From Nagano to world Azusa ORTHODOXY

「腕時計はスイス製」と言う人にも知ってほしい、国産にこだわるAzusaの腕時計

信州発の腕時計ブランド「Azusa」の代表モデル、オーソドキシー。徹底的に国産であることにこだわり抜いたジャパンメイドの機械式時計には、作り手の強い信念と思いが宿る。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED
Item : Azusa ORTHODOXY

日本人が日本人のために作るピュアなジャパンウォッチブランド、Azusa

ファッションの世界では日本のブランドが欧米の一流ブランドと肩を並べるレベルで語られることが多い。コム・デ・ギャルソンと川久保玲は本場ヨーロッパのファッション業界でトップデザイナーたちからもリスペクトされているし、ファッションピープルたちから神のように崇められている。また、ジュエリーや革小物を作るブランドもアメリカやヨーロッパで非常に高い評価を得ているブランドがいくつもある。
一方、腕時計の世界ではスイス製時計が圧倒的だ。ドイツやイギリスにも名の知れた人気メーカーはいくつもあるし、ここ日本でもごく限られた大資本のメーカーはファンを多く抱え、成功を収めているものの、売上的にもイメージ的にもスイスメーカーには遠く及ばないのが現実だろう。それでは、腕時計においてはスイス製がベストで、日本製はセイコーやカシオくらいしか選択肢がないのだろうか?
Azusa(アズサ)というブランドに出会う前は、私自身がほぼそのように思っていた。日本の時計メーカーは真面目に作っているけどデザインは退屈で「それなり」の腕時計ばかりなのだろう、と。
Azusaは腕時計のOEM製造も行う株式会社南安精工が手掛けるオリジナルブランド。長年に渡り培ってきた時計製造における高い技術力を活かしながら、日本製の「いいもの」を適正な価格でユーザーに届けることを信念として生まれた。日本人が日本人のために作る純粋な日本製ウォッチメーカーがAzusaということになる。
本日は私自身が所有し、毎日のように愛用しているAzusaの代表モデル、ORTHODOXY(オーソドキシー)にスポットライトを当てながら、魅力を掘り下げていく。


クリーンでフラットな文字盤。オーソドキシーはオン・オフ問わずいつでも着用できるシンプルなデザイン。

立体的なバーインデックス。ケースの厚さは約10mmで、重量と着用感のバランスが素晴らしい。

美しくバランスの良い腕時計なのは、高い技術力で設計が工夫されているから

オーソドキシーはご覧の通り非常にシンプルなデザイン。飽きずに長く着用できるようにという思いから、華美なデザイン性を追求するのではなく、ビジネスシーンでもカジュアルシーンでも分け隔てなく身に着けられることを狙って作られている。私自身はスーツを着用する機会がないものの、ジャケット+シャツのカッチリしたスタイルとの相性はもちろん、カジュアルなデイリーウェアにも何の違和感もなく合わせられると実感。まさにオールマイティーな相棒として、手に入れてからほぼ毎日のように愛用している。
このシンプルさには実は秘密がある。腕時計をスッキリした見た目にするには単純に文字盤上のデザインを簡素にすれば良いというわけではない。複雑な機械式のパーツが無数に組み合わさってできる腕時計を作るには全体のバランスを考慮した設計が欠かせないからだ。
オーソドキシーは開発時に数多くの実験と試作を繰り返し、できる限りシンプルな構造を目指したという。目に見えないパーツに至るまで日本製にこだわり、必要なものは自社で内製化を行う。そして各部品を高精度で加工し、部品交差(パーツとパーツが噛み合うバランスなど)の数値をかなり追い込んだ設計を実現。このこだわりは結果として高い防水性にもつながり、それでいてケースの厚さを10mm程度に収めることに成功した。
ケースや文字盤は腕時計の見た目や印象を決定づける重要な要素だ。また、腕時計としての機能をもっとも感じられる要素でもある。オーソドキシーは39mmというケースサイズ以上に文字盤が広く見え、時刻を視認しやすい。それは時計の見やすさにこだわった設計だからだ。見切りを大きく取ることで文字盤を大きく見せる工夫がされており、同サイズの時計と比較して3mm以上大きく見えるケース構造にしているという。これは着用するとすぐに分かるのだが、確かに文字盤が広々としていて非常に見やすい。だからといって間延びした見た目になっていないのもこの腕時計の凄いところで、大きく見やすいのに39mmというケースサイズよりもコンパクトにまとまっている印象もある。もしゴテゴテとしたデザインだったら実寸よりも大きく主張の強い印象になっているはずだ。39mmという現代の腕時計として大きすぎず小さすぎないケース径と程よい厚みと重量。それを実現するための設計の工夫。それらが完璧にまとまっているからこそ、ユーザーは心地良く身に着けることができるのだ。


日本製のデュアルカーブサファイアガラスに内面無反射コーティングを施すことで光の反射を極力抑え、高い視認性を確保。サファイアガラスなので傷もつきにくい。

ケースバックはスケルトン仕様。ムーブメントがチクタク動く様子が見えるのはオーナーだけの特権だ。「Made in SHINSHU JAPAN」の文字が誇らしげに彫刻される。

高い精度を持つ国産ムーブメントを調整
Made in SHINSHUの彫刻に国産であることの誇りが宿る

腕時計の心臓部となるムーブメントはMIYOTA製のCal.9015を採用。日本製ムーブメントとして高い品質を持つMIYOTAを組立時に精度チェックと精度調整を行う。元々高い精度を持つムーブメントをわざわざ調整するのは、メーカーでは出し切れない時計の状態のチェックと初期精度の安定が目的。手巻き機能付きの自動巻きムーブメントは42時間のパワーリザーブを持ち、+30秒~-10秒というほぼ誤差のない精度を実現している。
文字盤やケースバックに「SHINSHU JAPAN」の文字が彫刻されるのは、ケースなどの外装部品はもちろん、ムーブメントまで長野県内で製造、調整されているから。高い品質を保証し、プライドを持って製造していることの証でもあるのだ。


着用時。39mmのケースサイズは日本人の腕にもピッタリ。女性が少し大きめの腕時計として着用してもカッコいい。

オーソドキシーのベーシックモデルには型押しのカーフベルトと金属性のメッシュベルトが付属する。このメッシュベルトが特に女性から評価が高いことも伝えておきたい。腕時計自体のデザインと併せて褒められることが何度もあった。品がありクラス感が高いメッシュベルトも個人的にとても気に入っている。

スイス製一辺倒ではなく、日本製の品質の高さにも注目してほしい

Azusaが国産にこだわるのは、精密機器事業の製造が海外に流出していることの懸念もあるという。特に1990年代以降、人件費の高騰や円高の影響などで工業製品は安く大量に作る方向に世の中の流れがシフトしてしまい、腕時計製造から撤退する企業も飛躍的に増えた。完全日本製の腕時計を作るメーカーは大手企業くらいしか残っていないという。もちろん良いモノを安価に手に入れられることは消費者にとっては喜ばしい側面もあるものの、高い技術力を持つ企業が消えていく現実を忘れてはならない。
コロナ禍真っ只中の状況に生きる私たちは、安価に大量生産されるモノの背景には日本の良いメーカーが苦しんでいる場面を目にする機会も増えたように思う。安かろう悪かろうのモノ選びではなく、適正な価格で本当に良いモノを作るメーカーが作るプロダクトにもっと目を向けるべきだ。
Azusaのオーソドキシーは控えめながら美しいデザインと、メイドインジャパンならではの品質の高さを楽しむことができる。74,250円(税込)という価格は、クオリティの高さを知っている私から見るとあり得ないほど安い。スイス製のヴィンテージウォッチもいくつか所有しているが、これからもオーソドキシーを高い頻度で着用するだろう。今は日本の腕時計好きをメインに支持されているAzusaの腕時計が、長野県から世界へ向けて知名度を上げる日も遠くないかもしれない。

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