【第3回】腕時計とスター – キース・リチャーズ
ハリウッドスターやミュージシャンたちの愛用時計をフィーチャーする連載「Watches & Stars」第3回は問答無用のロックスター、キース・リチャーズの愛用品に迫る。
燃え尽きるようにロックスター街道をひた走ってきた「生きる伝説」
キース・リチャーズとローリングストーンズにまつわる数々の伝説と逸話はまるでおとぎ話のようだ。これほどドラマチックで波乱万丈、かつ破天荒な生き方をしてきた人間は滅多にいないだろう。キースはまるで燃え尽きるようにロックスター街道をひたすら突き進んできた。ドラッグと酒に溺れ、煙突のようにタバコを吸い、巨大なステージでギターをかき鳴らしてはまたドラッグを決める…常人ならばゾッとするようなライフスタイルを何十年も続けてきた男。間違いなくキース・リチャーズはロック界を代表する生きる伝説だ。それでは、そんな男が愛用する腕時計はどんなモノなのだろうか?
パンテールドゥカルティエとIWCポルトギーゼクロノグラフ
キースは億万長者だが、分かりやすい高級モデルをこれみよがしに身に着けるような野暮な真似はしないようだ。彼が長年愛用しているモデルのひとつはパンテールドゥカルティエ。小振りのサイズ感がエレガントなこの腕時計は2000年代初頭に生産中止になったが、2017年に女性用コレクションとして復活した。最大サイズでもケース径27mmと男性が身に着けるにはかなり小振りなサイズ感で、このユニセックスな腕時計をキースのようなロックスターが愛用しているというのが興味深い。きっとキースは演奏中でも邪魔にならないことを重視したのではないだろうか。パンテールドゥカルティエならば軽量、薄型で着けていることを忘れるくらいの着用感である。
近年お気に入りの腕時計はIWCポルトギーゼクロノグラフだ。1998年にIWCが発表したクラシックなデザインのクロノグラフは腕時計好きから大歓迎された。キースの他にデザイナーのトム・フォードも愛用しており、ファッショナブルで自分のスタイルに強いこだわりを持つ男から支持されていることが分かる。
ブランドや値段にまったくこだわらないキース・リチャーズ
もうひとつ確認されているキースの愛用時計はSTAUER 1922オートマチック。シュタウワーは日本ではマニアックなブランドかもしれないが、レトロなデザインを500ドル以下で販売することで欧米では良く知られている。キースのような大金持ちがこれほど低価格の腕時計を愛用していることは、いち庶民として嬉しくなってしまう。やはりキースはステータス性よりも実用性や機能性を優先しているのだろうか?
謎めいたキース・リチャーズと腕時計の関係性
セックス・ドラッグ・ロックンロールを究極レベルで体現したロックスターの中のロックスター、キース・リチャーズ。彼ならば新旧問わずどんなロレックスもパテック・フィリップも今すぐ手に入れることができる。もしかしたら自宅のコレクションの中にはいくつもあるのかもしれないが、少なくとも公の場で愛用してきた腕時計は思いのほか庶民的だったことは新鮮な驚きだった。単純にキース自身が腕時計にそれほどこだわりがないタイプなのかもしれないけれど、個人的にはその可能性は少ないのではないかと思っている。なぜなら、彼ほどスタイルがある人間であれば、身に着けるファッションアイテムにも自身のフィルターを通したこだわりがあるはずだから。ブランドで選ぶことはなくても、必ず何かしらの審美眼でモノ選びをしているなのだ。
本当のところは謎だが、一番の謎は燃え尽きるような生き方をしてきたキースが今も元気で生きていることかもしれない。
本当のところは謎だが、一番の謎は燃え尽きるような生き方をしてきたキースが今も元気で生きていることかもしれない。
ITEM CREDIT
- Cartier:Panthère de Cartier
- IWC:Portugieser Chronograph
- STAUER:1922 Automatic