そして染めや織り、仕上がりまで徹底的に研究。どういった色落ちを目指すのかでもチーム内で試行錯誤を繰り返したそうだ。
たかがデニムにそこまで、という言葉はこういった専門家には意味がない。運針(1インチあたり何本針を打つか)はパーツによって多さを変える。縫い糸は綿糸を採用。通常デニムの縫い糸には強度的に優れるポリエステルのスパン糸が採用されることが多いが、経年変化の観点から綿糸にすることで、生地のみならず糸までエイジングするジーンズを目指したのだ。
気の長くなるような研究を経て、2008年にCANTON OVERALLS(キャントン・オーバーオールズ)として復活。「1963 XX」と名付けられたデニムは伝説のブランドにふさわしい品質となった。
キャントン・オーバーオールズの「1963 XX」は1800年代後半から1960年代にかけてアメリカのアモスケイグ社とコーンミルズ社の2社によって織られたデニムがモチーフ。アモスケイグとコーンミルズは質感が異なるデニムを製作していたが、キャントン・オーバーオールズは両者に共通する「良い意味での粗雑感」に注目した。つまり、新しい織機で大量に織る画一的なデニムではなく、旧式力織機特有の緩く織られた生地感。デコボコとした荒めの緩い質感が生まれ変わったキャントン・オーバーオールズのベストと判断するに至った。


左は1963-104。1930年代の501XXをベースに独自の解釈を与えた看板モデルだ。ヴィンテージに敬意を払いつつ、余分なパターンをカットしたスッキリしたシルエットが新鮮に映る。
右は1963-105。104と比べると股上を2cm浅く、渡り・膝・裾巾を1cm細く設定。より現代的なシルエットになっている。

1963-104にはシンチバックが備わる。しかしワークパンツ然とした太さではなく、オーソドックスな程よい太さなので合わせるトップスを選ばない汎用性も魅力だ。
1963-105は背面も美しいカットであることがよく分かる。ベルトループが多めに設定されているのもキャントンの特徴。

細部にまで徹底的にこだわることで唯一無二のジャケットへ

この世にジーンズが生まれてからしばらくはファッションではなくワークウェアだった歴史を大切にしながら、キャントン・オーバーオールズはデニムウェアを常に着られる道具と捉えている。機能性を追求することは使い勝手を考えるとマスト。ただ、オーバースペックに陥ることのないバランス感のあるブランドとして復活したことも注目すべきだろう。ヴィンテージジーンズをベースにしつつ、現代でも愛されるためには当時の無駄な部分を思い切って省いてしまうところも面白い。


1stタイプをモチーフにした1963-701はリジッドとワンウォッシュの2つが用意される。肩幅を基準に身幅をシェイプし、着丈をプラス。ご覧の通り見るからに現代的なシルエットに仕上がった。

1963-701の背面。506XXがモチーフなのでシンチバックが付く。1サイズ大きいサイズを選んでシンチバックを絞り、立体感を出す着こなしも面白そうだ。


こちらは2ndタイプをモチーフにした1963-702。縫製糸はイエローとオレンジの綿糸で番手・運針を部位にて調整している。

1963-702の背面。鉄製ボタンや打ち抜きリベットなどの副資材もオリジナルを製作。

知る人ぞ知る存在であるうちに手に入れておきたいブランド

1963XXは12ozの生機デニムだが、洗いを掛けることで13.75ozに変化する。ザラザラした質感とプチプチと粒状の隆起がまだらに現れるデニムの手触りは、まさに往年のヴィンテージに限りなく近い。
キャントン・オーバーオールズのデニム製品には魅力的なヴィンテージのディテールがあるものの、ヴィンテージ一辺倒ではなく、オリジナリティに富んだ仕様・パターンであることが素晴らしいと思う。また、ジャパンデニムの始祖として伝説の存在だったブランドが21世紀の今、見事に復活したことも喜ばしいじゃないか。
ブランド自体はまだマニアックな存在だが、デニム狂であれば知る人ぞ知る存在であるうちに手に入れておきたい。織られてからは何も手を加えていない生機デニムは、着込むごとに捩れが発生し、縮みや毛羽立ちも発生する。まるで生きているかのようなデニムを生の状態から味わい尽くせる喜び。キャントン・オーバーオールズのデニムからは手作業ならではの温もりを感じられるはずだ。

ITEM CREDIT
  • CANTON OVERALLS:1963-104 / 1963-105 / 1963-701 / 1963-702

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