モータースポーツレジェンドが実際に愛用していた 2トーンカラーのロレックス デイトナ Ref.6239
ヨーロッパとアメリカの主要サーキットで実際に身に着けられていた超希少な2トーンカラーの〈ROLEX〉DAYTONA Ref.6239
男が本能的に惹かれる腕時計
“男の夢”と聞いて何を思い浮かべるだろうか。広々としたマイホーム?美女にモテモテになること?まっとうなものから下世話なものまで人の数だけ幅が広そうだ。フラットに考えて、男の本能に訴えかけるものは何かを考えた時に、真っ先に浮かんだのが車だった。車離れが叫ばれて久しいとはいえ、きっと誰しも子供の頃はミニカーで遊び、一度くらいはプラモデルを作ったことがあるはず。なぜ自我に目覚めていない幼少時に車を好きになるのかは永遠の謎だが、特にスポーツカーやレーシングカーは本能レベルで惹かれる魔力が確かにある。そして大人になって腕時計に興味を持つと、車やモータースポーツが好きな男は自然とクロノグラフが大好きになる。文字盤に並ぶインダイヤルの配置やベゼルに刻まれたタキメーターはレーシングカーのダッシュボードの世界観を見事に反映しており、ただ眺めているだけで胸が躍るはず。例え実際のレース中はクロノグラフで計測することがないとしても。
クロノグラフの王様として君臨する〈ROLEX(ロレックス)〉DAYTONA(デイトナ)がいかに腕時計好きから愛されているかの説明は今さら不要だろう。ただし、本稿で紹介する2トーンカラーのRef.6239は、ヴィンテージ・デイトナの中でも飛び切り魅力的なディテールとヒストリーを持っている。
モータースポーツ界のレジェンド、ゲイリー・カミングスが世界中のサーキットで着用
このデイトナは、モータースポーツ界のレジェンド、Gary Cummings(ゲイリー・カミングス)が公私を問わず愛用していた。ゲイリー・カミングスは長年さまざまなレースチームのクルーチーフ兼レースエンジニアとして活躍する人物で、これまで数多くのレーサーを指導してきた。元F1ドライバーのJochen Mass(ヨッヘン・マス)やRoland Ratzenberger(ローランド・ラッツェンバーガー)、INDY 500(インディ500)で4度の優勝(最多タイ記録保持者)を果たしたRick Mears(リック・メアーズ)、インディカーシリーズの偉大なレジェンドであり、アメリカでもっとも成功したレーサー兼チームオーナーであるA.J.フォイトなど、錚々たる顔ぶれだ。カミングスはル・マン24時間レースで12回、1993年のパリ/ダカール・ラリーでは、KIAファクトリーチームのチームマネージャーとしてサハラ砂漠を横断する際にもこの2トーンカラーのデイトナを着用していた。サーキットではクロノグラフを身に着ける関係者が多いけれど、カミングスが身に着けていた2トーンのデイトナはさぞかし羨ましがられたのではないだろうか。
また、アメリカのGrand-Am(グランダム)やNASCAR(ナスカー)、TUDOR SERIES(チューダー シリーズ)でマネージャーを務めていた際も、主要なレーストラックのすべてで着用していたという。モータースポーツ用クロノグラフとして誕生した〈ロレックス〉デイトナが、実際に大陸をまたいでヨーロッパからアメリカまで伝説的なサーキットを旅してきた。その事実も本モデルの重要なポイントだ。
最初の所有者 ハル・サールマンが〈ロレックス〉に2トーン仕様に変更を依頼
ちなみにカミングスはこのデイトナをブティックで購入したわけではなく、Hal Sahlman(ハル・サールマン)から贈られた。ハル・サールマンは20世紀半ばの著名なアメリカのスピードボートおよびスポーツカーレーサーで、水上および陸上レースの両方で輝かしい実績を残した人物。1975年に水上世界速度記録を記録した際に着用していたと考えられており、本モデルはレーストラックだけではなく水上のモーターレースの世界も経験したということだ。
それでは、このユニークな2トーンカラーはデフォルトの仕様だったのだろうか?歴史をひも解くと、サールマンが1960年代に〈ロレックス〉からオールステンレススティールのRef.6239としてこの時計を受け取った際、2トーンカラーへの変更を依頼したと考えられている。ベゼルを現行のものに交換し、ブレスレットをアメリカ製の2トーンジュビリーブレスレットに交換。たったそれだけのことだが、世にも珍しく最高にクールなデイトナが完成した。それ以来、カミングスの手に渡ったあともこの仕様のまま継続されている。
シルバー×ゴールドカラーの美しい調和
ディテールをチェックすると、オリジナルパーツを完全に維持しているわけではないものの、当時の空気感をしっかりと備えていることが分かる。秒針は先端がやや長めの白い三角形のものに交換されているが、ベゼルは当時のままのマーク1で、ゴールドの外輪が付いている(これはゴールドのRef.6241、6262、6263にも適合)。ベゼル単体でも300万円近い価値を持つ希少なパーツだ。ケースは軽く研磨されているものの良好なコンディションを保っている。そしてなんといっても文字盤が素晴らしい。夜行トリチウムがベゼルとブレスレットのゴールドと見事に調和しており、美しいコントラストを描いていることが分かるはず。ブレスレットは先に述べたようにアメリカ製のジュビリータイプで、古き良きオーバルリンク。ちなみにケースには1.65Mのシリアルナンバーがあることから、1967年製の可能性が高い。カミングスは1980年代に2回〈ロレックス〉にメンテナンスに出したようだ。箱と書類は失われているが、最近メンテナンス済みで、5気圧防水テストにも合格している。
モータースポーツ黄金期に実際にサーキットで使用され、数多くのレースレジェンドと関わりがあるこのデイトナは、掛け値なしのレアモデル。WIND VINTAGE 公式オンラインサイトで69,000ドルにて販売されていたが、残念ながらソールドアウトになってしまった。同じ個体を手に入れることは難しいので、せめて美しい写真を堪能しよう。
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