How long can we enjoy leather goods?

この世から革製品が消える時代が来る?私たちはいつまで革製品を楽しめるだろうか?

革製品がなくなる時代がくる?そんなこと夢にも思っていなかったけれど、SDGsが浸透してきた今の時代にとってこれは決して非現実的な話ではない。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : GANZO

私たちが生きるこの世界は、もはや数十年前と同じではない

SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))が徐々に世の中に浸透してきた。日本に住んでいると日常的に感じる場面は少ないものの、発展途上国の貧困や飢餓、教育といった問題、ジェンダーや人種差別の根深い問題、エネルギー問題、気候変動といった地球環境にまで及ぶ包括的な問題まで、私たちは解決できるのかすら見通せない数々の問題に囲まれている。すべての問題を真剣に考えようとすると現実逃避をしたくなるほどそれぞれが根深いのだけれど、もはや目を背けてはいけない次元にまで進んでしまっているのが現実だ。
ファッション業界も当然のことながらSDGsの観点から見ると非常に大きな問題を抱えている。例えばコットンを生産するためには多くの農家が農薬を使用する必要があり、土壌を汚染している。誰もが当たり前のように着用しているデニムやレザーは生産過程で大量の水を使用し、川を汚染している。売れ残った衣服の廃棄問題はファストファッションもハイブランドも抱えている…といった具合だ。それらのほとんどすべては数十年前までは誰も気に留めなかったことかもしれないけれど、エコやエシカルの考えが浸透したこれからの時代は目を背けて生きていくことはできないのだ。
もちろんLIVE IN RUGGED読者の多くが大好きな革製品もまた然り。革製品に使われる皮は基本的には食品産業の副産物ではあるものの、動物の命をいただいて生まれていることに変わりはない。当たり前のように革製品を愛用できているこの状態はいつまで続くのだろうか?私たちはこれからも変わらずに素晴らしい革製品を使い続けられるのだろうか?日本の最高峰のレザーブランド、〈GANZO(ガンゾ)〉の美しい写真と共に、本日は革製品の未来について少しだけ真面目に考えてみよう。


食品用としていただいた命の副産物である皮。いくつもの工程を経てから人が身に着けられる革へと変化していく。数センチの端切れであっても命の一部であることに変わりはない。

染め、カッティング、縫製、コバの処理などすべての技術が世界トップクラスの〈ガンゾ〉の革製品。2つ折り財布は常に売れている人気商品だ。

当たり前のように革製品を使える時代が終わる?

じゃあSDGsって実際どう私たちの生活に関係してくるの?というのはきっと多くの方が気になる部分だろう。日本の経済やビジネスの観点でインパクトがあった出来事は、2017年11月に経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)が7年ぶりに行動企業憲章を改定したことだ。その中で経団連が掲げたSociety5.0(ソサエティー5.0)というコンセプトでは、人類が誕生してから私たちが今生きているこの時代までを5段階に分けている。自然と共存していた狩猟社会や農耕社会を経て、大量生産が生まれた工業社会に移り、情報流通が誕生した情報社会へ。そして今私たちが生きている時代は5段階目の超スマート社会で、大きな変革の時代だと捉えている。
簡単に言うと「儲けたお金の一部を使って社会に還元しよう」というこれまでの考え方から「本業を通じて儲けながら世界を変えていこう」という考え方にシフトしていきましょう、ということ。一部上場企業の7割が加盟している経済界でもっとも影響力の強い経団連が企業活動に関わる姿勢やコンセプトを根本的に見直したという事実は、世の中的に見ても私たち一人ひとりの生活レベルで見ても非常にインパクトの大きいことなのだ。
ここ数年でSDGsを意識したファッションブランドが大幅に増えたことは、そういう事情がある。〈THE NORTH FACE(ノースフェイス)〉は洋服に多くの人工素材を使っているが、莫大な資金を投入して地球環境に優しい素材開発をしており、エコでエシカルであることを積極的にアピールしている。
その一方で苦しいのは伝統的な製法で作られる業界だ。皮革産業は皮の鞣しから加工に至るまで遥か昔から培ってきた製法なしには語れない世界。先に述べたように生産過程で地球環境には決して優しくない処理を行わざるを得ないし、食べるために奪った命の副産物とはいえ、他の生き物を犠牲にして成り立っている産業でもあるからだ。
これからますますSDGsが浸透していくと、どこかのタイミングで必ず今よりももっと皮革産業の問題点が浮き彫りになっていくだろう。そうなった時に無数にあるレザーブランドや工場はどうやって乗り越えていくのだろうか?もしかすると、当たり前のように革製品を楽しめる時間はごく限られているのでは?


英国伝統のブライドルレザーを使ったポーチ。強度を増すために特殊な蝋を塗り込んだブライドルレザーは数百年前から続く伝統的な製法で生まれた牛革。

薄くスマートに仕立てられたカーフ製の財布。財布といえばレザー製であることが当たり前になっているけれど、本当にそれがいつまでも続くのだろうか?

ただモノを買う時代は終わり、ひとりひとりが美意識を持って買い物をする時代になった

SDGsがますます浸透し、少しずつでも世の中はこれから変わっていくはず。それ自体はとても良いことだし、そうしなければ人類にも地球環境にも良い未来はないだろう。ただし、人類が誕生してから培ってきた伝統が消えていくのを見るのはあまりに悲しい。皮革産業が悪だと言われることは、革製品を心から愛するひとりの人間として言葉では言い表せないほど辛いことだ。
願わくば世間が無責任に特定の業種を批判したり、やり玉にあげないでほしい。特定の何かを必要以上に批判することはそれこそSDGsの精神に則っていないし、人は試行錯誤しながらより良い方向へ改善していけるはずなのだから。
皮革産業にとっては明るい未来を感じにくい時代になってしまったのかもしれないけれど、私たちにできることは企業を応援することではないだろうか。シンプルに、欲しい革製品は手に入れよう。命をいただいていることを忘れずに大切に使っていこう。そして、もし今後皮革産業がより困難な状況になってしまったら、他人事だと思わずにひとりひとりができる範囲で応援していこう。ただモノを買う時代は終わり、これからはひとりひとりが美意識を持って買い物をする時代になったのだ。素晴らしい革製品がこの世から消えてしまう姿を見るのはあまりに悲しいことじゃないか。
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