Maison Margiela の Glam Slam Baby には、少しの夢とリップスティックしか入らない
〈Maison Margiela〉が作る、現代に適した超ミニバッグを考察
この超ミニマムなバッグにあなたは何を入れる?
キャッシュレス化が加速度的に進む現代において、バッグというアイテムの存在意義が徐々に揺らぎつつある。少し前の時代まで、バッグは外出時に決して欠かせない存在だった。男性と女性では持ち物が異なるとはいえ、財布や携帯電話、パスケース、名刺入れ、ポーチ(印鑑や薬など人によって内容は違う)、文庫本(読書家であれば)、筆記具、タバコ(喫煙者であれば)などはかつての必需品だったと言えるだろう。それが今や、かさばるそれらすべてがスマートフォンにギュッと凝縮されている。好むと好まざるは別として、荷物が激減したという観点で、まさに今の時代はパラダイムシフトなのだ。
その時代の変化を象徴するバッグが〈Maison Margiela(メゾン マルジェラ)〉の「Glam Slam Baby(グラム スラム ベビー)」だろう。2018年春夏のショーでデビューした「グラム スラム」シリーズは、フランス・マルセイユで生まれた手縫いのキルト「マテラッセ」スタイルを模したキルティングデザインが特徴。メゾンが世界中で服装や旅行に関する習慣を研究した後に得た「アンコンシャス・グラマー(無意識下の魅力)」という概念を思い起こさせる詩的なコンセプトと美しいデザインで、登場以来男女を問わず人気を集めている。
「グラム スラム」シリーズ最小のサイズである「グラム スラム ベビー」は、大げさではなく冗談のように小さい。このバッグに何を入れられるのか真面目に想像してみたが、スマートフォンを収納しただけでパンパンになるだろう。むしろ、それすら入らない可能性が高い。とすると、このバッグを手にして外出する際は何かを持ち運ぶこと自体を諦めなければならないのだろうか?せめてパスケースくらいは入れておきたいし、女性であればリップスティックのひとつは持っておきたいはず。恐らくその2つくらいはギリギリ入れることができそうではあるけれど、いずれにしても普通ではありえないほど思い切ったチョイスが必要になりそうだ。
ただ純粋にファッションを楽しむためのバッグ
手でそっと触れると分かる極上のレザーがもたらす陶酔感と、高級ソファを思わせるふっくらとした丸みが「グラム スラム」シリーズの特徴。日常使いしやすいミディアムサイズやラージサイズもラインナップされている中、この超マイクロサイズの「ベビー」を購入する理由とは、ファッションを楽しむというシンプルな動機以外にはあり得ない。本来実用性がもっとも重視されるバッグを可能な限り小さくした本アイテムに、実用性などほぼないことは見ての通り。であるならば、ファッションアイテムとして優秀であることが求められる。「グラム スラム ベビー」には、一目で〈メゾン マルジェラ〉と分かる洗練されたデザイン性と、思わず声に出して「可愛い!」と叫びたくなるキュートさがある。ものを持ち運べないバッグという大きな矛盾をはらみながら、このバッグでしか楽しめない世界が間違いなくあるのだ。
フランスのラグジュアリーをキュートにアップデートした「グラム スラム ベビー」は「メゾン マルジェラ 公式サイト」で174,900円にて販売中。価格はちっとも可愛らしくないところも〈メゾン マルジェラ〉らしい。
ITEM CREDIT
- Maison Margiela:Glam Slam Baby