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機械式時計は人生に特別な何かをもたらしてくれる
デジタル全盛の時代だからこそ改めて見直したい機械式時計の魅力。
スマートウォッチ全盛の今の時代でも機械式時計が愛しいのはなぜ?
スマートウォッチが世界を席巻している。2020年上半期には全世界で4,200万台近くのスマートウォッチが出荷された。コロナウイルスで消費活動自体が縮小する中、スマートウォッチグローバル市場は売上で20%程度増え、着実に成長しているという(カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ社による調査を抜粋)。スマートフォンはコロナウイルスの影響で大打撃を受けたそうだが、スマートウォッチはまさに伸び盛り真っ只中。消費者の健康志向が高まりウェアラブル需要が増加したことも一因のようだが、間違いなく今後も成長し続けるマーケットだろう。LIVE IN RUGGEDの読者でも日常的に使用されている方がいらっしゃるのではないだろうか。
デジタル化が加速度的に進む現代において、機械式時計は機能的には役割を終えつつあるかもしれない。時刻を知るという目的はスマートフォンの方が遥かに優れているし、それこそスマートウォッチを身に着ければ万事解決。機械式時計のクロノグラフ機能を日常生活で使いこなす人はほとんどいない。つまり、機械式時計に高精度の機能性を求めること自体が時代遅れになりつつある…というか、もうなっているように感じる。スマートウォッチという次元の違うハイスペックツールが投入された現代において、機械式時計は時代遅れの遺物なのだろうか?
もちろん、その問いに対する答えはNoだ。機械式時計を愛する人がいまだにたくさんいて、今後も決してなくならないであろう理由は、アナログの良さに満ち満ちているから。機械式時計であれば何もかも最高!と言うつもりはないけれど、よく作られた機械式時計には強烈な魅力がある。複雑な機構は人の叡智の結晶だ。何百という小さなパーツがひとつひとつ正確に稼働する様は、見慣れていても「どうしてこんなモノを作れるんだろう…」と不思議な気持ちになる。どんなに小さなパーツであっても1つ壊れると動かなくなってしまうのは、機械式ならではの弱点かもしれないが、ひとつひとつが絶対的に必要な役割を持っていることを人に教えてくれたりもする。腕時計を耳に当ててチクタク音を聞いたり、シースルーバックの裏蓋を見て歯車が噛み合って動く様子を見ていると、何だか腕時計がより愛しく感じるのだ。スマートウォッチで同じことをしてもこんな感情にはならないだろう。
深い愛着を感じられるのは機械式時計ならでは
〈BREITLING(ブライトリング)〉のナビタイマーは機械式クロノグラフを代表する名モデルのひとつ。1950年代初頭に発売されたナビタイマーは、パイロットが業務中に身に着けることを想定して誕生した。超ニッチな職種がターゲットなのは、技術的な開発能力を磨くためには最適だということと、プロフェッショナルから認められることが最大の宣伝になると判断したからだろう。他社のクロノグラフよりも細かい目盛りが入るナビタイマーは、実際に飛行中に簡単な計算ができる。もちろん現代のパイロットたちがヴィンテージウォッチで飛行時間などを計測することはないが、「計測していた」という事実にロマンがあるじゃないか。
そう、機械式時計にはロマンがある。高度な技術力を持つ職人が手作業で組み立てることや、デジタル全盛の時代にアナログな機械を使う行為自体に特別感があるのだ。コンピューターに囲まれた生活を送る中、腕元に機械式時計があるとホッとする。高価な腕時計を手に入れて所有欲を満たされるということではなく、愛着を持って身に着けられるところに機械式時計の尊さがある。
機械式時計は世代を超えてとっておきの宝物になる
利便性を考えると完全にスマートウォッチの圧勝。しかし、お気に入りの機械式時計がひとつあるだけで本当に特別な宝物を手に入れたように感じるものだ。どのメーカーであっても、よくできた腕時計であれば何十年も身に着けられるだろう。もしかしたら、あなたが手に入れて大切にする腕時計が自分の子供や孫に引き継がれて宝物であり続けるかもしれない。スマートウォッチが同じ役割を担えるだろうか?
芸術レベルでスケルトン化されたロレックス・デイトナの記事で機械式時計の美しさを更に体感しよう。
ITEM CREDIT
- BREITLING:1970s Navitimer Ref.7806