ストリートにアートを持ち込んだジュエラー – ロンワンズ
1990年代中盤~後半にかけて日本のファッションシーンに鮮烈にデビューし、熱烈な歓迎を受けたレナード・カムホート。ストリートに一段上の上質さをもって大ブームを起こしたジュエラーの歴史を振り返る。
クロムハーツの彫金師が独立し生まれたブランド
LEONARD KAMHOUT(レナード・カムホート)は1996年にアメリカ・ロサンゼルスで誕生した。同名のデザイナー、レナード・カムホートはあのクロムハーツの創立メンバーのひとりであり、80年代後半の設立時から90年代中盤にかけて中核を担うジュエラーとして、またデザイナーとしても活躍した人物である。現在でもファンから愛される名モチーフをいくつも生み出したデザインセンスと、ジュエラーとしての確かなスキルと経験は、初期クロムハーツに多大な影響を与えたことで知られる。
レナードはクロムハーツに加わる以前から黙々とジュエラーとしての技術を磨いてきた生粋の職人であり、アーティストとしても独特のセンスを持つ人物であったと言われる。今振り返ると、クロムハーツの代表であるリチャード・スタークがプロデューサー兼デザイナーとして卓越した才能を持っていたのに対し、レナードはどちらかというとアーティスト寄りの人物だったように思う。繊細で人の心の機微に敏感な性格であったところも、彼の人となりを表しているように感じる。
その繊細さゆえにブランドの活動停止を招いたり、共に代表を務めるデボン・ウィラーと確執を起こしたこともあるが、その危うさも含めてレナード・カムホートという人物の魅力のひとつだったとも言える。シルバーブランドのデザイナーはビジネスマンとしての才能が強い人が多い中、レナードはあくまでもアーティストだったのではないだろうか。
2000年にブランド名をLONE ONES(ロンワンズ)に改名。共同経営者のデボン・ウィラーをはじめ、スタッフや職人たち、そしてファンとの結束や融合を意味するロンワンズというブランド名は、レナードが亡くなってからも受け継がれている。
その繊細さゆえにブランドの活動停止を招いたり、共に代表を務めるデボン・ウィラーと確執を起こしたこともあるが、その危うさも含めてレナード・カムホートという人物の魅力のひとつだったとも言える。シルバーブランドのデザイナーはビジネスマンとしての才能が強い人が多い中、レナードはあくまでもアーティストだったのではないだろうか。
2000年にブランド名をLONE ONES(ロンワンズ)に改名。共同経営者のデボン・ウィラーをはじめ、スタッフや職人たち、そしてファンとの結束や融合を意味するロンワンズというブランド名は、レナードが亡くなってからも受け継がれている。
卓越したデザインセンスと一段上のクオリティ
1990年代の日本はまだまだシルバージュエリー創世記。男が身に着けるジュエリーはクロムハーツやガボール、ビルウォールレザー、A&Gなど、ハードでロックなブランドがメインだった。そこに突如として誕生したレナード・カムホートはデザインとクオリティの面で衝撃的だった。
クロスやスカルといったロックミュージックや死を彷彿させるモチーフは(少なくとも設立からしばらくの間は)一切使わない。その代わりに自然界に元々存在する動植物をメインにデザインする着眼点と、実際に美しい形にするセンスは、まさに新鮮そのものだったのだ。「元クロムハーツのジュエラー」という背景がブランディングとして最高に効果が高かったのも確かだが、レナードが作るアイテムは実際に素晴らしく美しかった。
クロスやスカルといったロックミュージックや死を彷彿させるモチーフは(少なくとも設立からしばらくの間は)一切使わない。その代わりに自然界に元々存在する動植物をメインにデザインする着眼点と、実際に美しい形にするセンスは、まさに新鮮そのものだったのだ。「元クロムハーツのジュエラー」という背景がブランディングとして最高に効果が高かったのも確かだが、レナードが作るアイテムは実際に素晴らしく美しかった。
加えて、あらゆる他ブランドと比べて圧倒的にジュエリーとしてのクオリティが高かったことも特筆すべき事実だ。あのクロムハーツもジュエリーとしての品質という点ではレナード・カムホートには及ばないというのがジュエリー業界の共通する評価だった。筆者は20代の頃にジュエリー/アクセサリー業界で働いていたが、品質に厳しい上司も「カムホートのクオリティはシルバーブランドの中で抜群」と言っていたし、私自身もそう思っている。
ひとりの天才がすべてのデザインを生み出し、ごく少数のジュエラーたちによってハンドメイドで作るスタイルは今も昔も変わっていない。
ひとりの天才がすべてのデザインを生み出し、ごく少数のジュエラーたちによってハンドメイドで作るスタイルは今も昔も変わっていない。
「流行」という儚い枠を超えて愛されるブランド
1990年代中盤から2000年代前半にかけて爆発的に流行したシルバージュエリーブーム。ブームである以上淘汰されたブランドも数え切れないほどある中、ロンワンズは近年派手さはないものの着実にファンに向けてモノ作りを行っている。ブランドとしての規模や単純な売上ではクロムハーツには遠く及ばないものの、ジュエリーとしての品質やデザインは一歩も劣らない。違いが分かる大人の男女に愛されるタイムレスなブランドに成長したと言えるだろう。
ロンワンズはシルバージュエリー界に高いアート性をもたらした稀代のブランドとしてこれからも記憶され続けるに違いない。
ロンワンズはシルバージュエリー界に高いアート性をもたらした稀代のブランドとしてこれからも記憶され続けるに違いない。
ITEM CREDIT
- LONE ONES:Pendant & bracelet