Heritage meets fashion 2020 Tudor Blackbay

2020年もっとも「買い」のダイバーズウォッチ?チューダー・ブラックベイ・フィフティーエイト「ネイビーブルー」

非常に人気の高いブラックベイシリーズにこの夏新しく追加されたネイビーブルー。チューダーらしいクラシカルなデザインと鮮やかで若々しいカラーリング。約40万円という価格もチューダーが「庶民の味方」であることを改めて感じさせる。既に定価よりも高く取引されているらしい「ネイビーブルー」を徹底解剖!


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Tudor

かつてフランス海軍で正式採用されたサブマリーナの現代版

チューダー・ブラックベイ・フィフティーエイトシリーズは30~40万円前後の価格帯のスポーツウォッチの中で近年もっとも成功したシリーズだ。最大の特徴はチューダー(かつての呼び方だとチュードル)らしいクラシカルなデザイン。60年代から綿々と受け継がれてきたものの、一時失ってしまったように見えた往年のチューダーらしいデザインは、シリーズが生まれた当初から市場から大絶賛を持って歓迎された。
価格がこなれていることも売れまくった理由だ。元々チューダーはロレックスのディフュージョンブランドとして生まれた背景がある。「本家」のデザインとパーツを使いながらムーブメントは他社の汎用モデルを採用することで「ロレックスのデザインと作りを安く手に入れられる」ことが最大の魅力だったのだ。もっとも、始まりはそうでも徐々にチューダーならではのオリジナリティを強めていったことはご存知の通り。70年代に生まれた通称「モンテカルロ」は現在モデルによっては数百万円で取引されている。
2020年の今でもチューダーとロレックスは関係性を保っているが、ロレックスのデザインを安く買えるという理由でチューダーの腕時計を購入する人はもうあまりいないのではないだろうか。
ブラックベイ・フィフティーエイトシリーズに話を戻そう。この夏追加された新色「ネイビーブルー」はいかにも夏らしい爽やかなカラーで、ダイバーズウォッチらしさに溢れている。ただ、チューダーファンならご存知のように、単純にサマーシーズンに出すダイバーズウォッチだから青くペイントしたわけではない。
チューダーのダイバーズウォッチはかつて軍用時計として活躍したことがある。1960年代のフランス海軍でチューダー・サブマリーナ(日本ではイカサブと呼ばれている)を軍用として正式採用。当時採用されたサブマリーナはブラックカラーとブルーカラーの2色で、今年ブラックベイ・フィフティーエイトシリーズに追加されたモデルは、約60年前のモデルからインスピレーションを得た新作なのだ。
そういった歴史的な背景があり、多くの時計好きがそれを知っているから、「ネイビーブルー」は早くも大人気らしい。特にメタルブレスレットモデルは早々と店頭から姿を消し、並行輸入モデルが定価以上で売られているとか。チューダーファンとしてはまるで兄貴分のロレックスのような事態が発生しているなぁと嬉しくなってしまう。「ネイビーブルー」の魅力については以下に詳しく書いていくが、コロナ禍の中で投入した新作がよく売れていることはブランド側としてはホッとしたことだろう。個人的にも、チューダーから新作が出たことと、実際に売れていることはとても嬉しいニュースだ。


ベゼルと文字盤が青いのが新作「ネイビーブルー」の特徴のひとつ。日本では「イカサブ」、欧米では「スノーフレーク」と呼ばれる短針の形状もヴィンテージモデルと同じ。

メタルやレザー、NATOストラップなどベルト部分のバリエーションが豊富なのもブラックベイ・フィフティーエイトシリーズの魅力。自分好みのストラップを見つけて気分によって交換するのがおすすめ。


ご覧のようにベルトの違いで雰囲気がかなり変化する。中央のメタルブレスレットタイプが一番人気で今は手に入れにくい。

左がインスピレーション源となったサブマリーナ。ドットがサークルではなく四角で海外では「スノーフレーク」と呼ばれている。右が新作のブラックベイ・フィフティーエイト。

これは売れまくって然るべき新作!

元ネタとなるヴィンテージがあり、それを現代的に解釈したのがブラックベイ・フィフティーエイトシリーズ。「ネイビーブルー」の歴史的な背景も魅力的ではあるものの、LIVE IN RUGGEDではファッション性の高さにも注目したい。
ロレックスを含めてスイス製腕時計はともすれば高級感やステータス性ばかりが先行し、ある意味で身に着けにくさがあると感じることがある。腕時計は男性が身に着けられる数少ないアクセサリーであることは否定しないけれど、過剰にギラギラしていたり、男っぽさが強すぎたり、成金オーラが出てしまう腕時計は普通の人であれば少し気が引けてしまうものだ。チューダーのブラックベイ・フィフティーエイトシリーズの人気が高いのは程よいカジュアルさがあることも理由のひとつではないだろうか。高級感とステータス性はしっかりありつつもそれを全面に出さず、スポーツウォッチらしい削ぎ落としたデザインで勝負する。そして自社がかつて製作していたヴィンテージモデルへの愛情もたっぷり表現する。そんなコンセプトが最高のバランスでデザイン的に具現化し、なおかつ買いやすい値段なのだから売れないわけがない。
何といってもロレックス・サブマリーナを新品で買おうとすれば基本的に100万円を超えてしまう。ところがチューダーの場合は40万円前後と半額以下なのだから、人気が爆発するのもうなずける。価格的な部分はあくまでも「最後の押しの一手」であり、本質的な魅力が備わっているからなのは言うまでもない。
「ネイビーブルー」は私たちが大好きなデニムとの相性も抜群だ。青はカジュアルさと洗練、落ち着き、高級感などいくつもの要素を併せ持つカラー。デニムを中心としたオフスタイルだけではなく、ブラックやグレー、ネイビーのスーツスタイルとも非常に相性が良いだろう。オンオフ問わずこれ一本でまかなえることを考えると約40万円という価格がますます絶妙に思えてくる。


リューズには伝説的なバラのアイコンが彫られる。ダイバーズウォッチなので本格的なマリンスポーツで使っても問題なし。

39mmのケースサイズも素晴らしい。近年の腕時計は過剰な大型化に傾倒していたので、40mm以下のサイズは腕の細い日本人でも着けやすい。

欠点なし!2020年もっとも満足度の高いダイバーズウォッチのひとつ

ここまではルックス面や歴史的な側面を書いてきたが、腕時計の醍醐味であるメカニック面も少し詳しく書こう。「ネイビーブルー」が搭載するムーブメントCal.MT5402はミディアムサイズの腕時計用に設計されており、機械部分の直径は26mm。時間、分、秒の表示機能を搭載し、サテン仕上げのローターやサンドブラスト仕上げのブリッジなど、仕上げの美しさにもこだわりが注がれている。堅牢性と耐久性、そして信頼性を重視しスイスの工場で組まれるムーブメントは約70時間のパワーリザーブを確保。先日の記事で2020年新作のロレックス・サブマリーナがついに70時間のパワーリザーブを手に入れたことに触れたが、この点においてチューダーのダイバーズウォッチは一足先に進んでいたと言って良いだろう。
完成されたクラシカルなデザインと腕時計黄金時代の遺産である歴史的側面。オンオフ問わず身に着けられるカラーリング。そして無理のないプライス。ブラックベイ・フィフティーエイト「ネイビーブルー」は飽きずに長年使えそうでありながらファッション性も高い「買い」の腕時計だ。