Think global, act local hand made from UK

ロンドン唯一のデニムメーカー、BLACKHORSE LANE ATELIERSのジーンズ

Made in Londonのプライドと製品への愛が詰まった、ロンドン唯一のデニムメーカー〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉のコレクション。アメリカとも日本とも違う、UKメイドのジーンズの魅力を探ってみよう。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : BRITISH MADE

自国生産に強いこだわりを持つ新興ブランド

2016年にロンドンで誕生した〈BLACKHORSE LANE ATELIERS(ブラックホース・レーン・アトリエ)〉は「Think Global, Act Local」と「Made by us for life」をコンセプトに掲げ、テーラリングと伝統製法を掛け合わせた革新的な製法による世界最高峰の品質、生産者コミュニティの確立、環境への配慮を考慮したジーンズをロンドンのBlackhorse Road沿いにあるファクトリーで製造している。
意外に思うかもしれないが、ロンドンには〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉以外にデニムブランドは存在しないという。もちろんロンドンでもブルージーンズは普通に着用されているが、やはりテーラリングを得意とする紳士の国ではデニムウェアを自国で製造するほどのニーズはないのだろうか…。
とはいえ〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉は2016年の誕生以来、地元の高感度な洋服好きからも強く支持されているようだ。イギリスではそもそも自社生産工場を持つメーカー自体が減少の一途をたどっており、自前の工場で生産していること自体が時代を考えると奇跡のようなブランドと言って良いかもしれない。地価の高いロンドンにファクトリーを構え、ブランドを運営していくことは並大抵の努力では維持できないからだ。他のアパレル系企業が自国生産から撤退していく状況の中、〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉はメイドインロンドンにこだわり今日も上質なジーンズを制作している。


革パッチのアイコンは自社工場をイラスト化したもの。ミニマムなデザインが新鮮だ。

カッパー製のボタンもオリジナル。ここにもファクトリーのアイコンが刻まれており、オリジナリティが高い。

地球環境に配慮したこだわりのデニムを採用
エシカル・エコの精神は素材選びから徹底される

〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉のジーンズでもっとも使われるのがトルコのIsko(イスコ)社が生産する14ozのデニム。滑らかでありながらパリッとした硬さも兼ね備えたデニムは、アメリカ的なワイルドさよりも英国的な上品さを感じる。アメカジ寄りではなくブリティッシュ寄りというとイメージが伝わりやすいだろうか。もちろんジーンズである以上カジュアルな洋服との親和性も高いのだが、ツイードのジャケットや白シャツ、ローゲージニットのように少し大人っぽいコーディネートにもっともハマる雰囲気がある。
ちなみにイスコ社のデニムを採用したのは質の良さだけではなく、〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉が大切にしているエシカル・エコの思想を重視した結果だという。イスコ社は年間3億メートルものデニムを生産。大手ブランドからファストファッションまで世界中に顧客を持つメガ企業なのだ。しかし、イスコ社が現在もっとも力を入れているのがサステナビリティ。使用する原料を見直したり、生産工程を省エネ・省力化するなど、サプライチェーン全体のあらゆる点で不要なものを極限まで減らすことを最重要ミッションとして推し進めている。リサイクルコットンを積極的に使用し、原料や工程を文書化し、外部の監査まで入れるという力の入れようなのだ。
現代でファッションに関わる企業は地球環境を無視して活動することはできない。多くの企業がエシカルやエコ、サステナビリティを掲げ始めている中、「Think Global」を大切なコンセプトにしている〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉がイスコ社のデニムをメインに採用したのは当然の流れなのかもしれない。


写真からも滑らかで上質なデニムの質感が伝わってくる。仕立ての良さはテーラリング技術の高いUKメイドならでは。

ベルトループはウエストバンドの中に縫い込まれる。一般的なジーンズは上から縫い付ける仕様だが、ウエストバンドの中に縫い込むことで高い強度を確保。これはテーラードのトラウザーズで使われる手法。

革パッチやボタン、スレーキなどの副資材も徹底的にこだわりを
見えない部分にまで注力する姿勢が他社との差別化につながっている

同社のファクトリーをアイコン化したデザインが秀逸な革パッチは、ベルギーの老舗タンナーであるマズール社が生産したレザーを使用している。ただ、UKメイドにこだわる〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉は革自体はロンドン製のものを手配。それをわざわざベルギーに輸送しベジタブルタンニン鞣しで生産してもらっているようだ。
ボタンフライはカッパーボタン(銅製ボタン)で、ここにもブランドロゴが刻まれている。余計な表面処理をしていないため、穿きこむことでデニムと一緒に色合いを変化しながらエイジングしていく。
また、スレーキには見るからに上質なコットンツイルを贅沢に使用。厚みがあるコットンツイルはワークウェアなどでも使われる素材で、そこにスタイル、サイズ、生地といった情報が直筆でサインされるという手間の掛かる仕様になっている。ブランドコンセプトや洗い方なども洗練されたフォントでプリントされており、〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉のセンスの高さが見えない部分でも感じられる。
スレーキにここまでデザインをし、更に直筆でサインをするブランドはほとんどない。単純に手間が掛かりコストが高くなるからだ。他社がやりたがらない(またはこだわらない)部分まで手を抜かずにデザインする姿勢も〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉のユーザーが同社を信頼するポイントである。


厚みのあるコットンツイルのスレーキ。スタイルナンバーやサイズ、デニム素材はどこのものを使っているかなどが直筆でサインされている。

〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉代表のBilgehan Han Ates(ビルゲハン・ハン・エイテス)氏。紳士服のテーラリングを25年間経験してきた技術を活かしてブランドを立ち上げた。


シュッとしたシルエットが美しいスリムテーパードモデル。ジャケットスタイルとの相性の良さは言うまでもない。

〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉はレディースも製作している。こちらはハイライズのクラシックストレートシルエット。

これからの未来を見据えたメイドインロンドンのブルージーンズ

アメリカで生まれたジーンズは時代と共に大きく変化してきた。伝統的なブルージーンズはアメリカ本国ではもはやほとんど生産されていないのが現実で、逆に日本は戦後ジーンズ作りに邁進し技を極めてきた。一方イギリスはジーンズ生産の土壌はほぼない国。紳士服の制作技術は今でも非常に高いレベルにあるが、これまでイギリスではほとんど誰もデニムウェアを作ろうと思う人がいなかった。
自国生産が衰退しているイギリスで生まれた〈BLACKHORSE LANE ATELIERS〉は、まるで時代に逆行するようにUKメイドにこだわりを注いでいる。ただし、サステナビリティの観点を非常に重視している点は新興企業ならでは。地球環境に配慮しながら上質なジーンズを自国生産するスタイルは、売上や経営だけを考えれば決して楽ではないはずだ。しかし、表面的な美しさ以外にもぶれない思想を持って作る洋服作りは、長い目で見て多くの人々から支持される未来も見える。
いつものジャパンデニムとはひと味違うメイドインロンドンのジーンズ、ワードローブにひとつ足してみるのもいいかもしれない。

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