掟破りを楽しむ – 日本製エンジンにスワップされたフォード・マスタング
栄光のガルフカラーにペイントされたクラシック・マスタング。カーエンスージアストたちからの称賛を浴びそうな最高のルックスだが、エンジンフードの下に何が入っているかを知れば、彼らは180度態度を変えるかもしれない…。
Written : LIVE IN RUGGED
Photo : SPEEDHUNTERS
非常識な選択
例えばC3コルベットのエンジンをC6コルベットのスモールブロックエンジンにスワップするといった行為は、特にアメリカでは頻繁に行われている。使い古されたエンジンは信頼性という点で疑問が多い場合があり、日常的に使うにはストレスが強いことがあるからだ。こういった「古いエンジンを新品に換える」カスタムでさえ、古典的なカーエンスージアストたちの中には拒否反応を示す人たちがいる。それでも、アメリカ製エンジンを同じメーカーのアメリカ製エンジンに交換しているのだから理解の範疇ではある。
この68年製〈FORD(フォード)〉・マスタングはご覧の通り最高のルックスだ。レースの世界で伝説的なガルフカラーにペイントされており、細部を見れば見るほどクラシカル。ところが、エンジンは〈トヨタ〉製の2JZ-GTE 3.0リッター DOHC 直列6気筒。常識的に考えてあり得ない選択。マスタング信者が知ったら袋叩きに合いそうな発想なのだ。
この68年製〈FORD(フォード)〉・マスタングはご覧の通り最高のルックスだ。レースの世界で伝説的なガルフカラーにペイントされており、細部を見れば見るほどクラシカル。ところが、エンジンは〈トヨタ〉製の2JZ-GTE 3.0リッター DOHC 直列6気筒。常識的に考えてあり得ない選択。マスタング信者が知ったら袋叩きに合いそうな発想なのだ。
本当にユニークなマスタングへの欲求
この奇妙なマスタングのオーナーであるボー・マイクルサンズ氏は、クルマを見つけてからまずはボディ各所の錆びなどを取り除きいくつかのクリーニングを施したという。それから「より多くのパワーと何か違った挑戦的なことを求めて」オーソドックスなV8エンジンという選択をやめた。試行錯誤を繰り返し、最終的に彼は〈TOYOTA(トヨタ)〉・アリストの2JZ-GTEをボンネットの下に置くという結論に達したという。
幸い〈トヨタ〉製ストレート6はフードカウルやストラットタワーの改造なしでエンジンベイに収まった。エンジン自体をマスタングのエンジンルーム内に配置することは簡単らしい。やっかいだったのは配線回りだったそうだ。
それから強力なシングルターボを追加。こうしてクラシック・マスタングは日本製エンジンとシングルターボの力を手に入れたものの、最初は故障続き。路上で1回、シャシーダイナモ上で2回ドライブシャフトが壊れたという。
それから強力なシングルターボを追加。こうしてクラシック・マスタングは日本製エンジンとシングルターボの力を手に入れたものの、最初は故障続き。路上で1回、シャシーダイナモ上で2回ドライブシャフトが壊れたという。
国境を超えたパーツをインプットし、更にユニークなポニーカーへ
スワップされたのはエンジンのみならず。ブレーキは新品のディスクブレーキに換えられ、新しいリアディスクに合わせるためにケルシー・ヘイズ4ピストンキャリパーに対応する5ラグコンバージョンと一緒に前面に取り付けられている。インタークーラーは何と〈いすゞ〉製だ。
批判を恐れず自由にカスタムする楽しさ
ボー氏は将来的に大型のインジェクターとスタンドアロンのECUを追加し、現在の300馬力から500馬力にパワーを引き上げようと考えているらしい。日本製、しかも〈トヨタ〉アリストのエンジンを68年製マスタングに投入するというアイディアは斬新そのものだが、冒頭で述べたようにカーエンスージアストたちからは強い拒否反応を受ける恐れはあるだろう。なぜそんなことをするのか、なぜマスタングに〈トヨタ〉エンジンなのか…正直に言うと私自身も同じことを思った。暴挙もいいところでは?と。
ただ、本来クルマの楽しみ方は人それぞれであり、その多様性が驚きや影響を与えてくれることを考えると、ボー氏の突飛なアイディアもだんだんクールなものであるように思えてきた。掟破りを楽しむこと。それもまた充実したカーライフの側面かもしれない。
ただ、本来クルマの楽しみ方は人それぞれであり、その多様性が驚きや影響を与えてくれることを考えると、ボー氏の突飛なアイディアもだんだんクールなものであるように思えてきた。掟破りを楽しむこと。それもまた充実したカーライフの側面かもしれない。
ITEM CREDIT
- Car:1968 Ford Mustang Coupe