This is piece of art La Montoya Daytona

芸術的レベルで作られるカスタマイズ・ロレックス・デイトナ – La Montoya

「邪道」と言われることもあるカスタマイズ・ウォッチ。しかしロレックス・デイトナのカスタムモデル「La Montoya」は批判などどうでも良くなるくらいカッコいい!


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Monochrome

完成された腕時計をわざわざカスタムする意義のあるモデル

腕時計の世界だけではなく、カスタマイズという手法は今も昔も行われてきた。人間が創造的な生き物である限り既製品をカスタムして生まれ変わらせることはごく自然な行為であると思う。粗悪なコピーであれば論外だが、オリジナルへのリスペクトと素晴らしいクオリティが備わっていれば、個人的にはカスタマイズ万歳!というのが本音。ただ、悲しいかなカスタマイズの世界で本当に素晴らしいクオリティに達しているアイテムはそれほど多くはないのも現実だったりする。結局のところメーカーが試行錯誤して生み出したオリジナルが100点だとすると、手を加える(または何かを減らす)ことで減点されてしまうことが多いからだ。これは特に自動車の世界で多く見られる。カスタムカー、チューニングカーを生業にする企業は世界中に存在する。素材がフェラーリであれポルシェであれ、メーカーが作るオリジナルを超えるモデルを作ることはまさに至難の業だ。
腕時計の世界でも世界的に有名なカスタマイズブランドはいくつかあり、時計ファンの間では常に話題になっている。そしてやはり、腕時計の場合も「わざわざカスタムする」意義を感じられるモデルは少ない。本日紹介する「La Montoya」も熱狂的な時計ファンからは賛否両論だろうけど、個人的にはカスタマイズウォッチの中でも特にカッコいいと思ったモデル。デイトナという最高のクロノグラフを生み出したロレックスと、デイトナを素材にまったく新しいカスタムモデルを生み出したArtisans de Geneveへの尊敬の念を込めつつ魅力を紹介したい。


ロレックス・コスモグラフデイトナ Ref.116520が完全にスケルトン化されてた「La Montoya」。本来は見ることができないムーブメントのメカメカしさを正面から堪能できる。

もちろんケースバックもシースルー仕様。「La Montoya」を一緒に開発したレーサーのファン・パブロ・モントーヤの名前やシリアルナンバーが刻まれ、この腕時計が本当にレアで特別なものであることを主張している。

伝説的レーサーと小さな時計工房の魅惑的なコラボレーション

腕時計本体について語る前に、このモデルを生み出したArtisans de Geneve(アーティザンズ・ドゥ・ジュネーブ)と共同開発者であるレーサーのJuan Pablo Montoya(ファン・パブロ・モントーヤ)にクローズアップしよう。
アーティザンズ・ドゥ・ジュネーブは2005年にスイス・ジュネーブに設立された時計工房で、主にロレックスのカスタムウォッチを製作している。生産本数が極端に少ないこともあり、熱心な時計ファンの間でも知る人ぞ知る存在。日本で名前を知る人は相当の時計ファンだろう。アーティザンズ・ドゥ・ジュネーブがロレックスをカスタムする際はTRIBUTE(トリビュート)、LAB(ラボ)、COLLAB(コラボ)の3つのシリーズに分類して製作しており、そのオリジナリティと仕上がりの美しさ、デザイン性の高さが高く評価されている。こういった小さな工房は熱狂的なファンをいかに生み出せるかが生き残るポイント。アーティザンズ・ドゥ・ジュネーブはまだ腕時計の世界でもマニアックな存在かもしれないが、着実に熱いファンを増やしつつあるのだ。
3つのシリーズのひとつ、TRIBUTE(トリビュート)はロレックスの中でも特に人気の高いヴィンテージモデルを復刻したシリーズ。数千万円の価格で売買されるポール・ニューマン・デイトナやミルガウス(Ref.1019)、スーパーレアなアラビアインデックス仕様のサブマリーナ(Ref.5513)などを現行モデルを使って再現。100%完全にオリジナルを再現しているわけではなく、見た目的にごくわずかに変更が加えられているのだが、そのバランス感覚は絶妙だ。ヴィンテージ・ロレックスマニアが求めるルックスと仕様をしっかり理解したうえで敬意を持って再現していることが伝わってくる。
LAB(ラボ)はアーティザンズ・ドゥ・ジュネーブオリジナルのデザインを展開するシリーズ。ロレックスのモデルをベースに「我々だったらどうするか」という考え方で実験的なモデルがラインナップされており、トリビュートシリーズよりも高く評価するファンもいる。例えばアラビアインデックスのサブマリーナ(Ref.5513)の文字盤をカーボンに変更し、ヴィンテージ的なルックスと近未来的イメージを融合させたモデル。ありそうでないデザインは自由度の高い工房ならではと言えるだろう。
COLLAB(コラボ)はその名の通りコラボレーションを意味する。著名やアーティストやスポーツ選手の個人的なリクエストを形にしたり、共同開発したモデルが用意されている。この記事のLa Montoyaはコラボシリーズで、F1やインディーカー、ナスカーで活躍したファン・パブロ・モントーヤと共同開発したモデルである。
ファン・パブロ・モントーヤはコロンビア出身のレーシングドライバー。F1やインディーカーシリーズ、NASCAR、WEC(FIA世界耐久選手権)などで世界的に活躍し、40代半ばの現在でも現役でレーサーを続けている。F1での優勝回数7回、表彰台獲得回数29回、インディ500で2度の優勝を果たすなど輝かしい成績を持つ。アグレッシブな走りと過激な発言は時折物議をかもすものの、ここぞという時にしっかり勝つ勝負強さと卓越したドライビングセンスは超一級。記録にも記憶にも残るドライバーとしてファンもとても多い。
モントーヤは毎年1月にフロリダ州デイトナにあるデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催される「ロレックス24(デイトナ24時間レース)」で3度も優勝経験がある。デイトナ24時間レースは1991年からロレックスが冠スポンサーを務めており、優勝者には刻印入りのデイトナが贈られる。モントーヤ自身デイトナ24時間レースで3度の優勝を果たしたことは感慨深いのだろう。「ロレックス・デイトナに常に情熱を傾けてきた。自分のレース活動のすべてに本当に関係している時計なんだ」と発言している。また、La Montoyaについては「自分が欲しいモノを具体化したものなんだ。これを見た人は、見れば見るほど好きになると思うよ」と語っている。デイトナに熱い情熱を持つ稀代のレーサーの欲求を具現化したロレックス・デイトナ…それがLa Montoyaを支える精神的支柱なのだ。


La Montoyaの共同開発者であるファン・パブロ・モントーヤ。「コロンビアの暴れん坊」と言われることもある熱い走りは今でもファンが多い。世界三大レースのモナコGPとインディ500で優勝経験があり、トリプルクラウンにリーチを掛けている数少ない現役レーサーでもある。

デイトナがレーサー向けの腕時計として開発されたバックボーンを考えると、モントーヤモデルがこのモデルであることは極めて自然だ。レーサーとコラボレーションした腕時計はいくつも存在するが、La Montoyaはその中でも屈指のルックスの良さがある。

スイスの一流時計職人が数百時間を掛けて製作

文字盤がスケルトンになったLa Montoyaはアーティザンズ・ドゥ・ジュネーブのような技術力の高い時計工房であっても研究開発に2年以上もの時間を要したという。スイス全土から100人以上の時計職人が集まり、スケルトン仕様のデイトナを最高のレベルで作り上げた。
タキメーターベゼルは鍛造カーボンブロックで機械加工されたものを採用。カーボンはレーシングカーの各パーツでも使われる素材で、いかにもレーサーとのコラボレーションモデルらしい選択だ。軽く強靭なカーボンは傷が付きやすいベゼル用の素材としても理に適っている。カットアウトされたダイヤルは職人が手作業で製作。各カウンターは個別に手作業で描かれるという。イエロー、ブルー、レッドはモントーヤの出身国であるコロンビアの旗を表している。メカメカしいスケルトン仕様の中で鮮明に映えており、最高にカッコいいじゃないか。
腕時計である以上機械加工されたパーツが多いが、La Montoyaはスイスの時計職人たちによるハンドメイドの仕事も多く入っている。先に述べた各パーツのカットや研磨、組み立て、仕上げなどに多くの手が入り、ひとつの個体に数百時間もの製作時間が掛かるのだ。素材がロレックス・デイトナという超人気モデルであったとしても、これだけのコストを掛けて作る姿勢にアーティザンズ・ドゥ・ジュネーブの強いこだわりが表れている。


ムーブメントはロレックスが自社開発した自動巻きクロノグラフムーブメント、Cal.4130。Ref.116520は2000年に登場し、2016年まで生産されたロングセラーモデルだ。この美しいムーブメントを文字盤からもケースバックからも眺められるのは世界でLa Montoyaだけ。

ケースバックにJuan Pablo Montoyaの刻印が入る。王冠マークやねじ込み式プッシャーはロレックス・デイトナらしさの象徴。カスタマイズメーカーはこういったパーツのロゴを変えてしまうことがあるが、そんな野暮なことをしないところも好感度抜群。


アーティザンズ・ドゥ・ジュネーブはこの特別なデイトナを生み出すにあたり、スケルトン加工の美しさを最大限高めるための工夫をしている。カウンター針をレッド、ブルー、イエローの針に交換するだけではなく、パーツによって研磨方法を変えることで見た目的なコントラストと立体感を出すことに成功した。文字盤を斜めから眺めるとムーブメントとダイヤルの立体的な関係がとても際立っている。

ディテールに徹底的にこだわり、美的感覚も最大限引き出された本当に特別なデイトナ。オリジナルよりもカッコいいと思うかどうかは人それぞれだろうし、ロレックスに対する暴挙だと感じる人もいるかもしれない。ただ、La Montoyaはロレックスで働くデザイナーや職人が見ても「これは凄い!」と感嘆するのではないだろうか?そのくらいのレベルの時計なのは間違いない。

La Montoyaはきっと時代を超えて人々を魅了する

オリジナルへの敬意と革新的なモノ作りへの情熱。本当に凄い腕時計を作ってやろうという強い意欲。La Montoyaからは作り手の強烈なこだわりと情熱的な感情が伝わってくる。技術的に凄まじいのは言うまでもない。それと同じくらい凄いのがモノ作りへの圧倒的な情熱と高い次元のデザインセンスだ。
モントーヤ自身の「見れば見るほど好きになる」という発言通りだと思う。私はこの腕時計を初めて見た時に完全に一目惚れした。そして見れば見るほど更に好きになってしまう。La Montoyaを本当に手に入れようとしたら42,260ユーロ(530万円強)支払わなければならない。1,000万円超えを想像していた自分としては「安い!」と感じてしまったが、皆さんはどうだろうか?実際に買える値段ではないのは間違いないけれど…
しかし、自分が買えないとしても、これほどクールな腕時計がこの世に存在していることに喜びを感じてしまう。La Montoyaは現代的なルックスを持つヒストリカルな腕時計だ。30年後には530万円では買えないのは間違いないだろう。このデイトナにはそんな時代を超えた魅力に満ち溢れている。

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