@knock_international Interview About a Real Osaka

【インタビュー】@knock_international さんに訊く、ディープで生々しい大阪の魅力

誰もが食い倒れるほど美味しい食べ物や独特の文化などで形成される街、大阪のエピソードから、音楽やファッション観まで。大阪に生まれ、大阪で生活する @knock_international さんが語るリアルな大阪には、観光で訪れるだけでは決して体験できない奥深い魅力が潜んでいた。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : @knock_international

大阪生まれ・大阪育ち、生粋の大阪人に訊くディープな大阪

LIVE IN RUGGED 読者の皆様は、大阪という街に対してどのような印象をお持ちだろうか。また、大阪という街についてどの程度ご存じだろうか。
生まれが北海道で、幼少期に宮城県に引っ越し、転職を機に東京に移住した筆者は、恥ずかしながら大阪という街に対してステレオタイプな知識しか持っていない。安くて美味しいご飯。日本屈指の繁華街であり、賑やかな大都会だが、ややデンジャラスな空気感。大阪弁のおっちゃんが闊歩し、同じく大阪弁のきれいなお姉さんが元気に生きる街。こういった印象があることを生粋の関西人に伝えると、もしかしたら一喝されるかもしれない。しかし、大阪になじみのない方ほど似たようなイメージを持たれているのではないだろうか。東京と肩を並べるほどの大都市で、新幹線に乗れば2時間半ほどで移動できるのに、実は大阪のことをあまり知らない自分がいる。
となれば、大阪を知り尽くしたマイスターに色々なお話を伺いたい。その想いを叶えてくださったのは、本稿にてご登場いただく @knock_international さんだ。個人的にインスタグラムでフォローさせていただいている @knock_international さんは、大阪生まれ・大阪育ち、生粋の大阪人。インスタグラムでは大阪の食や街、音楽、ファッション、猫のことなど様々なことを発信されている。筆者とは特に音楽やファッション、そしてお互い大の猫好きという共通点がある。 @knock_international さんのポストやストーリーズに対して「いいね!」をした数は、もしかしたら数百回近いかもしれない。「大阪のディープな魅力を教えてください!」という不躾なお願いに快く応じてくださった @knock_international さんに心からお礼申し上げたい。
大阪について詳しくご存じの方も、本場のたこ焼きを一度食べてみたいなぁというくらいの大阪初心者(?)の方も、このインタビューにてリアルでディープな大阪の一端をご体験いただきたい。ジャングルへようこそ!

串カツ、ホルモン、お好み焼き…
食い倒れの街、大阪で暮らす @knock_international さんおすすめの飲食店

――― 実は @knock_international さんにずっとインタビューしたいと思っていたので、今日は夢が叶いました。まず基本的なところからお訊きしたいのですが、ご出身は大阪ですか?
出身は大阪南部の堺市です。現在は大阪市西成区在住。名もなき庶民の日常を発信しております。
――― 「京都の着倒れ、大阪の食い倒れ」と古くから言われている通り、大阪と食文化は切っても切り離せないものがあると思います。日々大阪の美味しいものを堪能されている @knock_international さんにとって、大阪の食べ物の魅力はどんなところにありますか?
ベタですけど店先のたこ焼きやお好み焼き、じゃりんこチエ的なホルモン鉄板焼きなどの買い食いスタイルですかね?ラフで大雑把な庶民的な物が好きです。ずいぶん値段も上がって、もはや子供のオヤツではありませんが…。
――― 僕自身は2回ほどしか大阪に行ったことがないため、経験値が少なすぎて申し訳ないのですが…どこで食事をしてもびっくりするくらい安くてめちゃくちゃ美味しかったんですよ。@knock_international さんが特におすすめしたい飲食店を教えていただけますか。
お薦めの飲食店!これは著名ブロガーや YouTuber、インフルエンサーなんかが日々大量に情報発信しておりますが…まったくの私的リコメンドとしまして、串カツなら新世界にある「花道」。よく聞く大メジャー店とは揚げ方が違って、串カツというよりフライですね。しかしコレがクセになります。そしてリーズナブル!
ホルモン鍋なら、同じく新世界にある「たつ屋」ですね。オーソドックスなホルモンキムチ鍋で、シンプルかつ普通。でも、普通の奥深さを年々感じさせてくれます。家か?と思わせる落ち着く空間も魅力です!
動物園前商店街の「ホルモン中ちゃん」も外せないですね。昨今、新世界~西成はホルモン焼き屋が乱立しているので、どの店をセレクトするか迷う方も多いでしょう。ここが他店と一線を画すのはタレの濃さと「焼き」なんですよ!
そして、お好み焼きなら萩ノ茶屋の「ふじや」でしょうか。ミナミの某有名店から独立した店主がやっています。すべて旨いですね~。大阪メジャー店より300円ほど安い価格設定で満足間違いなしかと。いずれのお店も YouTube や SNS の喧騒から一歩距離を置いてるのがエエんですよね!

@knock_international Interview About a Real Osaka
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大阪の中でも特にディープな地区、西成について

――― 個人的に、B級グルメこそが至高ではないかと常々思っています。@knock_international さんが思う B級グルメの魅力について語っていただけますか?
あくまで庶民のためのモノ。うちの近所におばちゃんが店先でホルモンを焼いておっちゃん達が缶ビール、缶酎ハイで路上で一杯やる店があるんですが、令和にあって昭和そのものの光景は文化遺産やなぁ~と。
――― (上野のアメ横近辺の情景が頭に浮かびほっこりする筆者)そういうのたまりませんねぇ。これまた思いっきり初心者的な質問ですが、「キタ」と「ミナミ」で遊ぶならどちらがおすすめなんでしょうか?
これは住んでる沿線によるかと思います。私は南海電鉄沿線だったんで終点が難波。高校も南海から近鉄電車で通学してたもんで学校帰りに難波で寄り道。アメリカ村で服屋やレコード屋を覗いたり、道頓堀から千日前を流して帰路に着くと。どちらがお勧めか?と訊かれたら…ベタな表現ですがお洒落で洗練されてる梅田・キタか、エネルギッシュな難波・ミナミか?の好みによりますね。でも、難波は外国人観光客が多く訪れるようになってから様変わりしましたね…。
――― ちなみに西成は「治安が悪い」と言われることが多く、大阪をよく知らない人間にとっては色々な意味でディープな場所というイメージがあります。西成ってぶっちゃけどんな街なのでしょうか?
2023年現在、もはや西成は危険な街ではなくなりました!橋下徹大阪府知事による大阪維新体制になってから2008年以降は、年々街のクリーン化が進んでいます。加えてこの2年くらいは無数の YouTuber による西成紹介で、カップル、女子グループ、果ては親子連れまでが訪れる街に…。
私がバンド活動をしてた1990年頃、西成あいりんセンター(西成労働福祉センター)に日雇い労働に行ってたんですが、その当時はまだ危険な匂いがありましたね。いわゆる路上での違法薬物も販売してたし、あからさまな反社な方々も跋扈していました。労働者達にも活気が溢れ、良くも悪くもカオスそのもの!現状と比較してどうか…そりゃ平和に越したことはないですけど「西成を盛りあげる!」というスローガンはソレちょっと違うんじゃないの?と思ってる地元の方々も多いのでは?と個人的に思ってますね。
――― やっぱり現在は危険な街ではなくなっていたのですね。ただ、女子グループや親子連れも訪れるくらい平和になったというのは結構驚きです。というのも、やっぱり危険なイメージが強いからなのですが。盛り場って危険さがあるからこそ魅力もある一面があったりすると思うんですよね。「西成を盛りあげる!」というスローガンに違和感を感じていらっしゃるのは、何でもかんでもこぎれいにしたり、画一化するのはどうなの?という気持ちがあるのではないでしょうか?
やはり良くも悪くも西成は型にはまらない、自由に生きたいという者が流れ着く街なんですよ。昨今の悪ノリYouTuberや某SNSグループが西成(あいりん地区)を過度にエンタメ化する…それを見た近郊の人間がやって来てバカ騒ぎしてるのを見てると苦々しい気持ちになりますね~。西成なら飲んだくれても良いという感じで、行儀が悪い!そう思ってる商店主も多いのですよ。
――― なるほど。例えば新宿・歌舞伎町だと昔は近づいたらヤバそうな場所があって、見るからに危険な空気がありました。かつての西成もかなりデンジャラスな場所だったのではと思いますが、何かディープなエピソードはありますか?
2010年代初頭にシノギ屋~ノックアウト強盗というのが暗躍してました。南海電車の新今宮駅から萩ノ茶屋駅の高架下でホームレスや通行人を殴打して金品を盗み身ぐるみ剥ぐという荒っぽい連中です。2度ほど早朝に血塗れボロボロのホームレス風の方を見かけました…。その時期は仕事帰りが遅くなった時は高架下には近づかず、大通りの明るい方を歩いてましたよ。イイ年の大人が!現在は至るところに防犯カメラが設置されててずいぶんと安全ではあります。

@knock_international Interview About a Real Osaka
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パンク、メタル、ヒップホップ、レゲエが等しく好き

――― @knock_international さんには音楽に関してもディープなお話をたっぷり伺いたいです。初めて音楽が好きになったのは何歳頃でしたか?最初に好きになったバンドやミュージシャン、曲について教えてください。
音楽の聴き始めは…小学校高学年の頃は普通に「ザ・ベストテン」とかを見て歌謡曲とかニューミュージックなんかが好きでしたが、1980年の冬、中1の時にアナーキーのデビューに衝撃を受けました!
と言っても当時は全国的に空前のヤンキーブーム。亜無亜危異と横浜銀蝿は不良のアンセム?って感じで聴いていました。しかしアナーキーから遡ってSex Pistols(セックスピストルズ)とThe Clash(ザ・クラッシュ)を知り、PUNK ROCKって何?と調べ出し、82年にはハードコアパンクにハマるという…。このパターンの同世代の方々、凄くたくさんいらっしゃるはずです!そして日本のハードコアパンク黎明期を目撃・体験するという濃い高校時代でしたよ。
――― ロック好きと一言で言っても、例えばグランジが好きな人はハードロックはあんまり…というタイプも結構いますよね。それは全然悪いことではないんですけど、@knock_international さんはジャンル関係なく聴きまくっている印象があります。特に好きなジャンルってありますか?
パンク、メタル、ヒップホップ、レゲエを等しく平均して好きですね。パンクとレゲエが好き、パンクとヒップホップ好き、ヒップホップとレゲエ好きは多いかと思いますが、レゲエとメタル好きはあまり居ないような…。しかし自分的にはすべて REBEL MUSIC としてカッコ良く感じるのです!いまだに!
――― 確かにレゲエとメタルを等しく好きな人には会ったことがないです(笑)ちなみにオールタイムフェイバリットのバンドは何でしょうか?
The Clash(ザ・クラッシュ)、Motörhead(モーターヘッド)、Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)が永遠です!
ザ・クラッシュはパンクの枠にとらわれず作品ごとに挑戦する姿勢が素晴らしいです。ザ・クラッシュからレゲエに興味を持ちダブを知ったというご同輩も多いのでは?
モーターヘッドはレミー・キルミスター、エディー・クラーク、アニマル・テイラーの黄金トリオ時代がやはり好きでたまりませんが、その後も30年余り一切ブレずに爆音ロックンロールを聴かせてくれました!凄い!
ビースティーのデビューも衝撃でしたね。白人がラップ?しかも声がパンクの声そのもの!1stアルバムは今聴いてもまったく色褪せません。
――― 僕もモーターヘッド大好きでいまだにライブ盤などを聴いてぶっ飛んでいます(笑)
モーターヘッドとレミー・キルミスターはジャンルを超えて色々なミュージシャンから心底リスペクトされている伝説的存在で、REBEL の象徴だったりもするじゃないですか。やっぱり音楽自体が凄いので同じアルバムを何百回も繰り返し聴いてしまうんですけど、大西さんは最近のバンドやミュージシャンでお気に入りの人たちはいますか?
これがですね~まったくチェックできていません…。ヒップホップも2010年代以降はまったく分かりません!完全に過去に生きております(笑)
――― 同じく、昔好きになったバンドを繰り返し聴いています(笑)ヒップホップの好きなところや好きなラッパーについて教えていただけますか?
86年に Run-D.M.C.(ラン・ディーエムシー)の「WALK THIS WAY」カバーを MTVで観てブッ飛んだわけですが…いわゆるオールドスクール、ブレイクダンスなんかの存在は知っていましたがピンと来ず。やはりDef Jam Recordings(デフ・ジャム・レコーディングス)初期の LL Cool J(エルエルクールジェイ)、ビースティ・ボーイズ、Public Enemy(パブリック・エナミー)などのロック以上のロックぶり、ラウドさに魅了されました!
パンクと同じくヒップホップのルーツであるファンクも掘り下げて行くという90年代初期を過ごしましたね。ヒップホップのメッセージは黒人版のパンクなんやな~と思います。

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古着ミックスのスタイルを中心に、スニーカーや〈Rolex〉の時計なども愛用中
音楽から影響も受けつつ、自分のスタイルを楽しむ

――― ファッションはどんなスタイルがお好きですか?
確か中2の頃、1980年に初めてアメリカ村に行きまして、露店やフリーマーケット、古着屋の存在を知りました。高校の頃には古着の〈Levi’s®(リーバイス®)501® を穿いて米軍のシャツを買ったりしていたので、アメカジという単語はまだなかったけどソッチ志向でしたね。
また、90年代にはビースティ・ボーイズにとても影響を受けまして、スケーター的なスタイルを好んでいました。今もワーク&アウトドア&ミリタリーの古着ミックスから、ややルーズでプチプラなスタイルを年甲斐もなくやっています。定番ですが、〈Carhartt(カーハート)〉、〈Patagonia(パタゴニア)〉、〈Columbia(コロンビア)〉、〈L.L.Bean(エルエルビーン)〉、OLD GAP、〈Nike(ナイキ)〉、〈adidas(アディダス)〉、〈VANS(ヴァンズ)〉などは今もお気に入りです。
――― スケーターと言えば世の中的には〈Supreme〉が非常に人気がありますが、大西さんから見て〈Supreme〉というブランドはどう思いますか?
90年代のブランド発足当時はパーカーやTシャツ、リュックなど所有していましたし、クールやなと思っていましたが…ここ近年はどうでしょうね。サイジングが好みでないのと、大阪ではヤンキーみたいな連中が好んでいるのもあって、ちょっと違う感じになったかもしれませんね。そして大半はコピー商品という…。なので自分は〈STÜSSY(ステューシー)〉派ですかね。
――― 90年代のブランド設立当時から〈シュプリーム〉を着用されていたのは凄いですね!僕はその時代はまだ洋服にあまり興味がない年代だったので、羨ましいです。スニーカーをよく履かれていると思いますが、@knock_international さんの定番的なモデルは何ですか?
中学の頃はバスケ部で〈アディダス〉スーパースターや TOP TEN を愛用。その名残とビースティ・ボーイズの影響で〈アディダス〉の CAMPUS を今もぼちぼち集めています。
〈ナイキ〉だと Air Force 1 より DUNK の方がフィットして好みですね!あとは〈VANS〉のチャッカをちょいちょい収集してます~。
――― 「これは死ぬまで愛用したい」と思うほど大切にしているファッションアイテムはありますか?
自分は物持ちが良いようで、アウター類は20~30年選手がけっこうあります。ワーク・アウトドアなど流行とあまり関係ないモノが多いんですよ。
――― 素晴らしいですね!それでは、「これはいつか手に入れたい」と憧れているアイテムはありますか?
ROLEX(ロレックス)〉の最上機種は欲しいかな~。ヴィンテージの Daytona(デイトナ)や Explorer II(エクスプローラーII)あたりとか。現在は Air King(エアキング)を20年ほど愛用してますが、自分にはちょうどいいかな?と思っています。

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たくましく生きる西成キャッツに癒される

――― 音楽的趣味もさることながら、僕と @knock_international さんにはネコ好きという共通点があります。インスタグラムの投稿やストーリーズには頻繁に大阪のストリートの中で生きるネコが登場していますよね。 @knock_international さんが思うネコの好きなところ、魅力ってどんなところにありますか?
亡き母親がネコ好きな人で、実家には常に5匹位のネコがいました。西成に引っ越す時にシャムMIXのモモちゃんという子を連れて来まして、ネコと2人暮らしの安寧な日々でした。が、10年ほど前にネコ特有の腎臓病で亡くなってしまって…。
野良猫や地域猫には厳しいご意見も見られる昨今ですが…基本荒んだ空気の西成の街でもオヤジたちはネコを前にすると顔をほころばしてますよ!(笑)たくましく生きる西成キャッツの姿をこれからもボチボチ届けていきたいですね。

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スタイルのある男はかっこいい

@knock_international さんのインタビュー、お楽しみいただけただろうか?大阪自体の魅力はもちろん、日本屈指の危険な街と言われることもある西成のディープなエピソードはなかなか知る機会がなく、まだ訪れたことのない筆者はお話を伺っていてやや興奮してしまった。また、ジャンルを問わず様々な音楽に触れる姿勢には真の音楽好きだけが持つ強い愛を感じる。日本人はどうしても何かしらのジャンルに分けたがるクセがあるけれど、かっこいい音楽は系統を問わずかっこいいのだ。そして、筆者も音楽から強い影響を受けたファッションを長く愛用していたので、その辺りにも強いシンパシーを感じた次第。多くのファッション好きの男性が共感できるのではないだろうか。
ディープで生々しい大阪の街の風景や食べ物、可愛らしすぎるネコが数多く登場する @knock_international さんのインスタグラムはこちらをチェック。なお、音楽ネタメインのアカウントもフォロー必至である。