Modern Indian jewelry Cody Sanderson

インディアンジュエリーの新しい世界を切り開いたコディー・サンダーソンの唯一無二の世界観に迫る

モダンなインディアンジュエリーというこれまでになかったクリエイティブを生み出したオリジネイター、〈コディー・サンダーソン〉にクローズアップ。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : CODY SANDERSON

インディアンジュエリーの常識を覆した風雲児

本格的なサマーシーズンを目前に控え、今一番気になるのは真新しいシルバージュエリー…という方もいらっしゃるはず。露出の多いこの季節は一年でもっともジュエリーを楽しめる。そして、ジュエリーは洋服や靴と比べても個性を演出しやすいアイテムだ。本日はアメリカのシルバージュエリーブランド〈Cody Sanderson(コディー・サンダーソン)〉にクローズアップ。新興ブランドながらメンズジュエリー界に新風を巻き起こした人気ブランドの魅力に迫る。
デザイナーのコディー・サンダーソンは1964年にアメリカ・ニューメキシコ州ギャラップで誕生。ナバホ居留地の首都アリゾナウィンドウロックで成長する。ナバホ族の血を引き、伝統的なインディアンジュエリーのメッカで育ったコディーがシルバースミスの道に進むのはごく自然なことだったのだろう。2001年から本格的にオリジナルジュエリーの制作をスタートし、翌年には「サンタフェ・インディアンマーケット」の展示会で国内外の目の肥えたコレクターから絶賛されている。2008年にはアリゾナ州で開催された「ハード・インディアン・マーケット2008」にてBEST OF SHOWを受賞。名実共に世界から注目されるジュエリーデザイナーへと成長した。
自身の名を冠するブランドを立ち上げてからは更に才能を開花させ、独創的なジュエリーを次々と発表。伝統的なインディアンジュエリーの製法を用いながらこれまでにはなかったオリジナリティあふれるデザインで唯一無二の世界観を構築する。
〈コディー・サンダーソン〉が熱狂的なファンを獲得した最大の理由は、ナバホ族の血を引くネイティブアメリカンでありながら完全にオリジナルのデザインを確立したことだ。これまでのインディアンジュエリーは誤解を恐れずに言うと「ザ・インディアンジュエリー」。日本では「ネイティブ系」と呼ばれる伝統的な側面が強いデザインしかなかった。しかし〈コディー・サンダーソン〉は確かにインディアンジュエリーのテイストもありながら、明らかにまったく違うデザインを展開。誰も見たことがない新鮮さがあり、それでいて一級レベルのクオリティがあるシルバージュエリーは瞬く間に世界を席巻した。


モードでロックな着こなしにも違和感なくハマるのが〈コディー・サンダーソン〉の特徴。

謎めいたテイストと分かりやすいポップさを併せ持つ独創的なデザインは一度見ただけで脳内に強烈な印象を残す。それくらいこのブランドのデザインはオリジナリティがある。


リングやバングルなどアイテムを問わずインパクトの強いアイテムが揃う〈コディー・サンダーソン〉。

価格の高いワイドカフ系ですら飛ぶように売れるのがこのブランドの特徴だ。もっともこのブランドらしさを味わえるからだろう。

独創的なデザインと世界観はモードファッションも巻き込むことに

スターモチーフのように分かりやすいポップなデザインと円や四角、菱形といった幾何学模様を組み合わせた不思議なデザインも積極的に採り入れ、それらが混然一体となって織りなす〈コディー・サンダーソン〉の世界観はファッション業界のデザイナーたちをも魅了。〈TAKAHIRO MIYASHITA The soloist.(タカヒロミヤシタ・ザ・ソロイスト)〉や〈1PIU1UGUALE3(ウノ・ピゥ・ウノ・ウグァーレ・トレ)〉といった世界的なファッションブランドともコラボレーションを果たすことで、〈コディー・サンダーソン〉の名は一部のシルバージュエリーマニアだけではなくファッション業界にも広く知られるようになる。トレンドセッターである木村拓哉氏や日本のロックシーンを代表するB’zの稲葉浩志氏が着用し始めたのもちょうどこの頃。ファッション雑誌では名スタイリストの野口強氏がスタイリング時に同ブランドのジュエリーをハイブランドのセットアップに合わせて紹介するなど、ここ日本でも一気に人気と知名度が爆発した。
ただし、ファッションブランドとのコラボレーションや著名人の着用がきっかけのひとつではあるものの、〈コディー・サンダーソン〉が人気ブランドへと成長したのはジュエリーのレベルが高かったからだと付け加えておきたい。先に述べたように独創的なデザインでもってオリジナルの世界観を確立したことはもちろん、今なおデザイナーであるコディー・サンダーソン自身が制作に携わっているという職人肌の一面と、根底にあるインディアンジュエリーの精神(大量生産をせずひとつひとつを人の手で制作するスタイルなど)が確かにあり、それらが認知されたことで世界から認められるブランドへと成長したのだ。
大振りでボリュームがありながらモダンで洗練された雰囲気もあり、いかにもアメリカっぽいテイストとヨーロッパ的なモード感も併せ持つ摩訶不思議なジュエリー。実際、〈コディー・サンダーソン〉を愛用する人々はネイティブ系ジュエリーを身に着ける層だけではなく、モードやストリートのファッションを愛する人々も非常に多い。これもまた〈コディー・サンダーソン〉の独創性を物語る一面と言えるだろう。


ブランドを代表するスターモチーフがいくつも連なるバングル。カットアウトやオーバーレイなどインディアンジュエリーの伝統的な製法が発揮されていることが分かる。

巨大なスターモチーフのリングもオリジナリティ抜群。とにかくデカい!


中央にスターモチーフを配し、周囲に円や菱形などの幾何学的な模様を散りばめたワイドカフ。鏡面磨きと燻したシルバーのコントラストが男らしい。

裏面を見るとさり気なく流れ星のデザインが。こういった遊び心と細部へのこだわりも絶賛される理由だ。


スターモチーフのデザインを発表するシルバーブランドはたくさんあるけれど、〈コディー・サンダーソン〉のデザインは他のどのブランドにも似ていない。奇をてらっているようでバランス感が素晴らしいのもあふれる才能を感じさせる。

〈タカヒロミヤシタ・ザ・ソロイスト〉の宮下貴裕氏は真っ先に〈コディー・サンダーソン〉にべた惚れしたファッション業界の中の一人。コラボレーションアイテムが初めて発表された時はかなり話題になった。


いわゆるハイジュエリーのように細部に至るまで曇りひとつないポリッシュではないが、ハンドメイドらしさが残るところがまた魅力だったりする。

気が遠くなるような細かい刻みが入る大振りのバングル。よく見ると彫り込みなども細部まで丁寧に施されていることが分かる。


売れ線を狙うのではなくクリエイティブさを優先させる姿勢も高く評価されている。ここまでアバンギャルドなデザインはサンプル止まりで終わるブランドの方が圧倒的に多いが、〈コディー・サンダーソン〉は平気でリリースしてしまうのが面白い。

謎めいたデザインながら、コインのエッジのようなスタンプワークなどに伝統的なインディアンジュエリーのテイストが残っている。

〈コディー・サンダーソン〉をごく自然に身に着けることができたら、間違いなく男としてカッコいい

そもそもインディアンジュエリーとは、その名の通りアメリカに居住するインディアン(ネイティブアメリカン)が制作したジュエリーのことを指す。インディアンの血を引き継いでいるか、厳しい儀式を経て現地のネイティブアメリカンたちから認められた者が制作するものだけがインディアンジュエリーと呼ばれるのだ。
例えば日本の〈goro’s(ゴローズ)〉の創始者である高橋吾郎氏や、〈WING ROCK(ウイングロック)〉創始者の前崎リキ氏は「本物のインディアンジュエリー」を名乗る資格がある人物。〈コディー・サンダーソン〉の場合は直接的にインディアンの血を引いており、少年時代からリアルにナバホ族の環境で育ってきた人物なので、他の誰よりも直接的なインディアンジュエリーを制作する資格がある。それにもかかわらず伝統という枠から出たクリエイティブを発揮しているところが最高にクールではないか。
伝統的なハンドメイドの製法を大切にしながらモードの世界でも通用するモダンなデザインでインディアンジュエリーの世界、そしてメンズジュエリーの世界に新しい風を巻き起こした〈コディー・サンダーソン〉。このブランドがブレイクしてからいくつものブランドやショップがそっくりのシルバーアクセサリーをリリースしているが、言うまでもなく本家とは品質も作り込みも比べ物にならないくらい違う。それはまさにオリジネイターとフォロワーの違いだ。
この個性の強いシルバージュエリーが似合うのは、何となく流行っているから手を伸ばすようなタイプではなく、ましてや強烈な個性にあやかろうとするようなタイプでもない。価値観に共感し、長いスパンで自然と付き合い続けられる人間だ。もしあなたがそんなタイプであれば、この夏〈コディー・サンダーソン〉の素晴らしいシルバージュエリーを手に入れてみてはいかがだろうか。
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