Dignity in style Patek Philippe Nautilus

時計愛好家の夢を乗せる時計 – パテック・フィリップ ノーチラス

現在の市場価格、余裕の1,000万円超え。今年廃盤が決定し時計好きにショックを与えた〈Patek Philippe〉ノーチラス Ref.5711/1A-010は、手が届かなくても称賛したくなる魅力に満ちている。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : HODINKEE

「ノーチラスバブル」と呼びたくなるほど異常な人気を獲得

1976年に登場した〈Patek Philippe(パテック・フィリップ)〉初のステンレススチール製スポーツウォッチ、NAUTILUS(ノーチラス)。時計業界のトップに君臨する〈パテック・フィリップ〉屈指の人気モデルということもあり、時計好きの方の中には「いつかはノーチラス!」と心に決めている方もいらっしゃるのではないだろうか。
ノーチラスは「世界一高価なステンレススチール製時計」と言われることもある。実際に定価自体も3,872,000円と非常に高額なのだけれど、2010年にモデルチェンジをして以来継続的に生産されているRef. 5711/1A-010はあまりに人気が高騰し、並行市場では現在1,000万円を下ることがほとんどない。1,000万円というと定価の3倍近いプライスだ。さすがに異常なほど値段が上がりすぎた反動で一時期は700万円前後まで下がったこともあったものの、2021年になってから一番人気のブラック/ブルー文字盤の生産が終了するというまさかのアナウンス。近い将来手に入らなくなる可能性が現実味を帯びるとプレミア化が進むのは自然の摂理だ。再び市場価値が上がり、現在は5711/1A-010(ブラック/ブルー文字盤)は1,500万円台~、5711/1A-011(ホワイト文字盤)は1,200万円台~という目を疑う相場まで上昇している。また、この異常なほど上がりすぎた相場に引っ張られる形で〈パテック・フィリップ〉自体の人気がますます上がり、アクアノートやカラトラバの需要も増加。その結果〈パテック・フィリップ〉全体の商品が品薄になるという〈ROLEX(ロレックス)〉のデイトナ人気と同様の状態になっているのだ。

スポーツウォッチとしての機能性を持ちながら他を寄せ付けない品位を兼ね備えた特別なデザイン

ノーチラスがここまで爆発的な人気を集めるようになったのは、〈パテック・フィリップ〉という雲上ブランドが作るステンレススチール製スポーツウォッチであることも理由としては大きいが、既存の価値観やルールをブレイクスルーしながらハッとするほど美しいルックスを備えているからではないだろうか。誕生時の1976年と言えばラウンドケースが圧倒的主流の時代。その中のいわゆる高級時計はケースなどに貴金属を用いたモデルがほとんどだった。それに対し、ノーチラスはステンレススチール製で角ばったフォルムのケースでデビュー。それも、35㎜前後のケース径が主流を占める中で直系39㎜というビッグサイズだった。今見ると特別珍しい形状をしているようには感じないけれど、当時としては形状も大きさも規格外のモデルだったのだ。
デザインを担当したのはCharles Gérald Genta(チャールズ・ジェラルド・ジェンタ)。15歳からジュエラーとして修行を積んだ後に23歳でデザイナーに転向したジェラルド・ジェンタは〈Audemars Piguet(オーデマ・ピゲ)〉のROYAL OAK(ロイヤルオーク)や〈CARTIER(カルティエ)〉のPasha(パシャ)などをデザインした、時計業界屈指のデザイナーだ。
「時計界のピカソ」という異名の通り、ジェラルド・ジェンタは前例のないデザインを高次元で具現化する天才。ノーチラスの美しくもブレイクスルーなデザインは「ウェットスーツにもタキシードにも完璧にマッチする時計」というコンセプトで作られたと言われている。水中で活動しても問題ない機能性を持ちながら、ウェットスーツを脱いだ後にタキシードに着替えてもそのまま着用できるドレッシーなデザインを持っている…そんなデザイナー泣かせのコンセプトを異次元のレベルでクリアしてしまうジェラルド・ジェンタは、デザイナーの端くれである筆者から見ても凄すぎる。この「アクティブシーンからドレスシーンまでカバーできる時計」を昔から作ってきたのが〈ロレックス〉で、代表モデルであるサブマリーナはまさにそんな使い方ができる時計なのだけれど、デザインに関してはノーチラスの方がはるかにドレッシー。その秘密はベゼルとケース本体のみで構成され、裏蓋を持たない2ピース構造だ。初代のノーチラスはケースの両サイドに備えるパーツで気密性を高め、12気圧防水を実現。その後モデルチェンジを実行した際に3ピース構造へとアップデートしたものの、基本的なデザイン自体に変更は加えられなかった。スポーツウォッチとしての機能性を持ちながら他ブランドにない圧倒的な品位を持つドレスウォッチとしての側面も強いノーチラスは、誕生から45年が経過しても新鮮さを保っている。

時計の中からにじみ出る壮大なストーリー性とロマン

ちなみに現在の異常なほどのノーチラス人気はブラック/ブルー文字盤のRef.5711/1A-001が2006年に登場してから。一般的に腕時計は黒または白の文字盤を持つモデルが一番人気になるのに、ノーチラスの場合は青に人気が集中していることが興味深い。海の中を思わせる深いブルーカラーと高級感たっぷりの文字盤の織り目加工。光が当たる角度によって文字盤上に影を作る様子を眺めると、ノーチラスにとって青を基調としたカラーリングこそがフラッグシップモデルであることが分かるはずだ。大西洋横断遠洋定期船の舷窓から着想を得たケース形状と相まって、小さな腕時計というアイテムに壮大なストーリー性を持たせることに成功している。高級時計にとって必須となるストーリー性とロマンがギュッと詰まったノーチラスは、他を引き離すほど高い人気を得て然るべき美しさを持っている。

存在そのものに夢がある時計

Ref.5711/1A-010は前述の通り2021年1月に廃盤が決定した。これほど人気の高いモデルをこのまま生産終了させることは考えにくいため、後継モデルがいずれ発表されるのでは?と噂されているものの、現行モデルが廃盤となることで先に述べた通り天井知らずのプレミア化が加速している。この記事を書いている筆者がノーチラスを手に入れられる可能性はゼロなので、正直に言うと自分の人生にはまったく関係のない時計なのだけれど、それでも一種の憧れに近い気持ちを持ってしまう。ノーチラスは存在そのものに夢があるのだ。ラグジュアリーを極めていながら、ギラギラとした装飾は一切なく、控えめな手法で美しさを追求した〈パテック・フィリップ〉ノーチラス。時計愛好家にとっての最終到達点のひとつであり、人が生み出した精密機械の中でもっとも美しい造形物でもある。この時計は、高級スポーツウォッチというジャンルの中で絶対的な高みに君臨している。
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