Old Jeep Wagoneer forever

名車は時を超えて人生の相棒になる – 最高のスローライフを送れるジープ・ワゴニア

古着店のオーナーが乗っていそうな「いなたい」クルマ。そんなちょっとゆるくてノスタルジックな〈ジープ〉はライフスタイルにこだわりを持つ男女にこそ似合う。木目調パネルが何とも言えない郷愁を誘う91年製のワゴニアは2021年の今こそおすすめのSUVだ。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Wallpaper Flare

渋谷区恵比寿は判で押したように最新の高級車ばかりが走っている

現在の勤務地である東京都渋谷区恵比寿近辺を歩いていると家を購入できるクラスの高級車を頻繁に見かける。高級住宅地が近辺に広がっているせいか、〈FERRARI(フェラーリ)〉や〈LAMBORGHINI(ランボルギーニ)〉といったいかにもなスーパーカーよりも高級SUVやセダンが多く、〈Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)〉のAMG Gクラスが体感的にもっとも遭遇率が高い。他は〈ROLLS-ROYCE(ロールス・ロイス)〉、〈BENTLEY(ベントレー)〉、〈LAND ROVER(ランドローバー)〉、〈MASERATI(マセラティ)〉といった具合。日本勢は〈LEXUS(レクサス)〉の一人勝ち状態である。天井知らずの家賃相場である渋谷区はさすがにお金持ちが圧倒的に多く、彼らのほとんどは年式の高い高級車を求める傾向があるようだ。
クルマ選びに関してはやや天邪鬼な嗜好を持つ筆者としては、道で頻繁に遭遇する真新しい高級車を見ても感動はしない。「あぁ、また昨日も見た〈ロールス・ロイス〉だ」と思うくらいだ(会社の近くにあるコンビニによく同じ〈ロールス・ロイス〉が路駐している)。リッチになったら分かりやすい高級車が欲しくなるのだろうか?タクシー並みに同じ車種と遭遇するのに?それとも本当はもっとマニアックなクルマに乗りたいけど、奥様や子供から反対されるのだろうか?本当の理由は謎だけれど、東京の一等地にもかかわらず個性が足りないことは日本人がクルマに対してさほど強いこだわりを持っていないことの裏返しのように思えてしまうのだ。

所有すること自体に精神的な豊かさがある〈ジープ〉ワゴニア

1991年製の〈JEEP(ジープ)〉WAGONEER(ワゴニア)は、恵比寿を爆走するお金持ちが見たら鼻で笑うようなクルマかもしれない。こんな時代遅れの昭和なクルマの何がいいのよ、と(厳密にいうと本記事で紹介するワゴニアは平成生まれだけど)。確かに見るからにオールドだし、最新の機能はない。エンジンは電子制御式ではなくキャブレターだったりする。エコカー全盛の現代のクルマと比較するととんでもなく古いクルマのように感じるだろう。
でも、ちょっと待ってほしい。このノスタルジックなワゴニア、よ~く見るとかなりオシャレじゃない?80~90年代初頭の高級なアメ車のトレードマークだった木目調パネルがボディ側面に大きく張り巡らされ、ボディは角ばった四角。空気抵抗って何ですか?と言わんばかりのゴツゴツしたボディと至るところに見受けられるクラシックなデザインは、マニアックなクルマ好きならずともグッとくる手仕事感に満ちている。
〈ジープ〉ワゴニアはフルサイズSUVの元祖的存在で、初代は1963年に誕生。アメリカらしいピックアップトラックのシャシーをベースにステーションワゴンタイプのボディが架装された大型の4輪駆動車だ。1991年まで生産されたロングセラーモデルだったものの、一旦生産を終了。1993年にグランドチェロキーの最上級モデルとして復活した時もアイコンである木目調パネルはしっかり装備していた。アメリカ人はこの良さを誰よりも分かっていたのだ。その後長い時を経て今年新型モデルとして復活したことはアメ車好きであればご存じだろう。
かつて生産されていたワゴニアは現在世界中の街や山で走り回っているSUVのおじいちゃんのような立ち位置であり、自動車史に残る名車のひとつでもある。それだけでも偉大なことだけれど、何と言っても2021年の今乗ってもオシャレなクルマだ。ヴィンテージや古着の良さを知っている人であれば魅力をご理解いただけるだろう。クラシックカーというほど年式的には古くはないのに見た目も雰囲気も立派なノスタルジックで、楽で便利な現代のクルマとは明らかに違う。クルマもファッションや家、インテリアと同じくライフスタイルを構成する重要な要素のひとつであることを考えると、ワゴニアを所有することそのものに精神的な豊かさを感じてしまう。

マイペースにのんびり走ろう
肩ひじ張らずに自然体で乗るのがかっこいい

下北沢あたりの古着店のオーナーが好んで乗っていそうな「いなたい」オーラを放つ〈ジープ〉ワゴニアを維持するのはそれなりに大変な場面もあるだろう。燃費だって良くはない。古いクルマに乗るには苦労をも楽しめるくらいの心(とお金)の余裕が必要なのだ。そういう意味ではある程度クルマを乗り継いできた中級者以上向けと言えなくもない。しかしちゃんと整備された個体もあるし、アメ車のスペシャリストであるショップも多く存在する。極端な話、自分では手に負えない範囲のメンテナンスはプロにお任せして、日頃何に注意して乗れば良いかという最低限だけ把握すれば良いのだ。あとは気ままなワゴニアとの生活をエンジョイ!大型の古いアメ車はそんなノリで付き合っていく方が楽しめる。
キャブレターV8エンジンのちょっとワイルドなサウンドと朴訥ながら贅沢さのあるブラウン系のインテリアも乗り手の気分を高めてくれること間違いなし。そのインテリアからは特徴的な三角窓から外の風景が見える。そして、この時代のアメ車らしいふわふわした乗り心地はスピードを出す気分にすらならないと言われている。そんなに急ぐなよ、とクルマから諭されるような気分になるのだろうか?なんとものんびりした話だけれど、今の時代それくらいゆったりした気持ちになれるクルマの方が快適だし周囲にも優しい。
90年代初頭のモデルであることと、隠れ人気車種であることからパーツも豊富に揃い、万が一があってもメンテナンスには困らない。40代以上が乗っても渋くてかっこいいけれど、20代の若者がオシャレをして乗っていてもとても素敵だと思う。個人的には女性がオーナーというのもかなりおすすめ。女性がこのクルマを乗りこなしていたら最高にかっこいいでしょ?
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