デニムの洗濯方法について

どのくらいの頻度で洗うか?これはデニム好きであれば誰しも最初に直面する問題だ。本日は「デニムの洗濯頻度」をテーマに、ウォッシュについて検討してみよう。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED

リーバイスのCEOが「デニムは洗濯してはいけない」と爆弾発言

2019年3月21日、ニューヨーク証券取引所に上場した米リーバイスのCEOであるチップ・バー氏が爆弾発言をぶち上げて大いに話題になった。バー氏は10年物になったジーンズは一度も洗濯したことがなく、「洗濯機で洗ってはいけない」と断言したのだ。また、夏場に根性穿きを行うデニムヘッズの多くが行う冷凍庫に入れる殺菌処理についても「あれは迷信だ」「効果はない」と言い切った。
チップ・バー氏が爆弾発言「洗濯も冷凍もダメ」
冷凍庫に入れる行為自体は本当に意味があるのか私も半信半疑だったが、「洗濯してはいけない」とリーバイスのような巨大な企業のトップが発言してしたことにはかなり驚いた。そんなこと言っちゃっていいんだろうか…と。
デニム狂であれば誰しも一度は迷ったことがあるであろうデニムの洗濯頻度。本日は個人的主観と経験を織り交ぜつつ、ウォッシュについて検討してみようと思う。


上に乗っているのはドゥニームの662。他は左からダルチザンのSD-103、ネイキッド&フェイマスのエレファント2、ダルチザンのSD-107。ドゥニームは何度か洗濯したが、他はまだ一度も洗っていない。

2017年にもっとも穿いたジーンズであるドゥニーム662。濃紺だったデニムは穿きこみと洗濯で鮮やかなブルーにフェイドした。

過度な根性穿きは厳禁?

一般的によく言われているのが「半年間は洗わない方が良い」というアドバイス。これは実際に私も行っている方法だ。大抵の場合真冬(12月とか)に穿きこみを開始し、6月頃になるとファーストウォッシュを行う。ドゥニームの662はまさにこの方法でエイジングさせた。しかもその間はほぼ100%の頻度で662だけ穿くという、文字通り根性穿きを敢行した。その甲斐あって現在はメリハリの強い色落ちに成長中であるが、実はいくつか問題があった。
真冬から穿きこみを開始したと言っても、6月にもなれば夏みたいなものだ。当然汗をかくし、後半は匂いが気になり始める。そこで伝家の宝刀である「冷凍庫にぶちこみ」を行い、バクテリアをできるだけ死滅させた(気になっていた)。前夜に冷凍庫に入れて翌朝穿くとヒンヤリ冷え切っていて気持ち良かったりする。
実際に冷凍させることに意味があるのかは分からない。前述のようにリーバイスのCEOが「意味なし」と断言しているほか、そもそも科学的な根拠がないので気休め程度と捉えてほしい。
また、半年間洗濯せずに毎日穿くと必ずバイ菌が繁殖する。デニムにとって汗や皮脂は天敵で、生地を劣化させる原因になるのだ。過度に根性穿きをするとかなりの高確率でデニムの寿命を縮めることになるだろう。


ドゥニーム662、着用から1年程度経った2018年1月時点でのショット。膝裏のハチノスなどがくっきりと浮かび上がっている。

バックショット。やはりハチノスが一番目立つ。662はドゥニームには珍しいタイトフィットストレートなのでアタリの付き方も激しい。裾部分のうねりも凄いことになった。

どういう雰囲気にしたいかと、どれくらい長く穿きたいか

それでは一体どのくらいの頻度で洗うのが正解なのだろう?ここは個人的な主観になるが、「どういう雰囲気に育てたいのか」と「どのくらい長く穿きたいのか」が重要なポイントになると考えている。
例えば濃淡の差が強い色落ちを目指すなら「最初の半年間は洗濯しない」くらいのペースが良いだろう。これはオーナーの体型に合ったクセをデニムに記憶させたうえで、色落ちしやすい箇所を積極的にフェイドさせる方法である。つまり、太腿部分のヒゲや腰回りのアタリ、膝裏のハチノスなど、クセが付きやすいことでこすれる箇所を自然に色落ちさせていくということ。これがコントラストの強い色落ちを実現させるために最低限必要なメソッド。
逆に、そこまで激しい色落ちを求めていなければもっと早い時点で洗濯して問題ない。穿きシワがしっかり付いたことを確認できれば、匂いや汚れが気になった時点でファーストウォッシュをしてしまって良いだろう。
根性穿きはカッコいい色落ちへの近道ではあるものの、デニム自体の寿命とは表裏一体であることは忘れてはいけない。そう、「どのくらい長く穿きたいのか」は「どのくらい洗濯したか」に関係してくるのだ。
適切な頻度でちゃんと洗ったデニムは、先に書いたようにバイ菌や皮脂がリセットされることで寿命が延びる。根性穿きをすると明らかに洗いが足りないため、自覚する以上にデニムはダメージを受けていると考えるべきだ。
よほど極端な穿き方をしなければ根性穿きをし続けても数年間はもってくれるかもしれないが、10年穿けるかは難しいかもしれない。これはオーナーがどんなライフスタイルで穿いているかでかなり左右される部分なのでハッキリと断言はできないが、ダメージが蓄積した部分は一度崩壊すると一気に弱くなるので注意してほしい。

汚れ具合によって洗い方を変えるのがベスト

それでは、どう洗濯するのがベストか。デニムを洗濯する方法はいくつかあり、汚れ具合によって使い分けてほしい。1つめはSoak(ソーク)と呼ばれる方法。いわゆる浸け置き洗いのことだ。バスタブに水を張り、ハンドソープを入れ、裏返したジーンズを浸す。30~1時間程度浸したらシャワーで洗い(こすったりはしない)、余計なシワをしっかり伸ばしてから陰干しするというもの。これは汚れや匂いがそれほど気にならない時の軽い洗い方で、私も時々する。そんな程度で綺麗になるのか?と思うかもしれないが、ハンドソープが溶け込んだ水に浸して洗い流すだけでかなりスッキリするのだ。
2つめは洗濯機で「水洗い」で洗う方法。裏返したジーンズを入れて、早洗いを選択して洗剤を入れずに洗う。洗剤を入れないことでできるだけ色落ちさせずにスッキリさせる方法として、これも時折行う。Soakと同じようにしわを伸ばし、陰干しすればOKだ。
3つめは洗濯機で「洗剤を入れて」洗う方法。根性穿きを敢行した後のファーストウォッシュ時や、夏場に大量に汗をかいた後に我慢できずに洗う時などにおすすめ。洗剤は蛍光剤や漂白剤の入っていないものを使うこと。デニム専用の洗剤を使うのも良い。当然と言えば当然だが、洗剤を入れて洗濯機で洗うのがもっとも汚れや匂いが落ちる。干し終わって脚を通した時のパリッとした質感は「何でもっと早く洗わなかったんだろう…」と思うほど気持ちいい。

一筋縄ではいかないのも楽しさと捉えてエイジングさせよう

リーバイスのCEOが言う「洗濯も冷凍もダメ」は極論であり、洗う方が良いのは明白。国産デニムの巨匠であるリゾルトの林氏は「たかがジーパンや。洗え」と言っていたし、他のブランドの著名な代表者も「適切な洗濯はデニムの寿命を考えても重要」と言っていた。私も同意見だ。つまり、洗うことは間違いないとして、どれくらいの頻度で穿いて洗うか。これによってエイジングにかなり差が出ると考えてよい。
最近のジーンズはどこも出来が良いので、あまり深く考えずに適当に穿きこむだけでカッコいい色落ちに育ってくれたりもする。林氏が言うようにたかがジーンズにそこまで神経質にならなくても…と思うことも多々あるのだけど、デニムが好きであるほど失敗したくない気持ちになったりもするのだ。
いつどのように洗うかは常に直面する問題。これからジーンズを育てようとしている方は、ぜひ数年後の色落ちの完成形をイメージしながら経年変化を楽しんでほしい。もし理想通りにエイジングしなくても、それもまた個性のひとつとして楽しむのが一番だ。例え同じブランドの同じ品番を買っても、穿き方や洗い方で無限に表情を変えるのがデニムという素材の面白さなのだから。

ITEM CREDIT
  • DENIME:662
  • STUDIO D’ARTISAN:SD-103
  • STUDIO D’ARTISAN:SD-107
  • NAKED & FAMOUS:ELEPHANT 2
  • Red Wing:8172