アポロ11号月面着陸50周年を祝うオメガ・スピードマスターの限定モデル

アポロ11号の月面着陸50周年を祝うスペシャルモデル「Moonwatch Anniversary Limited Series」が登場。スピマスファンはもちろん、クールなクロノグラフを愛するすべての時計ファン必見の2つの限定モデルをフィーチャー。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : OMEGA

偉業達成から50年を祝う「本当に特別なスピードマスター・プロフェッショナル」

1969年7月21日⁠、ニ⁠ール⁠・ア⁠ームストロングとバズ⁠・オルドリンが月着陸船イ⁠ーグル号で月面を訪れて今年でちょうど50年。昨年から囁かれていたスペシャルモデルはもちろん登場した。世界限定6,969本。生産数自体はそれなりに多いため即座にプレミア化することはなさそうだが、この腕時計の背景を考えると本当に特別なモデルであることは間違いない。
スピードマスター・プロフェッショナルという時計のヒストリーについてはこちらの記事をぜひ参照いただきたい。「世界でもっとも有名なクロノグラフ」の異名を持つベストセラーモデルであり、NASAの宇宙遊泳時の唯一のオフィシャル・ミッションウォッチ。」きっとこれだけでスピードマスター・プロフェッショナルの偉大さが伝わるだろう。
この有名なクロノグラフはこれまでに数え切れないほどの限定モデルが生まれてきたが、今年登場したアポロ11号50周年記念は歴代モデルの中でも特筆してスペシャルだ。スピードマスター・プロフェッショナルを語るうえで常に欠かすことができない「ミッションウォッチ」としての50周年記念。当然オメガの気合いの入れようも強く、2本の限定モデルが登場した。まずはステンレススチールの一本をクローズアップしてみよう。


基本的なデザインを60年近く変更していないところもスピマスプロの魅了。ハイビート・セルフワインディングが当たり前の今の時代でも手巻きにこだわる。

「人類にとって偉大な一歩」という名言をケース裏蓋にデザイン。オーナーだけが見ることができる洒落た演出だ。

ゴールドコンビで硬派さがより増したステンレススチールモデル

ステンレススチールモデルでまず目を引くのは文字盤の至る所に入るゴールドカラー。インデ⁠ックス⁠、ベゼル⁠、オメガロゴ⁠、そして針のほとんどすべてに⁠18Kム⁠ーンシ⁠ャインゴールドを採用し、パッと見て普通のスピマスプロではないことが分かる。18Kム⁠ーンシ⁠ャインゴールドは特許出願中の新しい合金で⁠、従来のイエロ⁠ーゴ⁠ールドより淡い色合いで輝くことが特徴。また、退色への耐性が従来のゴールドよりも強くなっているという。黒文字盤にゴールドというコンビネーションは他ブランドのモデルでも見ることができるが、スピマスプロの硬派なルックスの場合は華美さ以上に男らしさが増していると感じた。Too muchなゴージャスさを良しとしない方でも違和感なく身に着けられるだろう。


ケース径は通常モデルと同じく42mm。ボリューム感と着用時のバランスが計算し尽くされており、オンオフ問わず身に着けられるスポーツウォッチとして世界中の時計好きから絶大な支持を集め続けている。

アポロ11号50周年記念の文字盤にはいくつかのユニークなアレンジが施されている。11時位置には18Kム⁠ーンシ⁠ャインゴールドでアポロ11号の「11」を配置。また、9時位置のサブダイヤルには同じく18Kム⁠ーンシ⁠ャインゴールドで月面に降り立⁠ったバズ⁠・オルドリンをレ⁠ーザ⁠⁠ーエングレ⁠ービングで刻印。この意匠を楽しめるのはこの限定モデルだけだ。

最新素材と新しいムーブメントを採用したオールゴールドモデル

もう一本はゴージャスさを極めた更に特別なモデル。「アポロ11号50周年記念 ムーンシャインゴールド・リミテッドエディションモデル」に既視感を感じた方は相当なオメガマニアのはずだ。実は1969年にアポロ11号の月面着陸成功を記念し、特別なゴールド製スピードマスターが製造されていた。1,014本限定で生産され、シリアルナンバー3~28はNASAに勤務する宇宙飛行士たちに贈られている。そう、「ムーンシャインゴールド・リミテッドエディションモデル」は当時限定生産されたモデルを忠実に再現したものなのだ。
当時のモデルと異なるのはいくつかあるが、最大の特徴はケースやブレスレットなどが新素材の18Kム⁠ーンシ⁠ャインゴールドであること。前述の通り退色に強い素材なので、その名の通り月が輝くような淡い輝きを長い年月に渡って維持してくれる。
ベゼルはセラミック製。バーガンディーカラーのゴールドとの相性が抜群だ。このベゼルにはスピードマスターの歴史に敬意を表わすクラシカルな「ドットオーバー90」(90の上のドット)も配されている。また、インデックスのひとつひとつにファセット加工が施されたブラックオニキスだったり、ブレスレットはサテン仕上げとポリッシュ仕上げが交互に組み合わされていたりと、さすがに芸が細かい。


1969年発売の限定モデルを忠実に再現しつつ、新しい素材などを積極的に採用した現代版オールゴールドスピードマスター・プロフェッショナル。アポロ11号月面着陸50周年記念モデルにふさわしいゴージャスな腕時計である。

ケースバックはシースルー仕様。美しいムーブメントの動きを堪能できる。後述するが、裏蓋にも「これでもか!」というほどオメガのこだわりが注がれている。


ムーンシャインゴールド・リミテッドエディションモデルを身に着けるバズ⁠・オルドリン。人類で初めて月に到達したリビング・レジェンドだ。

オールゴールドとバーガンディーカラーのベゼルがどことなくクラシカルな雰囲気。確かに豪華絢爛な時計ではあるものの、ギラギラし過ぎない渋さがあるのもスピードマスターらしい。

偉業を祝福する記念碑のようなモデル

ケースバックを見ても一目で特別感溢れる仕様になっているのが分かる。「APOLLO 11 – 50th ANNIVERSARY」や「THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON」といったスピードマスター・プロフェッショナルならではの刻印はもちろん、50周年記念であることを示す「1969 – 2019」の文字やシリアルナンバーもケースバックに刻まれている。
また、月を表現した半球形の月の隕石が実際の世界地図との対比となるようにあしらわれていたり、レーザーアブレーションの刻印とPDVカラー加工で描いた青い海とケープ・カナベラルを見下ろすような世界地図が刻まれるなど、ここでも特別感に満ちたアイディアが具現化されている。着用時に見ることができないくらいワクワクする仕様だ!
ムーブメントはCal.1861から進化を遂げたマスタークロノメーター、Cal.3861を搭載。ゴールドプレート仕上げのブリッジやバーガンディーのマーキングといったコストの掛かる装飾に目を奪われるが、手巻き機構として初めてマスタークロノメーター認証を得た非常に精度の高いムーブメントであることに注目したい。
NASAのミッションウォッチとして採用されたことは狙ってできることではないため、オメガにとっても僥倖だったと言えるだろう。しかし、ロレックスを含めたライバル機を振り切って唯一過酷なテストに合格したことは頑強さと高精度であることの証だし、50年経った今も心が躍るようなエピソードじゃないか。
宇宙飛行士と共に月に行ったこと。そこでの緊迫感溢れる事件。時計を構成するすべての機構やパーツに数十年掛けて蓄積してきた膨大な知識と経験が綿々と受け継がれている。スピードマスター・プロフェッショナルよりも高価なクロノグラフは簡単に見つけることができるが、これほどのストーリーと伝説を持つモデルはそうそうあるものではない。アポロ11号50周年記念は腕時計業界に深い爪跡を残した偉大な名機を祝福する、記念碑のようなモデルだ。

ITEM CREDIT
  • Omega:Moonwatch Anniversary Limited Series