Only sold by designer NON MERCI

時代に逆行する驚愕の販売方法 – 注目の新ブランド NON MERCI について

90年代ファッションを彷彿させるリメイク調のデザイン&作りにも注目。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : yudai_murakoshi

目を疑うほどアナログな販売方法!

メイドインジャパンに強いこだわりを持ち、パンクに代表される強い音楽の匂いを漂わせるレザーブランド〈blackmeans(ブラックミーンズ)〉のメンバーのひとりであり、いまや海外にもその名声が届く「LABORATORY/BERBERJIN®(ラボラトリー/ベルベルジン)」のスタッフも務める村越雄大氏が自身のファッションブランド、〈NON MERCI(ノンメルシー)〉を設立した。
昔観た映画の中で誰かが言っていた「テクノロジーが世界を滅ぼす」という言葉が頭の中に強烈に残っている。私たちの身の回りにある様々なモノやサービスは、基本的にどれも「人の生活をいかに楽にするか」を突き詰めている過程と言えるのではないだろうか。馬車の代わりに自動車になり、洗濯板の代わりに洗濯機が登場したことや、お店に行かずともオンライン上で洋服も食べ物も購入できて、しかも自宅まで届けてくれること。これらはすべて「いかに楽で便利な世の中にするか」の試行錯誤の結果であり、現在進行形で続く人間ならではの進化のひとつなのだと思う。
筆者が20代前半だった頃(今から約20年前)は何かが欲しければ実際にお店に行くしかなかった。携帯電話がやっと普及してきたものの、ネット社会自体がまだまだ成長過程の始まりの段階だったため、情報を得る手段は雑誌とテレビがメイン。SNSの走り的存在のMixi(ミクシィ)が流行っていたのが懐かしい。
今振り返るととんでもなくアナログだった時代。現代はその頃と比べて本当に驚くほどテクノロジーが進化している。このまま加速度的に進化・発達していくと、もしかしたら映画「ターミネーター」シリーズのように機械が人間に反乱を起こし、世界が終わりを迎えるかもしれない…。そんなバカバカしいことを妄想してしまうほど、今の時代はほんの20年前よりもテクノロジーが進化しているのだ。
話を〈NON MERCI〉に戻そう。何でも手軽に手に入り、情報が欲しければGoogleで検索すると一発で解決してしまう2022年に村越氏が立ち上げた〈NON MERCI〉のアイテムは、どこのお店にもオンライン上にも置いていない。かといって今流行りの仮想世界の中にあるわけでももちろんない。何と販売方法は村越氏本人による手売りのみなのだという。先に述べた利便性の追求の真逆を行くスーパーアナログな販売方法に「マジで?」と心の中でつぶやいた後に、「素晴らしい!」と拍手喝采した。

NON MERCI
NON MERCI

NON MERCI
NON MERCI

自分のブランドへの愛情を純粋な形で感じられる〈NON MERCI〉

このパンクな姿勢は〈ブラックミーンズ〉譲りなのか?それとも〈ベルベルジン〉の偉い人から「それでやってみろ」と指令があったのか?と邪推してしまうほどアナログ極まりない手法。手売りなんて八百屋じゃないんだから…という声も聞こえてきそうだ。しかし、村越氏は至って真面目。公式インスタグラムを拝見すると、こんな思いが書かれていた。
NON MERCIは、おれが売るおれの欲しいものだ。おれがやりたいことを、おれがやりたい人達と共に形にする。そしてそれをお客様に共感してもらうことを目的としたプロジェクトだ。
できるだけ多くの皆さんに「着る」という形でプロジェクトに参加していただき、共感してもらえたらとても嬉しいです。
洋服作りへの純粋な想いと、手に取ってくれる人への愛情が垣間見えるこの言葉に村越氏の〈NON MERCI〉への愛情が出ている。手売りという販売方法は話題作りを狙ったものではなく、スモールスタートした大切なブランドだからこそゆっくり丁寧に育てていきたいという姿勢の現れなのではないだろうか。
先日発表されたハンドメイド感のあるミリタリージャケット(ECWCS Level 7をベースにしたもの)に張り付けられているメガホンの形をしたロゴ、拡声器のモチーフには「販売員すべてにとってのアイコンである」という想いが込められているのだという。90年代のストリートファッションのテイストも少し感じられるリメイクアイテムは、ファッションにリアルを求める人、ワンアンドオンリーを求める人、洋服とカルチャーのミックスを好む人など、様々なタイプに響きそうだ。〈ブラックミーンズ〉のようなモノ作りを得意とするブランドの中にいる人であれば、より効率的な販売方法のノウハウは当然知っているだろうし、やろうと思えば販路の拡大も通常よりも楽にできるはず。それなのに非効率的なデザイナー本人による手売りでブランドをスタートしたということが、インスタントな現代とあまりにかけ離れていて清々しい。
本稿で紹介しているジャケット以外にも継続的にアイテムはリリースされる予定。ブランドの最新のニュースやインフォメーションは村越氏個人のインスタグラム上で発表されるそうなので、気になる方はフォローしておこう。
先日ローンチされ即完売したLAST ORGY 2 の記事も要チェック。
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