スティーブ・マックイーンが盟友に贈ったサブマリーナ

ポール・ニューマン本人が愛用していたデイトナに続き、Philips(フィリップス)が昨年満を持して出品した1本のロレックス。それは伝説の名優スティーブ・マックイーンが購入し、数々のエピソードを持つサブマリーナだった。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : HODINKEE

長年の友情と感謝の気持ちを込めて贈られたサブマリーナ

このRef.5513のロレックス・サブマリーナはスティーブ・マックイーン本人が購入し、70年代後半に彼のスタントマンであるローレン・ジェーンズに贈られた。マックイーンとジェーンズは1958年から一緒に働き始め、以降「Bullitt」や「The Getaway」、「The Thomas Crown Affair」を含む数々の映画で苦楽を共にしたという。長年の貢献と友情の証にジェーンズに贈られた時、マックイーンは心温まるメッセージをケース裏にしたためている。「LOREN, THE BEST DAMN STUNTMAN IN THE WORLD. STEVE(ローレン、世界最高のスタントマンへ。スティーブ)」。


ベゼルの所々に傷が見受けられるが、年式を考えると美品と言えるだろう。トリチウム夜光の変色もまだ進んでおらず、ヴィンテージウォッチとしてこれからまだまだ楽しめる状態だ。

前述したジェーンズへのメッセージが刻印されたケースバック。ポール・ニューマンのデイトナには妻からのメッセージが刻まれていたが、どちらも人柄が伺える。

大規模な火事から生き残る

ジェーンズのサブマリーナはマックイーン亡き後も大切に使われ続けてきたが、2016年に事件が訪れる。ロサンゼルスで起きた大規模な山火事に巻き込まれ、ジェーンズの家を含む18棟が破壊されたのだ。ところが、大切な家や家財道具と共にサブマリーナも焼失したかと思われていたところ、焼け跡の灰の中から発見された。そして、この5513はロレックス本社に送られ、見事に修理されて戻ってきたのである。
その際ケースと文字盤は交換されたとのことだが、火事の規模を考えると奇跡のような話だ。その後ジェーンズはマックイーンからの手紙と共にフィリップスにサブマリーナを委託し、2018年10月に開催されたオークションで競売に掛けられることとなる。


今も世界中にファンが存在するスティーブ・マックイーン。演技そのものへの評価も高いが、ファッションの面でも多大な影響を与えた。ホイヤーのモナコも愛用していたが、ロレックス・サブマリーナも常にお気に入りだったという。

ただポケットTシャツを着て腕時計を付けているだけなのにマックイーンがやるとこれだけカッコいいのはなぜだろう。スタイルのある男だけが出せるタフな色気が漂っている。

腕時計に宿るストーリー

フィリップスでは当然このサブマリーナが注目の的で、世界的で話題となった。このサブマリーナはマックイーン自身が着用していた愛用品ではないが、彼自身が相棒的存在のスタントマンに贈ったという背景にストーリー性があり、時計ファンや映画ファンに夢を与えたのだろう。モノは時に道具やファッションアイテム以上の存在となり、ごく限られた腕時計は後世に渡って語り継がれるマスターピースとなる。
伝説の名優が苦労を共にした友人にプライベートで贈ったこと。それ以来常に大切に愛用されてきたこと。火事という悲劇を乗り越えて復元されたこと。どれも心が温まるストーリーがあり、このサブマリーナが特別な存在であることを物語る。例え手に入れられないとしても心に響く。そして、この素晴らしい時計が次のオーナーの下で大切に使われ続けるシーンを想像し、そうであることを願わずにはいられない。もちろん、間違いなくそうなるだろう。

ITEM CREDIT
  • Rolex:Submariner Ref.5513

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