韓国から登場したデニムブランド – The Greatful Crane

今やジーンズを始めとしたデニム製品を作らせたら日本が世界最高峰であることは周知の事実。「ジャパンデニム」は世界からリスペクトを集める文化のひとつへ育ちつつある。そんな中、隣国の韓国から魅力的なディテールを持つデニムブランドが誕生した。ジャパンデニムを使う韓国ブランド、その実力やいかに。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : THE DENIM HOUND

日本からの影響を感じさせる韓国のデニムブランド

The Grateful Crane。恐らくほとんどの日本人が聞き慣れないこのデニムブランドは、2016年にHur Jungunによって韓国で設立された。中国や台湾、タイなどではジャパンデニムが徐々に盛り上がっていることは知っていたし、自国のファッションが同じアジア圏で認められている事実は素直に喜ばしい。ただ、ご存知の通り現在日本と韓国は政治的・外交的に非常に難しい時期にある。日本製品の不買運動が行われているというニュースもある中、偶然見つけた新興デニムブランドがThe Grateful Craneだった。
韓国のメンズファッションマーケットはどちらかというとヨーロッパやアメリカのブランドの影響が強く、実際にリスペクトされているのも欧州のデザイナーというのが現状だ。首都ソウルでは東京や大阪と同じようにビッグメゾンのショールームが並ぶ。個人的な印象でも、ラギッドなファッションは韓国ではあまり人気が高くなく、どちらかというとモード系ファッションの方が支持されているように感じている。
The Grateful Craneのジーンズは韓国のブランドとは思えないほどラギッドで、それと同じくらい日本っぽい。まずそれがとても面白いと思った。リーバイスやリーの影響よりも明らかにジャパンデニムからの影響を感じるジーンズ。そもそもブランド名も「鶴の恩返し」を直接彷彿させる点でストレートすぎるほど日本への愛のようなものを感じてしまう。


13.5ozのセルビッチデニムはネップ感もあり、穿きこんだ後の経年変化が期待できそうな雰囲気。

青地に赤い刺繍というオリジナリティのあるピスネーム。鶴のデザインが施されている。


コインポケットにもセルビッチが。ステッチワークが面白い。

腰裏に入るタグ。ブランドを表す日本的な鶴のデザインが美しい。

オーソドックスを追求しつつ要所要所に入るオリジナリティ

13.5ozのセルビッチデニムはロープ染色された縦糸と白い横糸が交差するオーソドックスな仕様だ。デニムのオンス自体も標準的で奇をてらうものではない。恐らくオーセンティックな素材を使いながら、要所要所のデザインなどでオリジナリティを出すことを狙っているのではないかと思う。毛焼き処理をしていない生機デニムである点もデニム狂としては「分かってるな~」とうなずいてしまう部分。
また、ボタンやリベットといった副資材も既にオリジナルを製作している。こういったパーツは最初に型を作る必要があるため新興ブランドにとっては金銭的に負担になりがちなのだが、The Grateful Craneは多少お金を掛けても細かい部分までオリジナルを実現することに重きを置いたようだ。定番の隠しリベットや露出したセルヴィッチのコインポケットといったデニム狂が喜ぶディテールを備えている点も好感度が高い。全体的に真面目に作られていて、製作者側が本当にデニムが好きであることが伝わってくるのだ。


他ブランドではほとんど見られないボタンを採用。隠しリベットやチェーンステッチといったヴィンテージディテールがしっかり備わっている。

色褪せた薄いピンク色のセルヴィッチ。耳の幅は広くも狭くない。


腿周りは標準的なストレートで、裾に向かってテーパードしていくシルエット。いかにも合わせやすいシェイプで、スニーカーやブーツとの相性も抜群。

デニムの染めの濃さは標準的だろうか。写真ではいまいち分かりにくいが特別濃い印象は受けない。

数年後にどんなプロダクトを作っているかも気になるデニムブランド

中国や台湾、タイといったアジア圏でジャパンデニムがコアな人気を得るとは数年前までは想像が難しかったが、冒頭でも述べたようにアメリカやヨーロッパだけではなく全世界的に日本のデニムブランドがジワジワと人気を集めている。ついに韓国も同じ土俵に上がってきたか…という思いと、想像以上にジャパンデニムへのリスペクトを感じるプロダクトに驚いたのが正直な印象。The Grateful Craneのこれからのプロダクトも気になるところだ。

ITEM CREDIT
  • The Grateful Crane:Type 2 slim fit indigo selvedge jeans