Strong solidarity in denim army

デニムアーミーの強固な絆と連帯感

雨にも負けず、風にも負けず、今日もお気に入りのジーンズを穿き続けるデニムアーミーたちが織りなす藍色の世界。


Written / Photo : LIVE IN RUGGED

「364日生デニム」というエクストリームなライフスタイルを送る猛者たち

不思議なもので、人は何にでもジャンルで分けて区切ろうとする習性がある。ファッションの世界ではモードとストリートの境目がかなり曖昧になったが、それでも両者の間には明確な違いがある。アメカジやヴィンテージの世界は日本人にとってもっともなじみ深い系統の洋服ではあるものの、ジャンルで考えると最新のモードやストリートとは何百キロも遠く離れた距離にあるように感じることが多い。
ラギッドなアメカジがファッションの最先端になることは恐らくないだろう。そもそもトレンドという一過性のものとは常に距離を置き、独自の文化を育ててきたのがアメカジだからだ。ただし、どのジャンルでもそうであるようにアメカジを愛する人間たちには独自のコミュニティや連帯感のようなものがある。インスタグラムなどのSNSを覗くとアメカジ好きたちが独自に生み出したユニークなハッシュタグが国内外問わずいくつも存在していて、今日も数えきれないほど多くの写真がオーナーたちの熱い想いと共に投稿されている。
筆者にとってアメカジはファッションの原体験であり、今も大好きなジャンルのひとつでもある。現在40歳前後の男性であれば10代の若い頃からリアルに体験していた人が多い裏原宿系ファッションも、アメカジをベースにしていたブランドがあったことはご存じの通り。裏原宿系ファッションの火付け役であり日本を代表するファッションクリエイターであるNIGO®氏は今も昔もアメリカが生んだワークスタイルやヴィンテージファッションを愛し、自身のブランド〈HUMAN MADE®(ヒューマンメイド®)〉で上質なアメカジテイストの洋服で世界を席巻しているし、〈WAREHOUSE(ウエアハウス)〉のような直球のヴィンテージレプリカブランドはオリジネイターである〈Levi’s®(リーバイス®)〉のヴィンテージジーンズをこれ以上ないほど完璧に再現し、ハードコアなデニム狂をうならせている。
〈ヒューマンメイド®〉と〈ウエアハウス〉はまったく違うブランドだけれど、歴史やカルチャーをとても大切にし、2020年代の今の時代でも時にアップデートし、時にノスタルジックなプロダクトを誇りをもって制作していることは共通していると言っていいだろう(余談だが、〈ヒューマンメイド®〉は初期の頃に〈ウエアハウス〉にジーンズなどの洋服作りをアドバイスしてもらっていた時期があった)。
「アメカジ」という呼称は日本独自のものながら、アメリカ発祥のカジュアルなワークスタイルを愛する世界中の人々が言語の壁を越えてコミュニティーを築き、ある種の連帯感を感じている様子を眺めるのは幸せな気持ちになる。そこにあるのはお互いのファッションを認め、長く着続けることで生まれる極上の経年変化を称賛するポジティブなフィーリングだ。アメカジほど「ダサい」「モテない」と言われるジャンルもなかなかないけれど、そんなのはどこ吹く風と言わんばかりに自分たちが好きなモノを追い求める姿勢は清々しさすら感じる。特にデニムに狂ったデニムヘッズたちは「#365daysofraw(365日生デニム)」というハッシュタグの通り、寝ても覚めてもボトムスはジーンズ!というエクストリームなライフスタイルを送っており、まさにデニムアーミーという言葉がふさわしい偏愛っぷりだったりする。
ちなみに筆者も少し前まで「#365daysofraw」な生活を数年間続けていたが、最近ジーンズ以外のボトムスを穿くようになった。それに関してはいずれ別の機会に触れよう。いずれにしろ、デニムアーミーたちのコミュニティーと文化は確かな連帯感でもって多くの人々から支えられており、これからもその絆は世代を超えてより強固なものになっていくだろう。


左から時計回りに、〈DENIME(ドゥニーム)〉の662XX、〈45rpm〉の空比古、〈STUDIO D’ARTISAN(ステュディオ・ダ・ルチザン)〉のSD-107 スーパータイトストレート。3本ともデイリーで筆者が愛用しているジーンズで、着用機関と頻度、選択回数が異なるため色落ちもそれぞれが異なる。

デニムのオンスや染めの濃さなどでブランドやモデルによって大きく異なるのがデニムの面白いところ。その違いがデニム好き以外の人からは理解されないところが悲しいところ。

誰からも褒められなくても女性受けが悪くても、今日もデニムアーミーたちはジーンズを穿き続ける

ジャパンデニムのクオリティーの高さは今やヨーロッパのビッグメゾンも認めるところで、デニムアーミーたちはそれぞれにお気に入りのデニムブランドを持っている。先述の〈ウエアハウス〉はもっともリスペクトされているジャパンデニムブランドのひとつだし、〈FULL COUNT(フルカウント)〉や〈EVISU(エヴィス)〉、〈DENIME(ドゥニーム)〉、〈STUDIO D’ARTISAN(ステュディオ・ダ・ルチザン)〉のような老舗ブランド、〈PURE BLUE JAPAN(ピュアブルージャパン)〉や〈ONI DENIM(鬼デニム)〉のような比較的近年誕生したブランドまで、選択肢は非常に多い。もちろん絶対的定番ブランドである〈Levi’s®(リーバイス®)〉は外せないところだ。
ファッション好きから褒められる機会がなく、女性に人気があるわけでもないアメカジという世界で地味に愛用品をエイジングさせ続けるデニムアーミーたちは、なんだかとってもピュア。もしあなたがほとんどジーンズを穿いたことがなければ、暇な時にインスタグラムでデニムアーミーたちの世界を覗きこんでみてはいかがだろうか?
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ITEM CREDIT
  • DENIME:662XX
  • 45rpm:空比古
  • STUDIO D’ARTISAN:SD-107 スーパータイトストレート

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