進化し続けるフルカウントのジーンズ
ジャパンデニムを代表するブランドであるフルカウントのジーンズが、2019年1月末に仕様変更を行う。熱狂的なファンからも完成の域に達していると評価されてきたジーンズは、まだ理想ではなかったのか?フルカウントの歴史と共に考察する。
Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Fullcount official blog
ヴィンテージの再現と極上の穿き心地を両立した最初のブランド
フルカウントの歴史は今から27年前の1992年までさかのぼる。中学生時代にリーバイス501に魅了されて以来、常にデニムとアメカジを愛し続けてきた創業者の辻田幹晴氏がEVISU(エヴィス)から独立する形でブランドを創業。「最高の日常着」をコンセプトに核となるジーンズ開発に没頭する。
フルカウントが着目したのはジーンズ黄金期の1940~50年代。ジーンズには作業着として誕生したタフさと、映画や音楽の影響でファッションとして進化した両極端の側面がある。フルカウントは実用性とファッション性を同じバランスで両立したアイテムを作ることを念頭にモノ作りを行ってきた。
フルカウントが着目したのはジーンズ黄金期の1940~50年代。ジーンズには作業着として誕生したタフさと、映画や音楽の影響でファッションとして進化した両極端の側面がある。フルカウントは実用性とファッション性を同じバランスで両立したアイテムを作ることを念頭にモノ作りを行ってきた。
「最高の日常着」はブランドのコアとなるコンセプトだが、ジーンズを開発する際は「家に帰っても寝るまで脱ぎたくないこと」を常に重視してきたという。実際フルカウントのジーンズは穿き心地において常に高い評価を得てきた。コシがあるのに柔らかさもあり、長時間着用しても疲労感が少なく、ずっと穿いていたいジーンズ。言葉にすると簡単そうに響くが、本当に穿いていてストレスを感じないジーンズがいかに少ないかは、デニム狂であればよくご存知だろう。
フルカウントのデニムはすべて綿花の中でもハイクオリティーとして名高いジンバブエコットンを使用している。繊維を傷つけないようひとつひとつ手摘みするため膨大な人的コストが掛かり、2019年の今でもジーンズに100%ジンバブエコットンを採用するブランドは少ない。素材にこだわれば企業の利益が減ることは言うまでもないことだが、原価率を上げてでもジンバブエコットンにこだわり続けたのは、理想のデニムアイテムを作るためには絶対に必要不可欠であると判断したからだろう。
ジンバブエコットンは手摘みされることで軽く細長い丈夫な糸となる。色も白くナチュラルな色で染まるため、糸にダメージを与える化学薬品の前処理は不要。素材が良いため穿き心地と色落ちの良さに直結した。
フルカウントのデニムはすべて綿花の中でもハイクオリティーとして名高いジンバブエコットンを使用している。繊維を傷つけないようひとつひとつ手摘みするため膨大な人的コストが掛かり、2019年の今でもジーンズに100%ジンバブエコットンを採用するブランドは少ない。素材にこだわれば企業の利益が減ることは言うまでもないことだが、原価率を上げてでもジンバブエコットンにこだわり続けたのは、理想のデニムアイテムを作るためには絶対に必要不可欠であると判断したからだろう。
ジンバブエコットンは手摘みされることで軽く細長い丈夫な糸となる。色も白くナチュラルな色で染まるため、糸にダメージを与える化学薬品の前処理は不要。素材が良いため穿き心地と色落ちの良さに直結した。
また、フルカウントは旧式力織機だけでジーンズを作り始めた最初のジャパンデニムブランドとしても知られている。ジンバブエコットンという最高の素材を手に入れても、効率重視の織機では理想のデニム作りには程遠い。辻田氏は工場を説得し(職人からは「非効率で手間が掛かり過ぎる」と相当嫌がられたそう)、半世紀以上も前の旧式力織機を復活させ、常に調整とメンテナンスを繰り返しながらデニムを生産するスタイルを貫いている。
素材へのこだわり。そして素材を料理するためのこだわり。この2つに徹底的にこだわり続けたことが、フルカウントのデニム業界でのパイオニア的なポジションを確立させたと言えるだろう。
素材へのこだわり。そして素材を料理するためのこだわり。この2つに徹底的にこだわり続けたことが、フルカウントのデニム業界でのパイオニア的なポジションを確立させたと言えるだろう。
2019年1月末、すべてのジーンズの仕様が変更される
シルエットに違いはあれど、フルカウントのジーンズは基本的に同じ仕様を持つ。ベーシックな5ポケットタイプで、ジンバブエコットン100%のセルヴィッジデニム。12種類もの太さの違いを持たせたエジプシャンコットン(超長綿)の縫製糸。そしてバックポケットの特徴的なステッチとシンプルな赤いピスネーム。
2019年の1月末頃から入荷されるすべてのジーンズからバックポケットのステッチとピスネームが廃止され、シルエットにも若干の修正が入ることとなった。これを良しとするかは人それぞれだろうけど、少なくともステッチとピスネームに関しては個人的には少々残念な気がする。というのも、フルカウントのバックポケットは一見してフルカウントだと分かるオリジナリティに繋がっていたし、第一カッコ良かったからだ。
この両者の廃止理由は公式にはまだ発表されていないため不明。今後更に世界的な戦略を進めていくためにはない方が良いと判断したのかもしれないし、単純に心機一転したかったからかもしれない。シルエットに関しては定期的に修正されることがデニム業界の常なので歓迎すべきことだろう。いずれにしても、リニューアル前のアイテムは1月中旬の今手に入れておかないと、新品で手に入れることは難しくなるのでご注意を。なお今回のリニューアルはステッチとピスネーム、シルエットだけで、他の要素はこれまでと変わらないことも留意していただきたい。
この両者の廃止理由は公式にはまだ発表されていないため不明。今後更に世界的な戦略を進めていくためにはない方が良いと判断したのかもしれないし、単純に心機一転したかったからかもしれない。シルエットに関しては定期的に修正されることがデニム業界の常なので歓迎すべきことだろう。いずれにしても、リニューアル前のアイテムは1月中旬の今手に入れておかないと、新品で手に入れることは難しくなるのでご注意を。なお今回のリニューアルはステッチとピスネーム、シルエットだけで、他の要素はこれまでと変わらないことも留意していただきたい。
進化し続ける老舗デニムブランド
例えばリーバイスからアーキュエイトステッチと赤タブが廃止されたら?いや、実際はそんなことは起こり得ないだろう。それほどジーンズにとって重要な要素なのだ。どんなデザインのステッチがバックポケットに入るのか(または何も入らないのか)はジーンズのルックスを決めるトップクラスの要素であり、ここが気に入らないとまず購入することはない。腕時計にとっての文字盤と同様の立ち位置がバックポケット近辺と言って差し支えないだろう。
それほど重要な箇所をわざわざ変更するフルカウントの真意は計りかねるものの、これほど成功を収めたブランドが今も絶えず進化をし続けていることにまずは感心してしまう。ずっと同じモノをまったく変えずに作り続ける方が遥かに楽で安全だからだ。安全圏に留まらず挑戦をし続ける姿勢は、辻田氏の「理想のジーンズを作るために人生を懸けてきた」姿とオーバーラップする。
それほど重要な箇所をわざわざ変更するフルカウントの真意は計りかねるものの、これほど成功を収めたブランドが今も絶えず進化をし続けていることにまずは感心してしまう。ずっと同じモノをまったく変えずに作り続ける方が遥かに楽で安全だからだ。安全圏に留まらず挑戦をし続ける姿勢は、辻田氏の「理想のジーンズを作るために人生を懸けてきた」姿とオーバーラップする。
ITEM CREDIT
- Jeans:Fullcount