Nike が A BATHING APE® を商標権侵害で提訴した件について思うこと
どこまでがオリジナルで、どこからがコピーなのか?
〈Nike〉が〈A BATHING APE®〉を「ほぼ完全にコピーしている」と主張
多くのLIVE IN RUGGEDの読者の方々もすでにご存じかと思うが、数日前に〈Nike(ナイキ)〉が〈A BATHING APE®(ア・ベイシング・エイプ®)〉を商標権侵害で提訴したというニュースが駆け巡った。スニーカー業界のトップに君臨する大企業が日本のストリートファッションを象徴する名ブランドを正式に提訴するというショッキングなニュースは、ファッション好きの間ではそれなりに高い注目度を集めているものの、一般的にはまだそれほど知られていないように思う。
アメリカの〈ナイキ〉が公表した提訴の理由は非常にシンプルで分かりやすい。「彼ら(ア・ベイシング・エイプ®)のシューズビジネスは〈ナイキ〉のもっとも象徴的な靴のデザインをコピーすることで成り立っている」とし、特に一部のモデルに関してはAir Force 1(エアフォース1)やAir Jordan 1(エアジョーダン1)、Dunk(ダンク)のデザインを「ほぼ完全にコピーしている」と主張。声明を確認する限り、これ以上ないほどストレートに「パクられた」と訴えている。
さらに〈ナイキ〉曰く、〈ア・ベイシング・エイプ®〉は「2000年代半ば頃より米国での展開をスタートし、15年以上にわたって今回問題となっているアイコニックなスニーカー類を販売しており、その販売量と認知度は商標権侵害の量と範囲を急激に拡大した2021年まで散発的だった」と言い、「〈BAPE®〉のコピーは今も昔も私たちにとって受け入れがたいものであり、彼らの侵害行為は最近〈ナイキ〉の権利に対する重大な危険となるまでに成長したため、我々は今すぐ行動を起こさなければなりません」ともコメント。10数年前から存在を把握しており、ここ数年は我慢の限界を超えたので正式に提訴した…というのが背景のようだ。
〈ナイキ〉の代表作であるエアフォース1やエアジョーダン1、ダンクと〈ア・ベイシング・エイプ®〉のスニーカーはそれほど似ているのだろうか?本稿では具体的に両ブランドのスニーカーの画像を参照しながら類似点を簡単に確認するとともに、超巨大企業 vs ストリートブランドの裁判問題というニュースに関して思うことなどをまとめたい。
〈ナイキ〉の代表作であるエアフォース1やエアジョーダン1、ダンクと〈ア・ベイシング・エイプ®〉のスニーカーはそれほど似ているのだろうか?本稿では具体的に両ブランドのスニーカーの画像を参照しながら類似点を簡単に確認するとともに、超巨大企業 vs ストリートブランドの裁判問題というニュースに関して思うことなどをまとめたい。
まずは「パクられ対象」である〈ナイキ〉の主要モデルを見てみる
まずは〈ナイキ〉のエアフォース1、エアジョーダン1、そしてダンクのデザインを改めてチェックしてみよう。
比較検討がしやすいようにエアフォース1はローカットで真っ白なトリプルホワイトをセレクトした。エアジョーダン1は昨年発売され大きな話題を呼んだ「Chicago(シカゴ)」だ。ダンクは定期的に発売される不動の人気カラーであるパンダカラーのハイカットをピックアップする。まさに3モデルすべてが〈ナイキ〉屈指のベストセラーアイテムであり、現在のスニーカーブームを常に牽引してきた偉大な逸品と言えるだろう。
比較検討がしやすいようにエアフォース1はローカットで真っ白なトリプルホワイトをセレクトした。エアジョーダン1は昨年発売され大きな話題を呼んだ「Chicago(シカゴ)」だ。ダンクは定期的に発売される不動の人気カラーであるパンダカラーのハイカットをピックアップする。まさに3モデルすべてが〈ナイキ〉屈指のベストセラーアイテムであり、現在のスニーカーブームを常に牽引してきた偉大な逸品と言えるだろう。
確かにそっくり
続いて〈ア・ベイシング・エイプ®〉を象徴するヒット作であるBAPE STA(ベイプスタ)を改めてじっくり見てみると…まぁ確かに似ている。というか先に紹介した〈ナイキ〉のスニーカーが元ネタであることは誰も否定できないだろう。一度でもBAPE STAを見たことがある人であれば恐らく感じたことがあるであろう素朴な疑問が頭に浮かぶ…「これは大丈夫なのか?」。
細部のデザインは〈ア・ベイシング・エイプ®〉オリジナルのアレンジが施されているとはいえ、靴としての原型はあまりに似ている。そっくりだ。側面がスウッシュの代わりに流れ星風のデザインになっている部分がもっとも〈ナイキ〉とは異なる点ではあるものの、「これは〈ナイキ〉のエアフォース1やエアジョーダン1を参考にしましたよね?」と質問して「いいえ」と言われたら「嘘つけ!」と突っ込まずにはいられない。
細部のデザインは〈ア・ベイシング・エイプ®〉オリジナルのアレンジが施されているとはいえ、靴としての原型はあまりに似ている。そっくりだ。側面がスウッシュの代わりに流れ星風のデザインになっている部分がもっとも〈ナイキ〉とは異なる点ではあるものの、「これは〈ナイキ〉のエアフォース1やエアジョーダン1を参考にしましたよね?」と質問して「いいえ」と言われたら「嘘つけ!」と突っ込まずにはいられない。
どこまでがOKでどこからがNGなのかは本当に難しい
ファッション業界においてパクリ問題は常につきまとってきた。有名どころでは〈Levi’s®(リーバイス®)〉の看板商品である501®を日本のデニムブランドがこぞって真似をし、業を煮やした本家が裁判沙汰を起こしたというもの。当然〈リーバイス®〉側が勝訴し、提訴された側のブランドはその後細部のデザインディテール等の変更を余儀なくされている。直近では〈adidas(アディダス)〉が〈Thom Browne(トム・ブラウン)〉を訴えた件が記憶に新しい(こちらは訴えられた〈トム・ブラウン〉側が勝訴した)。
やっかいなのは、これは靴であるということだ。洋服は平面なので敗訴した場合でもデザイン変更が比較的容易だが、3Dのスニーカーはそうはいかない。もし裁判で〈ナイキ〉側の主張が全面的に認められることになれば、〈ア・ベイシング・エイプ®〉がそれ以降BAPE STAを販売することは難しいだろう。この記事をご覧いただいている方も同じことを思ったことがあるかもしれないが、BAPE STAを初めて見た時は「結構モロだけどこれは問題ないのか?」と感じた。先述のように10数年以上販売され続けてきたのでグレーではあるものの問題ないのかと思いきや、案の定〈ナイキ〉は長年苦々しく思っていたということになる。
上記の「併せてチェックしたい」リンクにもあるように、筆者は10代半ばの頃から〈ア・ベイシング・エイプ®〉が大好きだ。言うまでもなく〈ナイキ〉も超が付くほど大好きである。BAPE STAは購入したことがないけれど、両ブランドのファンとして今回の問題はあまり他人事とも思えない。また、これがダメならば他ブランドが販売しているアレやコレもダメなのでは?と思ってしまうモノがいくつもあったり…。
どこまでがオリジナルでどこからがコピーなのかという問題は本当に難しい。何もかもオリジナルでなければならないとするならば、魅力的な商品、多くの人が「欲しい」と思い、実際に売れる商品を作ることなど不可能だろう。良いモノを作ろうとするとどうしても似通ってきてしまう側面もあるからだ。
どこまでがオリジナルでどこからがコピーなのかという問題は本当に難しい。何もかもオリジナルでなければならないとするならば、魅力的な商品、多くの人が「欲しい」と思い、実際に売れる商品を作ることなど不可能だろう。良いモノを作ろうとするとどうしても似通ってきてしまう側面もあるからだ。
とはいえ、〈ア・ベイシング・エイプ®〉のBAPE STAは「酷似している」と捉えられてもおかしくないほど似ているのも確か。今後この裁判の行方がどうなるか、両ブランドのファンとして見守っていきたい。