@kaisafr HERMÈS Life with horses

【インタビュー】@kaisa_fr さんに訊く、至高のヴィンテージ HERMÈS と馬のいる生活

世界トップクラスの〈HERMÈS〉ヴィンテージジュエリーコレクターである @kaisa_fr さんが教えてくれる、馬と暮らす豊かな生活と〈エルメス〉と馬具の関係性。ここ1年で購入したお気に入りアイテムや趣味についても尋ねた。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : @kaisa_fr

魅惑的な「エルメスワールド」へようこそ

たくさんの人がひしめき合う日本の大都会に住んでいると、時々無性に人間以外の生き物と触れ合いたくなることは誰しもあるのではないだろうか。犬や猫がいる生活も素晴らしいが、古来から人のそばに寄り添って生きてきた馬と暮らす生活を想像してみよう。哺乳類屈指の美しさを持つ優雅な姿と優しい目を持つ馬が自分の生活圏の中にいる…日本に住んでいるとリアルに想像することすら難しく感じてしまう。しかし、遠いフランスの地でそんな豊かな生活を満喫されている方がいる。〈HERMÈS(エルメス)〉のヴィンテージジュエリーコレクターとして同ブランドのコアなファンを魅了する @kaisa_fr さんがその人だ。
LIVE IN RUGGEDでは2022年の春に @kaisa_fr さんへの独占インタビューに成功。その記念すべき初インタビューでは、文字通り数え切れないほど所有されている貴重なコレクションと共に、〈エルメス〉への想いやエピソード、魅力を語っていただいた。詳しくは以下の「併せてチェックしたい」をじっくりと読んでみよう。
約1年を経て、本稿では〈エルメス〉というブランドの根幹をなす馬具との関係性に注目。ご存じの方も多いかと思うが、ヨーロッパ屈指のメゾンとして君臨する〈エルメス〉は元々馬具を扱う事業として始まった。〈エルメス〉は現在でもアパレルコレクションやジュエリー、レザーアイテムと併せて馬具を製造しており、高い実用性と品質で馬と暮らす人々を魅了している。
第2回目となる @kaisa_fr さんへのインタビューでは、フランスでの馬と暮らす生活や〈エルメス〉と馬具の深い関係性、最近購入されたアイテム、そして趣味のことなど様々な内容を語っていただいた。
慌ただしい生活にお疲れの方、魅惑的な「エルメスワールド」へようこそ。お酒かコーヒーを飲みながら、リラックスして楽しんでいただきたい。

フランスでは馬と暮らす生活が珍しくない

――― 〈エルメス〉は1837年より始めた馬具作りのノウハウなどが現在の製品にも活かされています。 @kaisa_fr さんにとって馬術は大切なライフスタイルのひとつと以前お会いした際に伺いましたが、〈エルメス〉の馬具との出会いを教えてください。
私と〈エルメス〉の馬具との出会いよりも、夫の家族の〈エルメス〉と馬具との出会いの方が面白いかもしれません。夫はフランス人なのですが、フランスの社会の中で代々馬と生活している階級のため、それこそ〈エルメス〉が馬具を作り始めた時からの付き合いがあります。さすがに最初に手にしたものが何かは不明なのですが、当時の鞍はもちろん、〈エルメス〉が馬具を入れるために作り始めた頃の Haut A Courroies(オータクロア ※)も所有していたようです。
※オータクロアは、〈エルメス〉を象徴する名作である Birkin(バーキン)の原型となったバッグ。1892年に乗馬の際に使用する鞍を収納するアイテムとして誕生し、移動手段が馬車から自動車へと変化して以来は旅行用バッグとしても人気を博している。名実ともに〈エルメス〉が製作するバッグの中で屈指の希少価値と人気を持つ。
――― そんなに長い関係性があるのですね。日本では日常生活に馬がいるという環境はなかなか体験できないことです。馬が身近にいる生活はどんな感じなのでしょうか?
日本の地方に行くと牛や馬がいる生活を目にするように、フランスも同じで、いわゆる田舎に行くと日常的に馬などの動物たちと生活している方が多いんですよ。でも、日本よりもフランスの方が馬と暮らす方が多いかもしれないですね。フランスでは、馬と生活するということ自体がそこまで特別に思われないかもしれません。
馬は確かに犬や猫たちとは違い、とても手が掛かる生き物ではありますが、距離感としては同じようなものだと思います。特に私たちは競技に出ることをメインとした厩舎を運営していることもあり、よりプロフェッショナルな関係とはなっていますが、仔馬から育てている馬は家族の一員のようです。

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〈エルメス〉に馬具をオーダー中

――― 馬具から生まれた〈エルメス〉のコレクションで、特にお気に入りのモノや印象深いモノがあれば教えてください。
Etrier Series(エトリエシリーズ ※)です。馬具の中で大変シンプルながら必須用具であるエトリエを、ここまで斬新な形でブレスレットにしてしまうとは…さすが馬具を知り尽くした〈エルメス〉だと思います。
※エトリエシリーズとは、騎乗時に馬の脇腹に垂らして足を乗せる馬具である鐙(あぶみ)をモチーフにしたラインのこと。ブレスレットやキーホルダーなどが製作され、いずれもプレミアが付いている。
――― @kaisafr さんは犬や猫とも一緒に生活されていますよね。彼らは馬とどんな関係性なのでしょう?仲良しですか?それとも一歩引いた付き合い方をしているのでしょうか?
どちらもまったく怖がっておらず、厩舎の中で馬が闊歩する音を聞きながらお昼寝しています。特に犬に関しては牧羊犬のように誘導しようとすることも…完全に無視されていますが(笑)。
――― 想像するだけで可愛らしいですね(笑)ちなみに、これから手に入れたいと思っている〈エルメス〉はありますか?
ちょうど今、〈エルメス〉の馬具の象徴的な色であるルージュHで頭絡(とうらく)※をオーダー中なので、それが届くのが楽しみです。
※頭絡とは馬の顔周りに装着する馬具のこと。口に装着する銜(はみ・くつわ)を適切な位置で固定させ、馬を繋いでおく時や誘導時に必要な引き手を装着するという役割がある。

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ここ1年間で購入したお気に入りについて

――― 初めてインタビューをさせていただいた時から1年近い時間が経過しました。あれ以降手に入れた〈エルメス〉のアイテムはありますか?
この1年間で手に入れたアイテムの中では、イエローゴールドのアクロバットは特に心に残っています。実は長年二次市場でも探し続けていたんです。一度ローズゴールドのアクロバットと出会ったのですが、やはり夫婦で着けることを考えるとイエローゴールドが欲しくて見送ってしまい…。それが約5年前で、当時確か160万円ほどで紹介されました。今ではシルバーモデルでもこのお値段では購入できなくなっているはずです。
昨年購入したアクロバット・イエローゴールドに関しては、もう高級車並のお値段になっていて。やはり〈エルメス〉のジュエリーは一期一会を大切にしなくてはと思いました。前回も少しお話しした通り、今後もイエローゴールドのアイテムは集めていきたいですね。
――― イエローゴールドのアクロバット…。まさに夢のアイテムですね!そういえば、「BerBerJin(ベルベルジン)〉の藤原裕さんとの出会いなどで、ご自身のファッションの嗜好がやや変化したとおっしゃっていました。最近お気に入りの洋服や靴、ファッションアイテムはどんなものですか?
私は洋服に関してはヴィンテージを好んで購入することは殆どなかったんです。「ヴィンテージクローズ=おしゃれな人しか着こなせないレベルの高い品物」という先入観があって。ジュエリーと違い、洋服の流行の移り変わりはとても早く、ヴィンテージを現代のファッションに合わせて着こなせるセンスが自分にはないと思っていたんですよね。
そんな時、藤原さんをはじめヴィンテージクローズに精通した方々とお会いしていく中で、プロのアドバイスをもとに、あくまでも自分が好きなものを取り入れるだけなら、初心者の私でもしっくりくる事が分かりました。今ではベルベルジンさんで購入させていただいた〈Levi’s®(リーバイス®)〉506XX を〈エルメス〉のニットの上に羽織ったりしてます。
それに合わせて、最近スニーカーもよく履くようになったのですが、イタリアの〈D.A.T.E.(デイト)〉がお気に入りです。スニーカーなのにフェミニンなデザインで、しかもものすごく履き心地がいい!
それから最近タイに1ヵ月間滞在していたのですが、その時チェンマイで出会った藍染の洋服に心奪われました。聞いてみると、滞在地のチェンマイから行く予定だったスコータイの道中にある「プレー」という地域が盛んである事が分かり。そこで、昔ラオスから伝わった手法であるこの工芸品の産地に行き、大量に購入してきました。春先になれば、この藍染のドレスやTシャツにデニムジャケット、ヴィンテージジュエリーを合わせたいです。

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生粋の〈エルメス〉好きが愛用する時計

――― お住まいのフランスは〈エルメス〉の本国ということもあり、日本では手に入りにくいアイテムもあるのではと思ってしまいます。やっぱり人気の高いモノやレアなモノはフランスの方が見つかりやすいのでしょうか?
これはよくいただく質問です!実は私は日本の〈エルメス〉についてはまったく無知でして…。なので日本との比較は難しいのですが、たまに行くスイスやドイツなどの店舗よりもフランスの店舗の方が品揃えはいいと感じています。そうなるとやはり本国の方がどこよりも品揃えはいいのかなと思います。
――― なるほど。どのブランドでもそういう傾向はありますが、やはり〈エルメス〉も本国での展開が随一なのかもしれませんね。そういえば前回のインタビューでは一生物の腕時計をお探しとのことでした。何か見つかりましたか?
一生物になるかどうかは分かりませんが、〈エルメス〉のケープコッドシェーヌダンクルを愛用しています。そのほか、スペシャルな機会には〈エルメス〉が1930年代に〈VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)〉とコラボしたイエローゴールドの時計を着けたりもします。

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ライフスタイルもファッションも、自分らしく、自由に

――― そういえば、〈エルメス〉以外のご趣味は何かありますか?
サーフィンです。そのためにパリやボルドーから今のサーフスポットに本拠地を移したくらい好きなんです。子供たちもサーフィンをするため、旅行は常に海のあるところを入れ、真冬でもサーフィンしています。ちなみにインスタグラムのフォロワーさんにもヴィンテージジュエリーがお好きなサーファーさんが多々いらっしゃり、よく交流させてもらっているんですよ。ベルベルジンさんでポップアップをさせていただいた時に、サーフィンをされた後に開店前に並んでくださった方々もいらっしゃって、とても感動しました。サーフィン×ヴィンテージジュエリーの良さも広めたいです(笑)。
――― 確かにサーフィンをされる方はジュエリーにもこだわりが強い方が多い印象です!
少し質問の方向が違うのですが、ブランド物を身に着けることに関して、日本では今でもネガティブな印象を持つ方がいらっしゃいます。実際、若い方が高級ブランドをこれほど購入する国は日本くらいと言われることも多いですよね。 @kaisa_fr さんはブランドや高級品を身に着けること、集めることに関してどう思っていますか?
あくまでも自分の好きなものを好きなだけ、集めたり好きな時に身につけたりすることは自由だと思います。日本のみならず、フランスでもブランド品を身につけることに批判的な方もいますが、あくまでもノイズとして捉え、ご自分のお好きなようにされることが一番だと思います。
実は私は東京をはじめ、シンガポールやパリなどのいわゆる大都市に住んでいたのですが、自分らしくいられる地を求めて今の地域にたどり着きました。ライフスタイルもファッションも、自分らしく、自由にいられることはとても尊いものだと思っています。

私たちがこれからも大切にしたいのは、精神的な情感と豊かさ

日本で生まれ、様々な国で生活をしたのちに自分らしくいられる地へとたどり着いたという @kaisa_fr さんの人生は、きっとインタビューで感じられる以上のドラマに満ちていたに違いない。言うまでもなく〈エルメス〉はトップオブトップのブランドであり、ジュエリーやバッグ、時計、その他ファッションアイテム、さらにはホームグッズやインテリア用品まで色とりどりの〈エルメス〉を経験してきた @kaisa_fr さんであれば、ともすれば〈エルメス〉以外のブランドには興味を持てないことになってもまったくおかしくはない。しかし、人との出会いでヴィンテージウェアの魅力にも目覚め、ナチュラルにご自身のライフスタイルに取り込む柔軟さに @kaisa_fr さんの物事への姿勢と目線の高さが表れていると感じたのは、筆者だけではないはず。
馬や犬、猫と暮らしながら、馬術とサーフィンというアクティビティも日常的に体験する精神的に豊かなライフスタイル。そしてそのすべての場面には〈エルメス〉のジュエリーがそばにある。ここ数年で爆発的に人気が上昇した〈エルメス〉のジュエリーが話題になる際は、驚くほど高騰した価格面ばかりが取り上げられることが多い。「希少価値の高いレア物」になるとどうしても物質的価値の一面ばかり注目されがちだが、ジュエリーは数多いファッションアイテムの中でも特に精神的な情感と豊かさを重視すべきものだ。「ライフスタイルもファッションも、自分らしく、自由にいられることはとても尊い」と語る @kaisa_fr さんの言葉には、私たちがこれからもずっと目指していくべき価値観が詰まっている。
貴重な〈エルメス〉のヴィンテージジュエリーなどが紹介される @kaisa_fr さんのインスタグラムは、同ブランドのファンならずとも必見。
LIVE IN RUGGEDがお届けする @kaisa_fr さんへのインタビュー記事はこちら
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