Simple beauty Tudor Oysterdate

シンプルであることは美しいこと – チューダー・オイスターデイト

10年来の相棒として常に傍にあるチューダー・オイスターデイトは、シンプルなモノだけが持つ控えめな美しさを教えてくれる。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED

シンプルで作りが良いと本当に長く使えることを教えてくれた

「Simple is best」という言葉がある。シンプルであることが一番良いのだ、結局はシンプルなモノに行き着くのだ…とよく言われているし、実際シンプルなモノには傑作が多い。例えばエルメスのシェーヌダンクルやケリーバッグ。優雅で高級感に溢れているけれど、デザイン自体はとてもシンプル。イームズのチェアやボルサリーノのハット、リーバイス501XXなども同じく、シンプルで完成されている。なぜシンプルなモノはそんなに美しいのだろうか?
1970年代に作られたTudor(チューダー)のオイスターデイトは、私が持つ腕時計の中でもっともシンプルなデザイン。手に入れてから10年以上の付き合いになるが、「飽きたな」「似たような他の腕時計が欲しいな」と思ったことは一度もない。他ブランドの同じテイストのモデルを見ても、「オイスターデイトがあるから自分には必要ない」としか思わない。これって凄いことなんじゃないだろうか。
チューダー(かつてはチュードルと呼ばれていた)がロレックスのディフュージョンブランドであることは腕時計好きの間で良く知られているので説明は割愛しよう。オイスターデイトはロレックスの定番モデルであるデイトジャストを彷彿させる意匠で、バーインデックスとデイト表示が付く非常にシンプルなデザインだ。この時代のチューダーはロレックスのパーツを使っていたので、防水性の高いオイスターケースであることも腕時計好きから高く評価されるポイント。そういった作りの面の品質の高さはもちろん私自身も非常に気に入っているのだけれど、一番のお気に入りポイントはやっぱりデザインだと思っている。
約36mmの小振りなケースに収まるごくシンプルな文字盤のデザイン。黒いダイヤルに光沢のあるバーインデックス。丸みのあるデイト表示のフォント。盾がモチーフのロゴ。それらがバランスを取りながら全体的に大人っぽく仕上がっている。
自分にとって初めての本格的な機械式時計だったこともあり、手に入れた時は大人の仲間入りをしたような気分になった(その時点で20代後半に差し掛かっていたので年齢的にはとっくに大人だったけど)。いきなりロレックスを買わずにチューダーを選んだのは自分の中の天の邪鬼な性格のせいかもしれない。10数年前、チューダーは今よりもずっと人気も知名度も低かったので、値段的に買いやすかったというのもある。当時7万円くらいで購入した中古のオイスターデイトはまったくのメンテナンスフリーで、今でも当然現役。古い機械式時計は長く使うと何かしらのトラブルに遭遇する場合が多いが、故障や劣化とは縁知らず。さすが天下のロレックスの兄弟ブランド!作りの良さも相まって、もはや替えの効かない大切な相棒になっている。


現代の腕時計と比べるとずいぶん小振りなケースサイズ。このコンパクトなサイズ感もお気に入りのポイントだ。

ケースはロレックスのオイスターケースを採用。牡蠣の殻のように密閉性が高い構造でできており、ヴィンテージウォッチとしては非常に防水性が高い。


トリッカーズと一緒に。落ち着いた雰囲気の腕時計なのでジャケパンスタイルとの相性は特に抜群。

これ見よがしではない控えめな雰囲気。これを着けているのを見て高価な腕時計を身に着けていると思う人はきっとほとんどいないだろう。それもオイスターデイトの良いところだったりする。

自分に合うシンプルなモノはきっとこれからも長く愛用できる

腕時計に限らず、シンプルなモノは周囲とうまく溶け込み、引き立ててくれる。オイスターデイトはどんな洋服にも合い、必要以上に自己主張することはない。ただただ控えめにそこにあり、無言で時間を刻み続ける。凝ったデザインの腕時計も大好きだし、きっとこれからもいくつか腕時計を購入することがあるだろう。しかし、どんなシーンでもいくつになっても変わらずに身に着けられるのは、もしかしたらオイスターデイトだけかもしれない。
機械式時計はメンテナンスをしてあげれば数十年単位で愛用できるので、この控えめな相棒はできれば私が老人になっても元気に動いていてほしい。シンプルで完成されたデザインだからこそ、リアルに使い続けることを想像できるのだ。

ITEM CREDIT
  • TUDOR:Oysterdate (70’s Vintage)