無限の未来を感じさせる、AI がデザインした G-Star RAW のデニムケープ
AI がデザインしたコンセプトモデルは既成概念を完全に打ち壊すほど大胆かつアバンギャルドだった（日本製セルヴィッジデニムを使用している点もポイント）。
伝統だけでは時代に取り残される
ライダースジャケットやミリタリーウェアと同様、デニムを素材としたジャケットやジーンズは誕生からどれだけ年月を重ねてもオーセンティックなデザインこそが至高だと評価されている。その頑固さが固定ファンを常に獲得してきたとも言えるし、反対に最新のファッショントレンドという枠組みにおいては蚊帳の外へと追いやられることも度々あったことも事実だ。伝統的なデニムウェアがファッションの最先端であった時代ははるか昔のこと。James Dean（ジェームズ・ディーン）が映画の世界でアイコニックな着こなしを披露した時や、1990年代に日本で空前の熱狂を巻き起こしたヴィンテージジーンズブームの頃がもっとも記憶に残りやすい「昔ながらのジーンズが主役だった時代」だろう。
伝統的な5ポケットジーンズが決して色褪せない永久不滅の定番品であることは重々承知しているし、結局最後はそこに行きつくであろうことも恐らく間違いない。とはいえ、ひとつの価値観にだけ縋りついていてはどの分野においても明るい未来はないことも確かだ。〈G-Star RAW（ジースター ロウ）〉が発表した実験的なコレクションは、まさに2020年代らしい AI がデザインしたもの。既成概念や安定に依存しない挑戦的なモノ作りに挑む〈G-Star RAW〉のデニムケープを眺めながら、30年後のファッションについて思いを馳せてみよう。
〈G-Star RAW〉史上初の AI によるデザイン
1989年にオランダ・アムステルダムにて設立した〈G-Star RAW〉は、これまでも既存の価値観に捉われない斬新なデザインを数多く生み出してきた。多くのデニムブランドがヴィンテージデニムのレプリカに躍起になる中、画期的なカットやパターンでファッション的なアプローチにこだわる同ブランドは、「ファッションとしてのデニム」を追求するブランドの先駆者的存在と言っていいだろう。
そんな〈G-Star RAW〉がこれまでと同様に新たなデニムデザインを模索していた中で具現化した最新のプロダクトが、ブランド史上初となる AI を使ったコレクション。デニム業界においても世界初の可能性が高い完全 AI プロジェクトは、生身の人間からのインプットをイメージ化するプログラム「MidJourney（ミッドジャーニー）」の力を借りるところから始まったという。最新のソフトウェアを駆使しながら、同ブランドのデザインチームが生み出したアイデアを反映したデザインを最新の AI が具現化する…という、まるで SF の世界のような成り立ち。素材自体はクオリティの高い日本製セルヴィッジデニムを使っているという、デジタルとアナログの極端なコントラストも興味深い。
そんな〈G-Star RAW〉がこれまでと同様に新たなデニムデザインを模索していた中で具現化した最新のプロダクトが、ブランド史上初となる AI を使ったコレクション。デニム業界においても世界初の可能性が高い完全 AI プロジェクトは、生身の人間からのインプットをイメージ化するプログラム「MidJourney（ミッドジャーニー）」の力を借りるところから始まったという。最新のソフトウェアを駆使しながら、同ブランドのデザインチームが生み出したアイデアを反映したデザインを最新の AI が具現化する…という、まるで SF の世界のような成り立ち。素材自体はクオリティの高い日本製セルヴィッジデニムを使っているという、デジタルとアナログの極端なコントラストも興味深い。
これはもしかしたら未来を占うプロトタイプかもしれない
これらの摩訶不思議なデザインのデニムケープが、AI プロジェクトで完成した第一号。デザインチームが AI に対して「デニム、モデル着用、有機的な形状、ミニマル、対比、先進的で斬新な鎧、テックウェアファッション、白背景、4K」という情報を与え生まれたデザインなのだという。とてつもなく奇想天外で常識破りのデザインは、確かに人知を超えている。どことなく日本の伝統的な鎧や作務衣なども思い起こさせるデザインなのは、デザインチームが AI に与えた情報の中に「先進的で斬新な鎧」というキーワードがあるからだろう（もしこのキーワードがなければまったく違うデザインになる可能性が非常に高く、それはそれで興味深い）。
幾重にも重ねられたデニムの層が重層的で重みのある佇まいを見せながら、実は羽根のように軽いのでは…？と想像させる不思議さも併せ持っている。
幾重にも重ねられたデニムの層が重層的で重みのある佇まいを見せながら、実は羽根のように軽いのでは…？と想像させる不思議さも併せ持っている。
本プロジェクトの制作に関係したチームメンバーは「難易度はかなり高かった」と語っている。AI が生み出した多層的なレイヤーがどうつながっているか、各ディテールがどこで始まってどこまで続いているのかを見極めるのにかなりの時間を費やしたという。本コレクションはバーチャル的なモックアップの完成が目的ではなく、あくまでも実際に洋服を完成させることだったため、どれほど奇抜なデザインであっても系統立てて作りこむ必要がある。そのためにまずはジャケットをベンチマーク的な立ち位置として製作したようだ。
〈G-Star RAW〉のデザインチームが「人間では決して思いつかないようなデザイン」と語る本コレクションは、最先端のテクノロジーを積極的に使いながら、素材やディテール、デザイン自体のアイデアなどに非常にアナログな側面が隠されており、それがクラシックなデニムを愛する私たちの心にも訴えかけてくる。ファッション業界に大きな革命をもたらす可能性がある AI によるデニムウェアのデザインは、ともすれば100年以上前のデザインに凝り固まってしまいがちな私たちをハッとさせる強烈な個性があると言えないだろうか。かなり奇抜なデザインだが、このコレクションを荒唐無稽と笑うことは誰もできないはずだ。これは SF映画に登場するバーチャル的な衣装ではなく、現実に作られたプロトタイプであり、今後の未来を予見するターニングポイントになり得るのだから。
ITEM CREDIT
- G-Star RAW：Denim Cape
