歳を重ねてもずっと身に着け続ける存在 – mazik_mineさんのロレックス・エクスプローラーⅠ

スイス製高級時計であってもごく自然体で身に着ける。mazik_mineさんは所有するすべての腕時計に対してそんな付き合い方をしている。20代の時に一度手に入れ、手放してから再度購入したというロレックス・エクスプローラーⅠへの思いを語っていただいた。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : mazik_mine

身に着ける人も本物だからカッコいい

誰もがSNSでモノ自慢をする時代だ。インスタグラムを見ると高級品の写真をこれ見よがしに投稿する人が多くいる。本当は大して興味がないのに「映えるから」購入し、飽きたら転売する人間。ミーハーにトレンドだけを追いかける人間。自分の生活がいかにお金持ちっぽいかを演出する人間。そういった人たちがフェイクだとは言わないが、モノを大切にする価値観を持っていれば違和感を感じる方が多くいらっしゃるはず。
インスタグラムで腕時計や洋服、アクセサリー、インテリアなどの美しい写真を投稿するmazik_mineさんは、自身の価値観に沿ったアイテムを何年も掛けて愛用するスタイルを貫いている。モノが持つ美しさやスペック、バックグラウンドに敬意を持ち、自分のモノとして使い続ける…これこそ私たちが理想とするライフスタイルではないだろうか?
mazik_mineさんにとってのファースト・ロレックスであるGMTマスターに続き、この記事では、mazik_mineさんが長年愛用し続けるロレックス・エクスプローラーⅠへの思いを語っていただいた。


3・6・9のアラビア数字がアイコニックなロレックス・エクスプローラーⅠ。オールタイムスタンダードの本命として時代を問わず愛され続けてきた名器の中の名機だ。

余計なモノをすべて削ぎ落としたようなシンプルなデザインと堅牢な作り、そしてロレックスならではの高級感がミックスされている。

1度手放してから再度手に入れるほどのお気に入り。そのワケは?

mazik_mineさんが現在愛用するエクスプローラーⅠ(Ref.14270)は、実はご自身にとって2代目。初代は20代の頃に手に入れたという。
「2度購入していますが、1回目は20代の頃。
ひとえにモテたくて、月9のドラマで木村拓哉さんが着けていたことや、ヴィンテージデニムのコレクターだった知人が1016を身につけていたことがきっかけでした。
2度目は、手放した後悔とスポーツモデル随一のシンプルなデザインを再評価して購入しました」
アラフォー世代しか分からないかもしれないが、木村拓哉さんが月9のドラマでエクスプローラーⅠを身に着けていたといえば、「ラブジェネレーション」に他ならない。「ラブジェネ」の略称で中高生からOL、サラリーマンまで釘付けにした90年代を代表する名ドラマのひとつだ。木村拓哉さんは今でもファッションの面でカリスマ的な人気があるが、当時身に着けていたファッションアイテムの若者への影響力は凄まじかった。
また、リーバイス501XXを筆頭としたヴィンテージデニムがまるでバブル期のごとくプレミア化し、スポーツロレックス人気がジワジワと盛り上がってきたのもこの時代である。私もその当時多感なティーンエイジャーだったため、mazik_mineさんが初代を購入した動機を聞いた時に思わず「懐かしい!」と笑顔になってしまった。
エクスプローラーⅠを手放した後に後悔し、後年再び手に入れたというエピソードもこの腕時計の魅力を表している。完成されたデザインの腕時計は流行など関係なくいつでも身に着けられるということ。
それでは、mazik_mineさんはエクスプローラーⅠをどんなシーンで着用しているのだろうか?
「基本的にはカジュアルなスタイルです。特にシャツや秋冬物のニットやコートを着た時は、かさ張らず収まりのよい大きさが気に入っています。スーツなどでは少し主張してしまいそうなので、スーツの時はヴィンテージのグランドセイコーを身に着けています」
エクスプローラーⅠの特徴はシンプルであること。日付表示がなく文字盤の種類も黒文字盤だけ。ケース素材もステンレススチールのみという潔さ。実はロレックスの中でトップクラスにバリエーションがないモデルなのだ。mazik_mineさんが愛用するRef.14270は1990年~2001年まで生産された。ケース径は36mmと小振りだ。このコンパクトなサイズとシンプルなデザインがシャツやニット、コートといったミニマムな洋服との相性が抜群。無駄に主張することなく収まってくれる。また、6時位置にある文字盤下部のスイス表記が他のモデルの文字盤と少し異なるモデル…「オンリースイス」と呼ばれるモデルであることもお気に入りのポイントだとか。


エルメスのヘラクレスと。小さく規則的なパーツが連なる程よい細さはエクスプローラーⅠとピッタリとハマる。mazik_mineさんは一転豪華的にブレスレット単体で身に着ける際はシェーヌダンクル。重ね付けや少しシックな雰囲気ならばヘラクレスと使い分けて着用する。

カジュアルなNATOベルトは夏場をメインに。「ロレックス着けてます感」が和らいで、よりカジュアルな雰囲気になるところも気に入っているそうだ。ステンレスブレスレットやNATOベルト、レザーストラップなど季節や気分によって付け替えるところも見習いたいポイント。

機能性、使い勝手、メンテナンス性において理想的な実用機

それでは、実際に愛用していて使い勝手はどうだろうか?
「この年代のモダンヴィンテージと呼ばれるモデルは、機能性や使い勝手、メンテナンスにおいても安心して使える実用機と呼べるのではないでしょうか?
巷のロレックス本を手に取ってみるとたくさんの知識やウンチクが並べられていますが、何だかんだで自己満足の世界なので、自分がしっくりくる腕馴染みの良い個体に巡り会えることが一番かと思います」
「また、大きさや機能、デザインは違えど、堅牢な作りと傷や使い込んだ時の道具としての美しさはデニム同様その人となりを表しているように思えます」
Ref.14270はRef.1016の後継機で、デザインや仕様を大きく変えたターニングポイントとなるモデル。ロレックスはモデルチェンジを行う度に機能性を確実に向上させることも広く知られており、エクスプローラーⅠも当然時代ごとに進化を遂げてきた。Ref.14270は現在生産されているモデルよりも小振りなサイズ感と、当時の最新技術が投入されたハイビートムーブメント、Cal.3000が搭載されたことも魅力として語られる。まさに機能性や使い勝手、メンテナンス性のおいて非常に高い次元でバランスが取れた実用機だ。
36mmという絶妙なケース径は近年流行したビッグケースと比較すると驚くほど小さいが、多くの日本人にとって腕馴染みの良いサイズ感。mazik_mineさんの「自分がしっくりくる腕馴染みの良い個体」という表現は、Ref.14270の魅力を端的に表している。


ヤレた味わいが何とも渋いレザーストラップは「今年もっとも腕にはめた組み合わせ」とのこと。飴色に変化したレザーの質感がたまらない!

清涼感溢れるシャツに合わせると腕元にラギッドさがあって男らしい。

これからもずっと一緒に歳を重ねていく腕時計

魅力を語ればキリがないほど魅力的なエクスプローラーⅠ。mazik_mineさんに無理を言ってお気に入りポイントを更に伺ってみた。
「とにかくシンプルで堅牢な作り。そして、他のスポーツモデルに比べてランニングコストが安いこと(笑)。飽きそうなのに手放してしまうとやっぱり欲しくなる、何ともいえない憎い奴」
そう、ランニングコストが低いこともこの腕時計の大きなアドバンテージだ。50~60万円から手に入れることができるエクスプローラーⅠ(年式による)は他のロレックス製腕時計と比べて非常にコストパフォーマンスが高い。
恐らく多くの方が同じ感想を持っているであろうシンプルさと堅牢さについても、やはり長年愛用していても変わらない魅力のようだ。
mazik_mineさんは最近90年代の音楽やファッションの良さに再注目している。
「ボックス型なのに生地や縫製が美しいコム・デ・ギャルソンのシャツにキムタクブーム全盛期のROLEXのエスプローラー1、そしてエルメスのシェーヌダンクルを合わせるのが最近の気分。10代~20代に大好きだった品が自分のクローゼットに増えています」
これは本当に偶然なのだけれど、私も最近90年代の音楽とファッションに改めて夢中になっていた時で驚いてしまった。ギャルソンはもちろん、エイプやアンダーカバー、グッドイナフといった裏原宿系ブランドの過去と現在のデザインを探るのが最近のお気に入り。ロレックスの時計はそんな流行り廃りなんてどこ吹く風と言わんばかりにいつもスタンダードであり続けているが、90年代はもちろん、00年代、そして10年代後半になっても常に憧れの対象であり続けたことが本当に凄いと思う。
最後に「mazik_mineさんにとってエクスプローラーⅠはどんな腕時計ですか?」と質問をしてみるとこんな答えが返ってきた。
「歳を重ねても、ずっと自分の腕元に寄り添ってくれる存在です」
この言葉に少しも誇張がなく、きっとこれからもエクスプローラーⅠを身に着け続けていくだろうと思わせる説得力がある…mazik_mineさんのモノとの付き合い方と揺るぎない価値観は、やっぱり同じ男から見て最高にカッコいい。

ITEM CREDIT
  • ROLEX:Explorer Ⅰ (Ref.14270)

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