生々しいエイジングを楽しめる、土屋鞄のナチューラヌメ革Lファスナー

土屋鞄のエントリーモデルのひとつであるLファスナー。様々なカラー、素材が用意されている中で筆者が選んだのはもっとも「素」状態を味わえるナチュラルカラーのヌメ革だった。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED

初めての土屋鞄はヌメ革と決めていた

革製品専業のブランドとして国内屈指の人気を持つ土屋鞄。熟練した職人たちがひとつひとつ手作業で製作する職人気質な姿勢とハイセンスなデザインが男女問わず支持されている。元はランドセルを作るメーカーとして1965年に創業。今でもランドセルは主要製品のひとつだが、革好きにとってはやはり高品質な革小物やバッグをメインに作るブランドとしてのイメージが強いはず。
私が土屋鞄のLファスナーを購入したのは約4年前の2015年8月。遅ればせながら、これが初めての土屋鞄だった。本当はバッグなども気になっていたものの、初めては革財布を購入すると決めていた。中でも気になっていたのが素朴なヌメ革のアイテム。Lファスナーは革の質感をそのまま活かし、余計な装飾を加えない潔い形が特徴だ。
実際店舗で手に取って見てもイメージ通りの素朴な佇まい。5,500円というお手頃価格にも後押しされて、珍しく?迷うことなく購入した。


購入初日のまっさらな新品状態。丁寧な仕事ぶりが伺えるパリッとしたシャープなラインは新品ならでは。

縫製やファスナーの取り付け精度のレベルも非常に高い。この大きさなので素材自体の原価が安いのは分かるが、職人の作業代を考えると5,500円は超が付くほどお手頃と言えるだろう。

デメリットも多いヌメ革を選んだ理由

革キチの方々には説明不要かもしれないが、実はあまり知られていないのでヌメ革についておさらいしよう。
ヌメ革とは植物の渋に含まれる成分のタンニンでなめした皮革のこと。通常、レザーは傷や水から守るためと、革自体が持つ傷跡などを隠す目的で表面に加工が施されるものがほとんど。ヌメ革は表面加工がない生に近い革と捉えても良いだろう。生に近い=それだけレザーの質感やエイジングをダイレクトに味わえるということ。
Lファスナーを購入するにあたりヌメ革を真っ先に候補にした理由はここにある。使っているうちにどんどん傷が付き、日に焼けて、それらすべてを「経年変化」として楽しめる革がヌメ革なのだ。
とはいえ、ヌメ革には弱点もある。最大のウィークポイントは水に極端に弱いこと。前述の通り表面加工が一切ないのではっ水効果はまったくなく、濡れてそのままにするとあっという間に染みになる。これは汗も含めてなので、暑い季節にジーンズのバックポケットに入れておくと想像以上に水分を含んでしまうのだ。
また、傷や汚れも目立ちやすい革でもある。爪で少し引っかくだけで傷跡として残ってしまうし、デニムのインディゴなども色移りしやすい。ヌメ革は総じてダメージが目立ちやすい革と言い換えられる。
ただ、皮革自体は繊維の目が詰まっているためかなり丈夫だったりもする。荒っぽい扱いをしてダメージが蓄積しても革自体が崩壊するようなことはなく、傷や汚れがそのまま味になるようなレザーなのだ。革本来の自然な表情を持っていて、使い込むほどに色や艶が増していく…革キチであればきっと夢中になれる素材がヌメ革だ。


こちらの写真は約1ヵ月毎日使った状態。ジーンズのバックポケットに突っ込むという革財布にとってはトップクラスに劣悪な環境で使用している。よく爪が当たる箇所には容赦なく傷が入っているのが分かる。

KISSORAの小銭入れと共に。着用1ヵ月ではまだまだ変化が乏しいが、実は既に日に焼けて色味も変化している。手汗や脂でも表面加工が一切ないヌメ革は経年変化に直接影響する。


購入から1年1ヵ月が経過した2016年9月時点の写真。中に入れたカードの形状に沿って財布の形が変化していった。色味も更に飴色に濃くなっている。

購入から2年弱が経過した2017年5月時点の写真。使用する時は常にジーンズのバックポケットに入れているせいで、エッジの部分にインディゴが濃く色移りした。傷も無数に付き、財布自体の形状もお尻の形に添ってカーブ。それらすべてがこの財布の個性になっている。

どれほど酷使しても平気な顔でエイジングする、頼りになる相棒に

購入から約4年が経過した今もLファスナーはお気に入りの財布のひとつ。あまりにラフに使いすぎた反省が多少ありつつ、オーナーの雑さもおおらかに受け止めてくれるのがヌメ革だ。細かいことは気にせずとにかくガンガン使って味出ししたい方にはかなりおすすめの財布。また、革自体の頑強さと作の確かさも魅力のひとつ。ヌメ革が「強い」レザーであることは先に述べたが、例え酷使しても財布として機能し続けるのは土屋鞄の職人さんの技があってこそ。「強い」レザーを「丁寧に」作る職人技も決して忘れてはいけない部分だ。
ナチューラヌメ革Lファスナーはこれからも長い付き合いになりそうだ。

ITEM CREDIT
  • 土屋鞄:Natura Nume L wallet
  • kissora:Cow hide leather coin case
  • CHROME HEARTS:Keeper ring / Scroll ring
  • TUDOR:Oysterdate (70’s vintage)