日本のデニムシーンを変えた革命ブランド – リゾルト

ヴィンテージレプリカ一辺倒だった日本のデニム業界に変化を促したRESOLUTE(リゾルト)の凄さと魅力を紹介。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : RESOLUTE

洒落者に愛されるリゾルトというブランド

RESOLUTE(リゾルト)ファンはどこか洒落ている人が多い。ジーンズメインの土臭いコーディネイトではなく、全体的に小奇麗で野暮ったさがない。かといって流行り物に飛びつくタイプは少なく、自分の目で吟味して良いモノを身に着けようという、モノに対する向き合い方が他者にも伝わる…そんな人がとても多いように感じる。一体なぜこのブランドの愛用者はこぞって洒落ているのだろうか?


「世界一リゾルトが似合う男」である事実に敬意を表し、オフィシャルサイトから創業者である林 芳亨(はやし・よしゆき)氏の写真を転載させていただく。全体をブルーでまとめたコーディネイトは爽やかの一言。ポロシャツの第一ボタンを留めたり、白い短靴を合わせるあたりに氏のファッションセンスが現れている。

ほぼ青みが抜けたジーンズに合わせるのは濃いブルーのカーディガンと白シャツ、そして白スニーカー。こちらは初夏にうってつけの清涼感溢れるコーディネイトだ。

あのドゥニームを離れて生み出したリゾルトは、新しいスタイルを世の中に定着させた

リゾルトは国産デニム業界で20年以上デザイナーを務めていた林 芳亨氏が創業。林氏は元々DENIME(ドゥニーム)を立ち上げた創業者兼デザイナー。国産レプリカデニムの盛り上がりの立役者の一人だ。ドゥニーム時代は生地はもちろん、糸の開発に至るまでヴィンテージ・リーバイスの再現にこだわりを注ぎ込んだことで(熱狂的なデニムファンには)知られている。生産性が悪く手間が掛かる素材の開発を厭わず、黄金時代のヴィンテージデニムを再現する姿勢は後発のブランドに多大な影響を与えた。まさに国産デニム業界の神のような存在。それが林 芳亨氏なのだ。
その林氏がドゥニームを離れて新たに立ち上げたリゾルトは、ドゥニームとは一線を画すブランドだった。ヴィンテージレプリカを指標とするのではなく、よりファッション寄りの立ち位置。でも作りへのこだわりは他の国産デニムブランドに勝るとも劣らない。そんなありそうでなかった独自のポジションを確立し、デニムファンはもちろん、デニムにそれほど興味がないファッション好きも巻き込んで爆発的に売れた。
そして、林氏自らがジーンズを中心とした新鮮な着こなしを披露したこともファンの増加に繋がる。テーパードした裾をくるぶし丈で穿くスタイルはリゾルトが第一人者。この大人っぽいのに気張らない穿きこなし方は今でこそ誰でも当たり前のようにしているが、当時は賛否両論あったように記憶している。しかし、カッコいいは正義。いつしかこの新しいジーンズの穿き方はすっかり市民権を得て、「オシャレなジーンズの穿き方」として定着した。
ただジーンズを作るのではなく、着こなし方を含めて定番を新たに生み出した功績は非常に大きい。


綺麗めな着こなしにスッと溶け込むジーンズであること。それもリゾルトの得意分野だ。大人っぽいジャケパンスタイルに合わせてもまとまりのよいジーンズは日本のブランドでは珍しい。

もちろんアウトドア系を含めたカジュアル系のコーディネイトにもピッタリ。くるぶし丈で裾上げし、ソックスを含めてオシャレを楽しむスタイルはリゾルトが生み出した。

「たかがジーンズや。洗え」

穿きこなし方やファッション的見地について先行して語ってしまったが、作りへのこだわりも決して忘れてはいけない。リゾルトオリジナルのデニムは織布から染め、縫製、仕上げまでの全生産工程を西日本の中国地方、備後地区で行われている。当然旧式力織機でローペースで織られた生機デニムが使われており、毛羽立ちも強い。穿きこんでいくとよく擦れる場所から徐々に毛羽立ちがなくなっていき、インディゴが削られるように色落ちしていく。セルヴィッジデニム特有のエイジングを素直に味わえるリゾルトのジーンズは色落ちも格別だ。
面白いのは、リゾルトユーザーは根性穿きをせずに比較的頻繁に洗濯をすることだろう。国産デニムを愛用するユーザーの多くが洗濯回数を極端に抑える根性穿きを強行するのに対し、リゾルトユーザーは気にすることなくどんどん洗っているという事実。これは林氏の「たかがジーンズや。洗え」という名言に由来していると思われる。一般的にデニムは穿きこみ頻度に対して洗濯回数が多いと全体的に色が落ち、のっぺりした色合いになってしまう。それを嫌って根性穿きをし、よりコントラストの強いエイジングを誰もが目指している中、リゾルトの愛用者たちはどこ吹く風と言わんばかりに洗ってしまうのだ。結果的に全体がフェイドしたジーンズになっている人も多いが、それも含めてリゾルトらしいのがとても興味深い。
コントラストが強めのジーンズは単体で見ると物凄くカッコいいのだけれど、他の洋服との合わせにくさがあることも事実。ところが「適度に洗う」リゾルトのジーンズは自己主張が少ないため、何にでも合わせられる「洋服としてのジーンズ」に成長していく。リゾルト自身も「トップスとシューズを選ばない、どんなコーディネートにも合わせることができる、いわば道具としてのデニム」を目指していると公言しており、熱心なファンはその意図を汲んで愛用しているということなのだろう。ここにもリゾルトらしさが現れていると思う。


男らしいライダースジャケットもリゾルトのジーンズを合わせるとバイカースタイルではなくどこかヨーロピアンになる不思議。

どこか脱力感すら感じるリラックスしたコーディネイトに自然と溶け込むリゾルトの穿きこんだジーンズ。アイスブルーになるまで穿きこむと愛着もひとしお。林氏の表情も清々しい。

買えるのはたったの4型。それでもファンを魅了し続ける

多くのファッションブランドやデニムブランドがシーズンごとに新作を生み出すのに対し、リゾルトはたった4型のみのラインナップにこだわる。これは林氏の「何年経っても手に入る理想の定番を作り続けたい」という思いがあるから。例えば、初めて購入したリゾルトを数年掛けて愛用し、また同じ型番のモデルを一から穿きこみたいと思っても、いつでも同じモノが手に入るのがリゾルトなのだ。これはファンにとってはとても嬉しいし、安心感につながるだろう。「またこれを最初から育てようかな」と思ってもいつの間にか生産中止になっていたり、仕様が変更されていることが他ブランドではとても多いからだ。
リゾルトの旗艦モデルはリーバイスの通称「66モデル」をモチーフにしたLot.710と、「XXモデル」を再現したLot.711の2型。これらに加えてジッパーフライのLot.712とLot.710の股上を浅くしたLot.713の全4型がラインナップされる。歴史も実績もあるブランドのラインナップとしては異常ともいえるほど少ないが、個人的にはこれは正解だと思った。ベーシックを愛するデニムファンにとって、完成度の高い普遍的なモデルをいつでも穿きたいものだ。
国産デニムブランドとして第一級の作りであること。それでいてスタイリッシュで、オーナーの個性に溶け込む柔軟性があること。リゾルトは古めかしいデニムのヘリテージとファッションが50対50で共存している稀有なブランドなのだ。

ITEM CREDIT
  • RESOLUTE:Lot.710 / Lot.711 / Lot.712 / Lot.713