究極の自分へのクリスマスギフト – ロレックス・デイトナ・ポール・ニューマン・ブラウンアイ

もしも銀行口座に10億円くらいあって、何でも好きなモノを買うことができたら…こんなバカげた妄想は物欲魔であれば一度はしたことがあるはず。1年に1度のクリスマス、金額に糸目を付けずに自分へのギフトを買うとしたら、例えばこんな腕時計はどうだろう。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : monochrome-watches

レアの中のレア。腕時計好きが喉から手が出るほど欲しい「ブラウンアイ」

今日のヴィンテージ・ロレックスの異常なほどの盛り上がりに一番貢献したモデルは間違いなくデイトナ・ポール・ニューマンモデルだ。10年単位で見ると相場は10倍近い値段に跳ね上がったばかりか、明らかに1年前よりも今の方が高い。もともとヴィンテージ・ロレックスは世界的に人気が高いモデルが多いものの、ポール・ニューマンモデルのバブル期のような人気具合は凄まじいの一言。コアな時計ファンからは「今が異常」という声が聞こえるし、実際数年後に相場が落ち着いている可能性も否定できないけど、それにしたって異常なほど大人気。
まさにヴィンテージ・ロレックスの頂点に君臨するポール・ニューマンモデルの中で、更に希少価値の高い(そして投資価値も高い)個体は何だろう。そして、もし自分の銀行口座に10億円眠っていて、勢いに任せて買いたいモデルは何だろう。この無意味なくせにとてつもなく楽しい妄想の候補に挙がったのが、デイトナ・ポール・ニューマン・ブラウンアイだった。

経年変化が魅せる「一点物デイトナ」

写真のデイトナは1972年製の6263。ヴィンテージウォッチ市場で現在もっとも高値で落札されるモデルだ。最大の特徴は茶色に経年変化したインダイヤル。通常インダイヤルはブラックカラーなのだが、これは茶色に変色している。まるで目が茶色くなったように見えるから「ブラウンアイ」。ヴィンテージ・ロレックスの世界は意外と単純なネーミングを付ける。
これはいわゆる「トロピカルダイヤル」と呼ばれる類のもの。デイトナに限らず、サブマリーナやエクスプローラーⅠなどでも見られるエイジングモデルだ。変色する原因は様々だが、当時のインダイヤルのラッカーは多少低品質で紫外線や湿気にさらされると文字盤の暗い部分はチョコレートトーンに変色する傾向がある。製品と考えると微妙な類かもしれないが、ヴィンテージウォッチの世界では話は別。美しくエイジングしたモデルは通常のヴィンテージよりも遥かに高額で取引されるのが常なのだ。当然エイジングの仕方も一本一本異なるので、厳密に言うと同じモデルでも一点物として扱われており、その希少性を買われての価値が与えられている。
このポール・ニューマンモデルはオリジナルのボックスを備え、6263の典型的なスクリュープッシャーとベークライトベゼルを備えている。ケース、ブレスレット、ムーブメントが全体的に非常に良い状態にあることも珍しいため、そこも落札金額に大いに影響してくる。
というわけで、もし私が大金持ちで何でも買えるなら、自分へのクリスマスプレゼントはこれを選ぶ可能性が高い。インダイヤルが茶色くなったから何なのよ、というツッコミはもちろん聞こえるはずもない。


まるで最初からそうだったかのように均一にブラウンチェンジしたインダイヤル。変色の程度が強く美しい個体はより高値で取引される。傷のつきやすいベゼルもほぼ無傷。プッシャーやリューズもオリジナルで、例えるならイリオモテヤマネコのような個体。

ムーブメントは名機バルジューCal.727。ひとつひとつの部品に対して面取りが施されており、造形の美しさは格別。Cal.727は20年近くも手巻きデイトナを支えた傑作中の傑作ムーブメントであり、今も世界中にファンが多い。


手巻きデイトナでオリジナルボックスが付属するのは何とも嬉しい。完全にコレクターズアイテムになるので大事にしまっておくのが正解かもしれないが、10億円以上持っている仮定なので、妄想の中の自分は日常使いをしている。

所有欲を完全に満たすポール・ニューマンモデル

想像の域を出ないけど、これくらいレアなポール・ニューマンモデルであれば所有する喜びも半端じゃないはず。高級腕時計を購入すること自体が自己満足の世界なので、その頂点に限りなく近いモデルを手に入れることは、きっと欲望の満たされ具合も頂上クラスだろう。
もし自分が億万長者だったら…くだらない妄想だが、この「もし」は本当に考えるだけで楽しい。

ITEM CREDIT
  • Watch:ROLEX Daytona Paul Newman 6263 Brown eye