Trompe L'oeil Printed Jacket by tolq

「だまし絵」をヒントに超レアなヴィンテージデニムを転写プリントで再現するtolqのジャケット

日本の技術力もここまで極まったか…と感慨深さすら感じる一着。下手な加工モデルよりも遥かに究極な〈tolq〉の逸品をじっくり見てみよう。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : tolq

このデニムジャケットがプリントだとは誰も思うまい…。

きっと誰もが事前情報なしで本記事の写真を見れば「何年代のヴィンテージだろう?」もしくは「超忠実に再現された加工系かな?」と思うだろう。
それくらい本記事で紹介するジャケットはどう見てもデニム。しかし、何と転写プリントなのだ。マジで?って思う方へ。マジです。これを書いている筆者もいまだに信じられない気持ちを捨てきれません…。
2017年に設立された〈tolq(トルク)〉は現在知る人ぞ知るブランドのひとつ。ヴィンテージのデニムジャケットやジーンズをプリントで精巧に再現する転写シリーズは、アメリカ西海岸最大規模の展示会「MAGIC(マジック)」への出店を機に本格的にスタートした。デニムの本場アメリカでも驚きをもって迎えられた〈トルク〉の転写シリーズは、そもそも芸術大学出身のデザイナーによるちょっとしたアイデアから始まったという。
スペインの天才芸術家、サルバドール・ダリの作品からヒントを得て、ヴィンテージデニムを再現する手法として転写プリントを使ったトロンプルイユ(だまし絵)に行き着いたそう。「単純に人を驚かせたかった」というデザイナーの気持ちもあったようだけれど、完成度を見ると「ちょっと驚かせる」ようなレベルではない。どこからどう見ても数十年単位で着倒した本物のヴィンテージに見えるのだから、その技術たるや凄まじいものがある。


何度見ても本物のデニムジャケットにしか見えず、キツネにつままれたような気持ちになってしまう…。

フェイドしたインディゴの色味はもちろん、パッカリングや縦落ち、アタリなどデニムが見せるエイジングのすべてをプリントで忠実に再現。おそるべし転写プリント。

〈ベルベルジン〉の藤原裕氏が監修する「ARCHIVES」シリーズは、超希少なヴィンテージデニムをそのまま再現

360度どの角度からじっくり見ても本物のデニムに見えるために〈トルク〉は気が遠くなる作業を重ねている。まずは本物のヴィンテージを100カット以上撮影し、そのデータをPCに取り込んだ後にパズルの様に延々と繋ぎ合わせる。ウェブデザイナーの筆者はそれだけでも「うわぁ…」と思ってしまうのだが、今度はそれを何度もプリントし、現物を横に置き、見比べながらまったく同じ色でプリントされるまで微調整を繰り返すのだとか。少しでもずれがあると途端に「詰めが甘い」状態になってしまうため、この取り込み・比較・すり合わせ作業に掛かる人的コストは想像すら難しい。ひとつの型を制作するだけであまりに時間が掛かってしまうため、転写シリーズができてからそれなりに年数が経っても頻繁に新作を発表することも難しいようだ。
ヴィンテージデニムを転写プリントで再現する「ARCHIVES」シリーズはヴィンテージ/古着業界の絶対的存在である〈BerBerJin(ベルベルジン)〉のディレクターを務める藤原裕氏が監修をしていることもデニム好きを更にうならせる事実だろう。日本で一番と言ってもいいほどヴィンテージデニムを知り尽くした藤原氏が監修するということは、見た目はもちろんクオリティ全般にお墨付きがあるようなもの。
そして、プリントであれば本当に希少なヴィンテージとまったく同じルックスのジャケットやジーンズを手に入れられることも魅力的ではないだろうか。
本日紹介しているデニムジャケットは1953年に登場した通称2ndタイプで、背面がTバック仕様になっている(Tバックというのは背中の部分のデニムがTの字で切り返しが入っている仕様のことを指す)。1stタイプはサイズ46以降じゃなければ存在せず、2ndタイプはサイズ42から脇のパターンが接ぎ仕様になっているため、サイズ52というかなり大きいサイズのものにしか見られない。つまりこのジャケットをサンプリングしたヴィンテージデニムジャケットは当時完全特注されたウルトラレアな逸品で、〈ベルベルジン〉で長くヴィンテージデニムを取り扱ってきた藤原氏が知る限りでも日本に4着しか存在しないと言われている。当然元ネタである本物を手に入れようとすれば優に100万円を超える値段になるし、そもそもお金を出せば買えるようなものでもないのだ。だから、そんな超レアモデルとまったく同じルックスを着られることはヴィンテージ好きにとっても最高の体験になるはず。


「ARCHIVES」シリーズはジャケット内側に専用のタグが縫い付けられる。

しつこいようだが何度見てもプリントだとは思えないほどの完成度。ヴィンテージデニムだけが持つ強烈なオーラをそっくり持っているところも凄い。

元ネタとなったヴィンテージを買おうとすると優に100万円オーバー!
それに比べると転写シリーズは破格かも?

存在そのものが希少で超高額であるヴィンテージデニムの世界。〈トルク〉のデザイナーである中垣氏は「ARCHIVES」シリーズで究極レベルのモノ作りを追及しているのだが、もっと気軽にヴィンテージデニムの魅力を体感してほしいという気持ちもあるようだ。
ちなみにこちらのジャケット、デニムじゃなければ何の素材なの?と思うはず。デニム部分をプリントした生地には超長綿で織り上げたモールスキンを使用し、裏地はジャケットによく使われるポリエステル100%の生地が使われている。超長綿ならではの滑らかな質感を楽しみながら、ウルトラレアなヴィンテージを精巧に再現したルックスをストレスなく思う存分楽しめる。
気になる価格は66,000円(税抜き)。さすがにお高いけれど、先に述べたように開発費用も一着一着の制作も気が遠くなるような時間と手間が掛かっていることを考えれば適正なプライスではないだろうか。デニム素材を使わずに完璧にヴィンテージデニムを再現するというコンセプトがユニークで、ファッションとしても興味深い。「凄いデニムジャケット着ているね!」と言われたら「実はこれデニムじゃなくてね…」と種明かしする時は思わずニヤニヤしてしまいそうだ。
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