
クロムハーツのシリコン製アクセサリー、ありかなしか?
非貴金属のアクセサリーは「許されないクロムハーツ」なのか?シリコン製のパドロックネックレスを例に、ファッションアクセサリーとしての〈CHROME HEARTS〉の是非を考える
世界的人気を獲得するとともに展開された“ファッションとしてのクロムハーツ”
35年以上にわたってファッション、ジュエリー、レザーグッズ、インテリア、その他あらゆるジャンルにおいて常識を覆してきた、アメリカ・ロサンゼルスのラグジュアリーブランド〈CHROME HEARTS(クロムハーツ)〉。極上のレザーにシルバーパーツを組み合わせたレザーウェアや革製品、スターリングシルバーやゴールド、プラチナのジュエリー、そして生活に伴うすべてのアイテムを独自に再解釈するユニークなアプローチで、同ブランドは設立からたったの30数年で、世界中のセレブやファッションピープルたちから熱狂的な支持を集める存在へと成長した。ここ日本では90年代~00年代に巻き起こった空前のシルバーアクセサリーブームを牽引していたこともあり、シルバージュエリーのイメージが非常に強いが、ブランドが多角的に成長するにしたがって、当時では考えられなかったアイテムも多く展開されている。
本稿で紹介するPadlock Silicone Necklace(パドロック シリコン ネックレス)も、かつての〈クロムハーツ〉では考えられなかったアイテムのひとつ。同じデザインのシルバータイプは以前からラインナップしていたが、本モデルは素材を工業製品等でも使われるシリコン製に置き換えた変わり種だ。素材の特性上、カラーもブラック〈商品ページはこちら〉やピンク〈商品ページはこちら〉など、貴金属では難しい色合いを再現できる点も特徴となる。もちろんこのシリーズは素材がシリコンなので、ジュエリーではなくファッションアクセサリー。自由に使えるお金が少ない若者や〈クロムハーツ〉初心者、そしてファッション感度の高い人たちへ向けた、過去にはないアプローチのシリーズと言っていいだろう。









シリコン製のアクセサリー、ありかなしか?
シリコンシリーズは何年も前に発売され、新しいファン層を取り込むことに成功したものの、古くからのファンの中には拒絶反応を示した人も多い。確かに、クラシックなクロスやダガーといったモチーフを使ったシルバージュエリーや無骨なレザーアイテムこそ〈クロムハーツ〉と信じるオールドファンにとっては、このシリーズは簡単には受け入れにくいだろう。多くのラグジュアリーメゾンがそうであるように、ブランドの顔となるクラシックなアイテムに「らしさ」を感じる人はとても多いからだ。とはいえ、世界的なブランドへと成長した以上は、新しいアプローチでファン層を拡大することも必須項目。〈クロムハーツ〉のブランディングを決定する人物が創業者のRichard Stark(リチャード・スターク)だけではなく、妻のLaurie Lynn Stark(ローリー・リン・スターク)や長女のJesse Jo Stark(ジェシー・ジョー・スターク)も加わったことも、こういったアイテムが多く登場することになった要因としては大きい。ジェシー・ジョー・スターク曰く、ローリー・リン・スタークは新しいモノが大好きらしい。
〈クロムハーツ〉が変わってしまったという記事は以前こちらの記事でお届けしたが、誤解を恐れずに言えば「オールドファンががっかりしてしまうアイテム」も発売するようになったにもかかわらず、同ブランドは常に在庫が枯渇状態。「クロムハーツ東京」のような直営店に足を運んでも、定番のシルバージュエリーなどは展示されていないことも多い。その影響もあり、二次流通市場では中古のアイテムが定価を上回るプレミア価格で売買されており、もっとも手に入れにくいブランドのひとつになってしまった。古くからのファンにとってはもどかしさを感じることもあるだろう。