UNIQLO : C は本当に買う価値があるのか?
初となるメンズコレクションが発売される〈UNIQLO : C〉の2024年秋冬シーズンに注目しながら、「本当に買う価値があるのか」を考察する
素晴らしいキャンペーンビジュアル
でも気になるのは実物のクオリティ
〈UNIQLO : C(ユニクロ C)〉の2024年秋冬コレクションが話題だ。これまでウィメンズコレクションのみ展開されていた〈UNIQLO : C〉は、今シーズン初となるメンズコレクションを発表。英国の著名なデザイナーであるClare Waight Keller(クレア・ワイト・ケラー)がディレクションを務める同ブランドは、ハイブランドにも通じるミニマルなデザインと美しいキャンペーンビジュアルで、従来の〈ユニクロ〉とは一線を画すコレクションを展開。それでいて価格帯はファストファッションらしくリーズナブルであることから、「デザイン性の高い洋服を安価で手に入れたい」というニーズに応えている。
LOOKを見ると、確かに〈ユニクロ〉から派生したラインとは思えないほどハイセンスだ。事前情報なしにこのビジュアルを見せられて「ヨーロッパの新進メゾンのデビューコレクションです」と言われれば、少なくとも筆者は疑いもなく信じてしまうだろう。ただ安いだけだった時代を経て、〈ユニクロ〉のデザインチームはそれほどレベルアップしたと言っていいかもしれない。
ただし、実物を見て手で触れるまではLOOKから受ける印象が変わらないかは分からない。キャンペーンビジュアルや商品画像はモデルやコーディネート、ライティング、その他ロケーションの雰囲気などでいかようにも演出できる世界であり、実物が上質かどうかとは別問題だからだ。〈UNIQLO : C〉に限らず、〈ユニクロ〉の商品はビジュアル画像は素敵だけど店頭で見るとがっかりするパターンが圧倒的に多い。恐らく同じように感じたことのある方は少なくないだろう。価格を見れば当たり前のことで、例えば2,000円で売られているシャツが20,000円で売られているシャツと同程度のデザインとクオリティを持っているわけがない。そんな“魔法”はアパレル業界にはほとんど存在しない。
コレクションはバービカン・センターからインスピレーションを受けて制作
〈UNIQLO : C〉2024年秋冬コレクションは、ブルータリズム様式で建てられたロンドンの複合舞台芸術施設であるバービカン・センターからインスピレーションを受けてデザインされた。バービカン・センターはコンクリート特有のシャープなラインとグリッド状に混ざり合いながら生み出す奥行きのある造形、ニュートラルなパレットを用いた空間の色使いが特徴で、世界中からもっともエキサイティングなアートを紹介することに情熱を注いでいる。また、学生が集い、劇場やアートセンター、住宅街もあるバービカン・センターには数十年間住み続けている人もいれば、最近引っ越してきた人もおり、その幅広さに“すべての人のための服”という〈ユニクロ〉のフィロソフィーに近しいものを感じたようだ。デザイナーのクレア・ワイト・ケラーにとってこの場所はかねてよりお気に入りで、本コレクションではバービカン・センターに集う人々と建造物の関係性や感覚を表現。建造物とそこで過ごす人々の生活模様からインスパイアされコレクションを創造するという手法もファストファッションでは通常あり得ないことで、思想的には感度の高いファッションブランドに近しい。
「安いからこれでいい」のではなく、本当に自分に必要なものを見つめ直すことが重要
レイヤリングを意識し、各アイテムを軽く作った〈UNIQLO : C〉2024年秋冬コレクション。シャツとカシミヤニットを重ねたり、スウェットパーカーの下にシャツを重ねるようなスタイリングがおすすめだとクレア・ワイト・ケラーは語る。軽やかで心地の良いレイヤリングによって多層的なシルエットを構築し、秋冬の着こなしに豊かさを与えるよう調整されている。
また、初となるメンズコレクションのおすすめはチェック柄のコートやスウェットのセットアップ、デニムなど。デニムは外側は深いインディゴカラー、内側はタバコカラーにすることで、表面のインディゴから美しい褐色が透けて見えるよう工夫されている。
また、初となるメンズコレクションのおすすめはチェック柄のコートやスウェットのセットアップ、デニムなど。デニムは外側は深いインディゴカラー、内側はタバコカラーにすることで、表面のインディゴから美しい褐色が透けて見えるよう工夫されている。
というように、〈UNIQLO : C〉2024年秋冬コレクションはLOOKやコンセプト、商品展開を見るとインラインの〈ユニクロ〉では味わえない魅力が備わっているように見える。デザイン性が高く、秋冬らしいスタイリングができる衣服を比較的安価に購入できる点も大きな魅力と言っていいだろう。しかし、冒頭でも触れたように実際の商品はビジュアル通りの魅力があるのか、何シーズンも着用できるクオリティなのかは疑問点を感じてしまう。また、ファッション業界におけるサステナビリティがこれほど叫ばれる中、大量に生産される〈ユニクロ〉の商品をあえて今手に入れる価値があるのかという点も、変わらず気になってしまう人が多いのではないだろうか。
先日〈ユニクロ〉の代表を務める柳井正氏が「このままでは日本人は滅びる」と語ったYahoo!のインタビューに対して、「日本のアパレル業界を破壊したのは柳井氏」「日本製品の付加価値を3~4分の1にしたのはユニクロ」という痛烈な世論が巻き起こったことが記憶に新しい。かつてより品質が向上したとはいえ、〈ユニクロ〉の製品を何年も愛用し、ダメージが蓄積したら愛情をもって修理するという人を見たことがないことも確かだ。何よりも世界的に環境配慮や人道的な問題が重視される中、ファストファッションを購入して短いスパンでごみにするというサイクルが受け入れられなくなっていることは疑いようもない。
ファッション性を高め、付加価値を感じるようなコレクションを展開する〈UNIQLO : C〉のアイテムは本当に買う価値があるのだろうか?その答えは人それぞれだろうけれど、安いから買うという安易な選択をする前に、今一度自分にとって本当に価値があるものはどんなものなのかを見つめ直すことも必要だ。
ファッション性を高め、付加価値を感じるようなコレクションを展開する〈UNIQLO : C〉のアイテムは本当に買う価値があるのだろうか?その答えは人それぞれだろうけれど、安いから買うという安易な選択をする前に、今一度自分にとって本当に価値があるものはどんなものなのかを見つめ直すことも必要だ。
ITEM CREDIT
- UNIQLO : C:2024 Autumn Winter Collection