ライダースジャケットの王様 – ルイスレザーズの世界

さぁ、革ジャンの季節がやってくる。既に持っている人もこれから欲しい人も、ウィッシュリストの最上段に入れておくべきはいつの時代もルイスレザーズ。本日は「キングオブライダース」の世界にどっぷりと浸ろう。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : PS MAGAZIN / THE REAL MCCOYS / HIGHSNOBIETY

ハードなバイカーの世界からストリートの頂点へ

爆音を出しながらトライアンフで疾走する本物のバイカーはもちろん、ストリートのファッションピープルたちも夢中にさせるルイスレザーズ。ライダースジャケットを製作するブランドは数え切れないほど存在するが、ルイスレザーズほど多くの人々に認められ、リスペクトされるブランドは他にない。東京でもロンドンでもリアルバイカーたちはこぞってルイスレザーズのライダースで身を守り、表参道を闊歩するファッションマニアたちも同じように颯爽と着こなしている。
あまり知られていないが、ルイスレザーズは1892年にDルイス・リミテッドという名前で創立され、当時は洋服の仕立てや防護服の製造がメインの会社だった。優に100年を超える老舗企業だが、バイク乗りのために革ジャンを作り出したのは1926年から。オートバイ産業が盛り上がりを見せてきた1930年代になると、ライダースジャケットはバイカーたちの必需品となる。寒さから身を守るだけではなく、転倒時に体を守る鎧としても堅牢なレザーでできたジャケットが必要だったからだ。
イギリス空軍の依頼でパイロットジャケットを製作していた実績を持つルイスレザーズにとって、タフなライダースジャケットを作ることはさほど難しくはなかっただろう。また、元々洋服の仕立ても行ってきたのでデザイン的にもスタイリッシュで、1950年代になるとプロのレーシングライダーが着用するライダースはすべてルイスレザーズ製に。これで知名度と人気を一気に上げ、ストリートのバイカーや若者たちの間で「ルイスのライダース=ステータスシンボル」となった。2010年代の今も同じ図式が続いているが、50年代から若者たちの憧れだったことは非常に興味深い。
そして、ついに映画界や音楽界でもルイスレザーズ人気が飛び火する。1953年に公開された映画「ワイルド・ワン(乱暴者)」でスター俳優のマーロン・ブロンドがルイスレザーズのライダースジャケットをその名の通りワイルドに着こなし、不良のステータスシンボルとしても地位を確立。音楽界ではセックス・ピストルズのシド・ビシャスやポール・マッカートニー、そしてジョン・レノンが着用し人気を後押しした。
こうやって、ルイスレザーズは世界中の不良と不良に憧れる少年少女たちを魅了し続けている。
※追記:マーロン・ブロンドが「ワイルド・ワン」で着用していたライダースジャケットはルイスレザーズではなくデュラブル。お詫びして訂正いたします。


リアルマッコイズとのダブルネームで独占的に発売されたディアスキン(鹿革)のSuperMonza 445T。1978年に登場したスーパーモンツァは知る人ぞ知る人気モデルだ。

現代的なタイトフィットシルエットが実に美しい。着丈も少し長めでインナーを選ばない素晴らしいバランス。


奈良県で130年の歴史を持つ藤岡勇吉本店の最高級鹿革が使われたウルトラレアなスーパーモンツァ。ディアスキン特有のしっとりとした質感を存分に楽しめる。

手に吸い付くような柔らかな革質!牛革などと比べて強度が高いのもディアスキンの特徴。しかも水にもかなり強く、ライダースジャケットの素材として理想的なのだ。


控えめなロゴだが、遠くから見ても一目でルイスと分かる。ブラック×ゴールドのカラーコンビもさり気なくゴージャス。

サイズをチェックしても完璧なルイスレザーズ×リアルマッコイズの珠玉のコラボレーション。リアルマッコイズ直営店限定で2019年3月にリリースされた。価格は22万円(税抜き)。

ファッションピープルたちからの絶大な支持

ルイスレザーズは、バイカーとファッションピープルという相反する価値観の人たちから分け隔てなく愛される数少ないブランドのひとつだ。
もっとも有名なルイスレザーズ愛用者のひとりはコム・デ・ギャルソンの川久保玲女史。オンオフ問わずルイスレザーズのライダースを愛用し、ブランドとしてもコラボレーションするほどの惚れ込み具合だ。「LIVE FREE DIE STRONG COMME des GARCONS」のペイントが背中に大きく入るダブルネームのライダースは即完売し、今でも中古市場でプレミア価格が付いている。
日本が生んだ最高のトレンドセッター、藤原ヒロシ氏も愛用者の一人。まったく気張ることなく、デイリーウェアのひとつとして自然に着こなす姿はさすがの一言だ。本物を知り尽くす藤原氏が着ることは、ルイスレザーズがいかに特別かが分かる気がする。
他にも、アンダーカバーの高橋盾氏(アンダーカバーもコラボレーションでライダースジャケットを発売している)やヒステリックグラマーの北村信彦氏(もちろんコラボレーション済み)、ウルフズヘッドの幹田卓司氏、スタイリストの野口強氏など、日本を代表するメンズファッション業界人たちはみんなルイスレザーズを着ているんじゃないか?と思うほど。オシャレであることにこだわりが強い上記のような業界人たちがこぞって愛用する事実もまた、ルイスレザーズの揺るぎない人気を支えているのだ。


「LIVE FREE DIE STRONG COMME des GARCONS」。コム・デ・ギャルソンとルイスレザーズのロックスピリットが融合した傑作コラボレーション。

こちらはシンプルに「COMME des GARCONS FOREVER」。いずれも定価以上の価値が付くライダースジャケットである。


川久保玲女子のクールな着こなし。ルイスレザーズのライダースジャケットを完全に「自分のモノ」にする着こなしと雰囲気は唯一無二だ。

スーパーモデルのケイト・モス女史は雑誌の撮影で無数のスタッズやワッペンが付いたパンクなカスタムモデルを着用。こちらもオーラが半端じゃない。

ファッションではなくスタイル!ルイスレザーズが似合う大人はやっぱりカッコいい

あなたがバイカーであるならばライダースジャケットはファッションと言うよりはスタイルであり、重要なツールのひとつだろう。それでは、バイクに乗らない人にとってはライダースジャケットは単なるファッションアイテムなのだろうか?
LIVE IN RUGGEDはそうは考えていない。ライダースジャケットほど音楽や映画、モータースポーツなどのカルチャーを吸収したアウターは他になく、ブランドやモデルごとに膨大なストーリーが潜んでいるものだ。ライダースジャケットを着ることは、何十年もの間積み重なってきた様々な伝説や物語を背負うことであり、あなた自身がその一部になることに他ならない。ルイスレザーズの場合、ライトニングやサイクロン、あるいはスーパーモンツァであっても、それぞれに歴史やバックグラウンドが存在する。
つまり、ルイスレザーズのライダースジャケットはファッションを超えたカルチャーであり、揺るぎないスタイルなのだ。私たちはいつだってそれらに憧れを持ち「いつかはルイス」と願わずにはいられない。ただし、もし手に入れた際は気張らずにごく自然な形でそれぞれが着こなすことをおすすめする。着続けることでオーナーの体に沿ったエイジングを重ね、まるで第二の皮膚のように感じられる日が来るはずだ。ルイスレザーズが似合う男はいつの時代も最高にカッコいい!

ITEM CREDIT
  • Lewis leathers:Rider’s jacket