Raw, rugged and nasty Tudor Submariner

時代を超えたラギッドな美しさがある「薔薇サブ」の魅力を解剖

マニアが血眼で探すウルトラレアなヴィンテージ・ダイバーズの金字塔、〈チューダー〉の「薔薇サブ」にクローズアップ。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : TUDOR

〈ロレックス〉のディフュージョンブランドとして誕生しながら独自路線を確立した〈チューダー〉

〈ROLEX(ロレックス)〉のディフュージョンブランドとして誕生し、数々の名機を生み出してきた〈TUDOR(チューダー)〉。かつては「高価なロレックスの廉価版」のような立ち位置と捉えられていた時代もあったが、時を経て現代では独立したマニュファクチャラーとして地位を確立している。腕時計のスタンダードから外れない王道のデザインとスイス製ならではの高い精度を持つ技術力、そして〈ロレックス〉とはひと味違う若々しさが市場に受け入れられ、新作が常時注目されるメーカーへと成長した。
かつては「チュードル」と呼ばれていた〈チューダー〉が競争の激しいスイス製高級腕時計の市場で高い人気を維持しているのはブランディング戦略とデザイン力、技術力のバランスが優れているからに他ならない。ただ、ひとつ忘れてはならない重要な要素がある。超が付くほど人気のあるヴィンテージモデルの存在だ。
「モンテカルロ」の愛称でリスペクトされるオリジナリティの高いクロノグラフや、〈ロレックス〉のパーツを贅沢に使用したダイバーズウォッチがその最たる例。1960年代に作られた〈チューダー〉製ダイバーズウォッチや1970年代以降に作られた3つ目クロノグラフは偽物が高値で落札されるほどの高い人気があり、本物はモノによっては数百万円で取引されている。
本稿では〈チューダー〉屈指の人気を持つ「薔薇サブ」、ヴィンテージのサブマリーナをフィーチャー。ヴィンテージウォッチファン垂涎のレアモデルの魅力に迫る。


古い腕時計は必然的に貫録のある雰囲気を醸し出すものだが、〈チューダー〉サブマリーナの存在感はまさに別格。ヴィンテージウォッチの魅力が詰まった特別なモデルだ。

文字盤上部にある薔薇のアイコンが〈チューダー〉サブマリーナ初期モデルである証拠。復刻モデルでも一時期「薔薇サブ」が生産された時期があったが現在は廃盤。当然ヴィンテージは超が付くほど手に入りにくい。

「形態は機能に従う」
実用時計として洗練を重ね続けたサブマリーナには、本当に良いモノを作ろうとする志がある

〈チューダー〉サブマリーナは1954年に初代が誕生。正式名称は「オイスター・プリンス・サブマリーナ」である。初代(Ref.7922)は100m防水だったので現代のダイバーズウォッチと比較するとスペック的には見劣りするかもしれないが、50年代半ばに作られた腕時計としては充分すぎるほどの防水性が担保されていたと言えるだろう。その後1958年のRef.7924では200m防水に進化。ダイバーズウォッチとして高い耐久性と信頼性を追求し続ける試みが繰り返されてきた。
写真の「薔薇サブ」、Ref.7922は兄貴分である〈ロレックス〉譲りの構造をふんだんに取り入れていた。ねじ込み式ケースバックを取り付けたケースと水深100mの防水性能を保証するリューズ。潜水時にダイバーが視認しやすい夜光塗料を塗布した大型のアワーマーカーと針。そして潜水時間を正確に計測し、減圧段階の調整を可能にする5分単位の目盛りが付いた両方向回転ベゼル。「Form follows function(形態は機能に従う)」という格言通り、〈チューダー〉サブマリーナはプロフェッショナルのための実用時計として絶対的に機能を優先していたのだ。もちろん外装自体はご覧の通り非常に美しく、それこそがサブマリーナの人気の理由でもあるのだけれど、目に見えない部分の設計思想があってこそのデザインであることがコアな腕時計好きから絶大な支持を集める証拠でもある。
プロが業務遂行時に使えるダイバーズウォッチを作ることが簡単ではないことは素人から見ても想像できる。Ref.7922が誕生した当時の〈チューダー〉はまだまだ新興メーカーだったが、本当に良いモノを作ろうという高い気概があったのではないだろうか。

初代ながら完成された美しいデザイン
〈ロレックス〉譲りのパーツが贅沢に使われているところもヴィンテージ・チューダーの魅力

とはいえ、私たちがこの初代サブマリーナを目にしてもっとも感動するのは見た目の美しさだろう。ブラックのラッカー仕上げを施したダイヤルと金メッキが施されたブランドネームやモデル名のコントラストは、いかにもヴィンテージウォッチらしい風格がある。薔薇のアイコンとブランドネーム直下にある「OYSTER PRINCE」。文字盤中央下の「100m=330ft」、「SUBMARINER」、「ROTOR」、「SELF-WINDING」の表記は全体のバランスを考慮し配置されている。この美しいバランスは現代の〈チューダー〉製腕時計にも受け継がれていることからも初代のデザイン性の高さを感じることができる。
黒×金のカラーコンビは新品だとギラギラし過ぎる印象を受けることが多いが、半世紀以上前の枯れたヴィンテージウォッチは男らしく無骨なオーラが凄い。拡大して見ると黒い文字盤が経年変化でテクスチャー感のある風合いに変化していることが分かるはず。また、ゴールドカラーの各テキストも濃い色味に変化し、ところどころ欠け始めているのがまたカッコいい。ぷっくりとした厚みのあるドーム型風防もヴィンテージウォッチらしさを強く感じるパーツだ。
心臓部となるムーブメントは毎時18,000振動のフルリエ社製エボーシュをベースに開発した自動巻、Cal.390を搭載。〈チューダー〉は外装パーツに〈ロレックス〉製パーツを使い、コストの高いムーブメントは汎用性の高い他社製のものを使ってきた歴史がある。この初代サブマリーナはその流れを生み出した時代のモデルでもあるのだ。直径5mmのスクリュー式リューズとリベット付きリンクのオイスタータイプのブレスレット(Ref.6636)も当然〈ロレックス〉製。なおブレスレットには〈ロレックス〉のロゴが刻まれている。

時代を超えた普遍的な価値があるのが「薔薇サブ」

写真のRef.7922は誕生翌年にアップデート版のRef.7923へとバトンタッチするわけだが、ファンの間でより高い人気があるのが初代のRef.7922。1950年代という腕時計黄金時代ならではの豪華な作りと手作業が現代よりもより多く入る製法、そして経年変化で新品時よりも美しく変化した極上のルックスは2021年の今も垂涎の的だ。Ref.7922はわずか1年足らずの生産だったため、流通する数が極端に少ないことも人気の理由だろう。「本物」が市場に出ることは滅多にないが、もし売りに出された場合兄貴分の〈ロレックス〉サブマリーナよりも遥かに高値で売買されているところが痛快だったりもする。
絶対に値下がりしない永年的な価値があるダイバーズウォッチとして世の中から評価されている「薔薇サブ」。資産運用の手段として売買することを否定はしないものの、どうせならオーナーにはカッコ良く着けてもらいたいもの。ヴィンテージの〈チューダー〉サブマリーナは、時代を超えたラギッドさと男らしさの強い美しさが共存しているマスターピースだ。
もし美しい現行モデルの〈チューダー〉をお探しであれば、2020年の新作ブラックベイ・フィフティーエイト「ネイビーブルー」はいかがだろうか?

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