2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst

【プレイバック】MAZDA RX-7 には1,000万円以上の価値があるのか?

〈MAZDA〉が生んだ最高傑作、RX-7が中古車市場で1,000万円を超える異常事態に


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : W Supercars

日本の自動車史に残る名モデルたちが驚きのプレミア化

2000年代初頭に生産されていた日本製のスポーツカーがとてつもない価格に爆上げしている。そのきっかけのひとつが映画『FAST & FURIOUS(ワイルドスピード)』であることは車好きにとっては周知の事実だろう。車高を低くし、派手なグラフィックでカスタムされたJスポーツカーがアメリカのストリートで爆走する様子は、今観ても痛快だ。アメリカ人はアメ車が何よりも大好きなはずなのに、こんなに日本のスポーツカーも愛されているのか!と、日本人としてはちょっと意外な気持ちになったことを覚えている。古典的なアメリカンマッスルを愛するワイルドなドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)と、シリーズを通してJスポーツカーへの愛情を隠さないブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)の対比も見事だった。とはいえ、日本製スポーツカーが世界的に評価されるようになったのは、大成功を収めたアクション映画だけのおかげではなく、本質的に良いものだったからだ。
日本の自動車はかつてヨーロッパやアメリカのコピー的な側面が強かったが、やがて独自の洗練と技術的発展を手に入れるに従い、世界的に見ても個性豊かなモデルが多く生み出されるようになった。1990年代~2000年代初頭におけるスポーツカー開発はひとつの頂点だったと言っていいだろう。〈NISSAN(日産)〉はスカイライン GT-R(R32)で完璧なブレイクスルーを果たし、続くR33 GT-RとR34 GT-Rでデザインとテクノロジーを刃のように尖らせ、R35 GT-Rでついにワールドクラスの成功を収める。
TOYOTA(トヨタ)〉は伝説的な2000GTで映画『007』シリーズのボンドカーに抜擢されるほどの名車を生み出し、長い期間を経てSupra(スープラ)というじゃじゃ馬を生み出した。そして〈MAZDA(マツダ)〉は世界初の実用・量産ロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツで反撃の狼煙を上げ、同じくロータリーエンジンを搭載するRX-7を完成させた。〈日産〉R34 GT-R、〈トヨタ〉スープラ、そして〈マツダ〉RX-7はいずれも2002年8月に当時の排ガス規制をクリアできずに惜しまれながら生産を終了した。そして今、その当時のJスポーツカーが目を剝くほどのプレミア価格で売買されているのだ。

2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst
2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst

2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst
2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst
2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst

日本人的な美意識とこだわりが凝縮していたRX-7

本稿でピックアップした〈マツダ〉RX-7は、SAVANNA RX-7(サバンナ RX-7)の名で1978年3月に誕生。1991年に行われた2度目のフルモデルチェンジでεfini RX-7(アンフィニ RX-7)へと生まれ変わり、1997年10月にアンフィニブランドが廃止されたことで〈マツダ〉RX-7になる…という紆余曲折を経ている。FD型と呼ばれる〈マツダ〉RX-7は、ヨーロッパと日本の美意識を融合したような美しい流線形ボディとミニマルなデザインは、2004年にはアメリカの自動車専門誌『Sports Car International(スポーツカー・インターナショナル)』にベスト・スポーツカー1990年代部門で第10位に選出されるほどの高い評価を得た。実際、今でもRX-7の美しさはまったく色褪せないし、もっとも美しい日本車だと思う車好きも多い。リトラクタブルヘッドライトのややレトロな要素も生粋のスポーツカー好きには刺さる部分だろう。
個人的な話になってしまうけれど、〈マツダ〉RX-7は10代の頃に一番好きなスポーツカーのひとつだった。理由は単純、かっこよくて美しいからだ。〈日産〉スカイライン GT-R(R34とR32)への憧れもあったが、ガンダム的な少しごつめで直線的なGT-Rよりも、削ぎ落した美を体現したようなRX-7の方が本能的にかっこいいと感じていたからだろう。ロータリーエンジンという個性もさることながら、スポーツカーとしての性能を高めるために前後の重量バランスに徹底的にこだわり、軽さを追及した職人的なエンジニアリングにも惹かれていた。絶対的なパワーに頼ることなく、素質の良さを追い求める〈マツダ〉RX-7こそ、日本人的なもの作りが凝縮されていたと思う。

2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst
2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst

2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst
2001 Mazda RX-7 Type R Bathurst

本当に良いものは年月を経て高く評価される

〈日産〉スカイライン GT-Rはかなり前から当時の販売価格を大幅に超える価格まで上昇していたが、ここ数年で〈マツダ〉RX-7も一気にプレミア化した感がある。参考までに、RX-7の最終モデルであるSPIRIT R(スピリットR)タイプAは2002年4月に車両本体価格と消費税相当額を合わせた価格が399万8,000円だったのだが、現在は走行距離が多く、修復歴がある中古車両でも最低400万円以上で売られているものが多い。もちろん年式やモデルによって価格は大きく異なり、高年式で走行距離が少なく、修復歴のない個体の多くが1,000万円以上で販売されているのだ(価格は応相談の個体も多数あり)。販売終了から20年以上の年月を経て、実に当時の2倍以上の市場価値に化けたということになる。
この爆発的なプレミア化は、欧州の人気の高いスポーツカー/スーパーカーに近いと言っていいだろう。生産終了後にここまで人気が高まることは、当時開発に関わっていた〈マツダ〉の関係者もまったく予想していなかったに違いない。一般の車好きも「あの時売らなければ良かった」と後悔している方もいるだろう。日本車で世界的なプレミアが出ていたのは、一昔前までは〈日産〉スカイライン GT-R(KPGC10、通称ハコスカ)や同じくGT-R(KPGC110、通称ケンメリ)、〈トヨタ〉2000GT、〈マツダ〉コスモスポーツくらいだった。それらはデザイン性の高さも評価されていたが、希少なヴィンテージカーであることに評価の重きが置かれていたように思う。それらと比較して、2000年代初頭に生産が終了した〈マツダ〉RX-7は生産台数が比較的多く、当然年式としてもヴィンテージではない。だからこそ、4桁の大台に乗ったことは本当に凄いことなのだ。
〈マツダ〉RX-7に1,000万円の価値があるのか?という問いに対しては、この車に対する愛着の深さによって違うだろう。日本車にそんな値段を払うのはバカバカしいと感じるのもまったく変ではないし、納得できるコンディションのRX-7になら1,000万円支払っても惜しくないと思うことも、もちろん変ではない。そういうあなたはどうなの?と訊かれると、1,000万円の車を買う甲斐性はないと答えるしかないのだけれど、昔大好きだったスポーツカーがこれほどプレミア化したことは嬉しさに似た気持ちを感じる。やはり本当に良いものは世間が放っておくはずがないのだから。
〈マツダ〉RX-7に本気で乗りたい!と思う方は、ご希望のモデルやカラーを地道に探してみてはいかがだろうか。きっと数年後にはもっと高騰しているはずだ。
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